インタビュー
サンスターに聞くサステナビリティ 前編|K-CEP参加企業インタビュー
地球環境を持続可能にし、限られた資源を未来に還すためには、より高度な資源循環の技術と仕組みを構築することが必要です。
本インタビューでは、九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(K-CEP)へ参画している企業にお話しを伺い、サーキュラーエコノミーの構築をはじめとするこれまでのサステナビリティの取り組みや、K-CEP参画への意気込みなどを語っていただきます。第5回は、サンスター株式会社の広報部サステナビリティグループ長の草野彰吾氏(写真)と生産技術統括部パッケージ部開発グループ⾧の鵜尾一行氏にお話を伺いました。
九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップとは? ※現在は、2021年10月20日に旗揚げしたジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(通称:J-CEP)のプロジェクトとして取り組んでおります。 |
サンスターのこれまでの取り組みに学ぶ
森田(アミタ):本日はよろしくお願いします。御社ではすでに「サンスターグループ長期ビジョン2032」や、グローバルでの「2030年環境中長期目標」を発表されていますが、こうした長期ビジョンの策定や、サステナビリティの動きの背景について、教えていただけないでしょうか。
草野氏:まず、何故長期ビジョンを策定したかという点ですが、弊社には「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」という社是があり、社会課題の解決を目指す究極の目標です。これに対して、もう少しフォーカスを絞った手近な目標を設定して、中間地点としてどんな会社になるべきかを明確にすべきとの議論が社内にありました。また、社会的にもサステナビリティや環境に関して非常に動きが激しく、社会から求められている内容も深まってきており、そういったことも含め会社としてどこを目指すのか。創業100周年の2032年に向けてバックキャスティングで「今、何が足りていなくて、何を頑張っていけばいいのか」についても議論していく必要があるとの認識に至りました。
そこで2017年から、経営トップ、役員、幹部と長期ビジョンを策定するためのワークショップの開催をはじめ、様々な活動に取り組みました。その結果、経営トップが2019年の年頭に社内で長期ビジョンを発表、同年8月には「サンスターグループ長期ビジョン2032」として社外にも公表しました。
▼サンスター 2032年のありたい姿(「サンスターグループ長期ビジョン2032」より)
人々の健康寿命延伸と生活の質(QOL)向上に向けて、予防医療やウェルネスの観点からお口の健康を起点とした全身の健康増進に寄与する製品・サービスを創造する。 |
草野氏:この長期ビジョン達成に向けた事業活動は、国連が掲げるSDGsの達成にも貢献できるものと考えています。特に3つの目標をSDGs重点目標として定めており、Goal 3の目標「すべての人に健康と福祉を」、Goal 11の目標「住み続けられるまちづくりを」、Goal 12の目標の「つくる責任、つかう責任」に、事業を通して貢献していくと宣言しています。
▼サンスターのSDGs重点目標
草野氏:こうして、2019年に長期ビジョンを掲げましたが、環境の取り組みに関しては、他社と比べると遅れていて、より明確に目標を策定して、スピードアップしていく必要がありました。そこで、2020年に経営トップから事業分野ごとに担当役員が任命され、目標策定の議論が進められました。弊社は日本の売上が50%で、他はヨーロッパ・アメリカ・アジアに事業を展開しています。そのため、目標についてもグローバルに考えていきたいということで、グローバルに社内で議論を進め、サンスターグループグローバル全社での「2030年環境中長期目標」について、2021年3月に公表しました。
森田:御社の場合、グローバル企業ではあるものの上場はされていないですが、ESGに対する情報開示といった世の中の流れ・外圧に関しては何かございましたか。
草野氏:非上場のため大きな要請はありませんが、最近は特にBtoBの分野で、取引先からサステナビリティの取り組みについてアンケ―トが増え、最近では日用品の流通各社からも問い合わせが増えています。採用についても、特に若い世代の企業選択の基準として「社会にどう貢献している企業であるか」が重要視されているため「サンスターが社会貢献度の高い事業を展開している」という表明をし、さらに強めていくことが、取引先との関係良好化や優秀人材の獲得でも不可欠であると感じています。
その他、金融機関も環境負荷を発生させるような企業へは投資できないと明確に打ち出しておりますので、金融機関からSDGsの取り組みについて聞かれることもあります。スムーズな資金調達の視点からもきちんと対応していかないといけないと考えています。
