インタビュー
廃棄物管理から環境戦略まで、ANAの使命とは何か?
本コラムでは、各社環境・CSRご担当者様へのインタビューを通じて、日頃の業務の工夫や方針、取り組み事例をご紹介します。今回は、廃棄物管理業務での工夫や、ANAの目指す環境取り組みについて、ANAホールディングス株式会社 コーポレートブランド・CSR推進部、担当部長の上村氏にお話をうかがいました。本コラム一覧はこちら
左:上村氏(ANA HD)右:渥美(アミタ)
ANAグループが守るブランドには脈々と受け継がれる安心・安全の文化がある。
渥美:現在、ANAの環境取り組みとしては何に注力されていますか?
上村氏:ANAは航空業を主体とするグループです。公共交通機関の立場から、お客様を安心・安全に目的地にお送りすることはもちろんですが、事業活動に伴うCO2排出等による環境負荷の低減を最大の課題とし「環境リーディング・エアライン」をめざして、2012年度からグループ中長期環境計画「ANA FLY ECO 2020」をスタート、環境保全活動を推進しています。
世界の国際航空におけるCO2排出量の割合は全体の約1.3%と少なく感じられますが、今後は順調な伸びが予想されています。そのため、国連組織であるICAO(International Civil Aviation Organization)では、目標として、2050年までに燃料効率の年率を2%改善することと、2020年以降 CO2排出量を増加させないことを掲げています。
また、世界の民間航空運輸関連企業が運営する団体であるIATA(International Air Transport Association)では、 2020年から航空機のCO2排出量に上限を設定し、2009年から2020年の間で、世界平均年1.5%の燃料効率改善を実現すること、更に2050年までに2005年比較でCO2排出量50%削減することを目標としています。国境をまたいで移動する国際線についてはパリ協定の枠組みに入っていないため、上記のように業界として、個別に目標を掲げて推進しています。
渥美:そうですか、航空会社にとっては空港運営だけではなく、空の上においても企業の社会的責任(CSR)というものがあるんですね。
上村氏:はい、ANAグループ全体のCO2排出量は98%が航空機の運航、2%が地上エネルギーとなっています。ただし、業務における環境リスクは、地上においても大きなものがあると感じています。
渥美:昨年、ビーフカツ転売事件が発生しまして、企業ブランド毀損リスクや廃棄物管理の見直しに着手された企業が多いのですが、貴社においては、あの事件はどういうインパクトがありましたか?
上村氏:以前より、グループ内で廃棄物管理に課題があることを認識しており、アミタさんの「Smartマネジメント」を導入し、業務の見える化を実施した翌年に発生した事件でした。対岸の火事で済んだという印象でした。
渥美:廃棄物管理における課題感について、詳しくお聞かせいただけますか?
上村氏:この廃棄物管理という業務...とにかく大変ですよね。過去には、委託していた会社が倒産し、廃棄物が処理されないまま残されていたこともありました。業務の項目も、委託業者選定、契約書、マニフェスト、現地確認と細かく分かれていますし、紙マニフェストを電子マニフェスト化するにしても、法改正が行われたり、空港や現場毎に独自の管理手法やルールがあったりと、改善に時間を要しています。
渥美:ANAグループでもそういった状況なんですね。
上村氏:はい、ホールディングス本社としては、コンプライアンスの担保を主目的に、実績の管理をしたいという考えがありますが、管理主体である現場からは、"管理システムを導入するにあたり業務が増える・煩雑化する"という、変革に対してネガティブな反応が寄せられます。このように、何かあってからでは遅いので管理をしっかりしたい本社と、業務を効率化したい現場が、一見相反関係になってしまうことがありますね。
その点については、、アミタさんの「Smartマネジメント」によって、管理のベースとなるシステムができ、第3者のチェックによる棚卸し、日々のモニタリングができるようになったことは、とてもよかったと思っています。
渥美:ありがとうございます。廃棄物管理において、今後、取り組まれたい点はどのようなものでしょうか ?
上村氏:はい、ANAグループは単体の事業所がある製造業とは違って空港、市内営業、グループ会社や海外事業所といったところまでが管理対象となります。それらの方々が安心して業務に当たれるプラットフォームを用意すること、モニタリングによる支援をすること、仕組みと人の育成という両面で、本社が支援をしていくことが重要であると考えています。
ANAホールディングス株式会社から学ぶ、廃棄物管理のポイント まとめ
- 業務の見える化によって、リスクポイントと改善ポイントを見つけ、優先順位をつけて対処することが重要である。
- 現場と本社が相反関係にならないようにコミュニケーションを増やし、役割分担をすることで、環境目標達成やブランド毀損リスクから自社を守る。
話し手プロフィール
上村 等(かみむら ひとし)氏
ANAホールディングス株式会社
コーポレートブランド・CSR推進部 担当部長
1980年、ノースウエスト航空会社入社。1986年、全日本空輸(株)に入社。主に国際線業務に従事、数年間の海外勤務(シカゴ・香港・中国青島)を経験後、2015年より現職。
聞き手プロフィール
渥美 黄太(あつみ こうた)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 東日本チーム ユニットリーダー
2006年アミタ(株)に入社。初任地の東京勤務から2015年まで、関東や中部地区で主に化学や機械メーカーのリサイクル事業を担当。2016年から東京本社で企業向けの環境戦略支援を手掛ける。
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