田部井(アミタ):長期ビジョン策定について、おそらくどなたかが問題提起されて始まったと思いますが、最初のきっかけについて教えていただけないでしょうか。
草野氏:2016年に中期計画を社内横断で議論していた際、売上を右肩上がりにする目標達成への議論が中心になっていました。その際、広報部から売上目標達成の議論に加え、将来も社会から必要とされ続けるために、どのような企業となるべきかという目標も必要で「他社と比べて遅れているサステナビリティの取り組みなどをしていかないと、社会に選ばれる企業でありつづけるのは難しい」と私たちから提案しました。そうした流れでその推進案などを提案していったところ、年明けには広報部がサステナビリティ推進も担当するという発令が出てしまいました。そこから、長期ビジョン策定のための経営トップも含めた役員の勉強会を実施し、2017~2019年の間には社員約1,300名に対して58回のワークショップを実施してきました。内容としては、サステナビリティに関する他社の取り組みや自社の各部署の取り組みの共有などです。その他、様々な活動を通じて、長期ビジョンの策定とともに、社内のサステナビリティに関する意識を高めてきました。
▼ワークショップの様子
田部井:広報部の皆様が、サステナビリティの取り組みに関する社内浸透を地道に継続してやられていたんですね。
森田:縦割りをなくしていこうという企業が多い中で、御社はサステナビリティの推進が横串になるような動きがあるように感じました。今のサステナビリティ推進体制について詳しく教えていただけますか。
草野氏:例えば、環境の取り組みについて、2020年1月に担当役員が任命された後、1年半の間は、社内関係部署メンバーがボランティアで集まり、様々な活動を行っておりました。その頃からマーケティング・生産技術・購買・広報といった様々な部署が横断して議論をしてきています。それが、2021年に、代表取締役が委員長、営業・総務などの各キーとなる部署の代表が参加する、部署を横断した正式な組織となりました。環境中長期目標の個別の目標に対して、各組織メンバーがプロジェクト的に集まって、横串で議論を行っています。また、従来は各国でバラバラに行ってきた環境指標の計測などもグローバル統一の指標で行い、全体像を把握できるようになりました。
森田:部署や国の壁を越えて連携する工夫を進めているんですね。
資源循環に関する具体的な取り組み
森田:目標策定までの道のりを伺ってきましたが、中長期目標に対して、特にプラスチック分野についてどのように取り組んでいくのか教えていただけないでしょうか。
▼2030年環境中長期目標
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草野氏:プラスチック分野については、まずは最もプラスチック使用量が多い洗口液ボトルなどの容器・包装材の石油由来プラスチック量削減(=植物由来/リサイクル材料の使用比率向上)を進めています。また、リサイクル・リユースしやすいような設計の推進を行っています。例えば、単一素材に変えていく、分離しやすい材料にしていくなど、優先順位の高いものから取り組んでいきたいと考えています。
森田:バージン材を使わない、今までとは違う調達・製造方法を採用することで、コストアップなどの課題があると思います。各社担当者様はそういった点にお悩みだと思うのですが、御社ではどのように取り組まれていますか。
草野氏:中長期目標を策定するときは、グループ役員に対して事前にコストも含めた話をしたうえで決定しています。ただ実際に現場で導入する際には、その都度議論となることがあります(笑)。7月に発足した環境委員会には、経営トップを含む各部門の執行役員も参加していて、環境委員会の取り組みの中には、別途コストダウンが図れている施策もあるので、そういったバランスの中で上層部に実施可否の判断してもらい、現場でその都度判断に困ることがないように調整しようとている最中です。(後編に続く)
話し手プロフィール(執筆時点)
草野 彰吾(くさの しょうご)氏
サンスター株式会社
広報部 サステナビリティグループ長
電機メーカーにて広報、B2B営業、研究所の技術PRと事業化推進を担当した後、2013年にサンスターに入社。広報業務と並行して2017年からサステナビリティ推進を担当。社員向けに1年半で58回、約1,300名向けにサステナビリティワークショップを開催。環境委員会事務局も担当。2021年4月より現職。
鵜尾 一行(うお かずゆき)氏
サンスター株式会社
生産技術統括部 パッケージ部 開発グループ⾧
1992年にサンスターに入社以降、パッケージ開発業務に従事。ハブラシパッケージのプラスチックカバーへの再生PET材料採用、折り畳み廃棄可能な薄肉、軽量化洗口液ボトルの開発など容器包装の環境負荷低減を推進。2021年4月より現職。環境委員会事務局も担当。
聞き手プロフィール(執筆時点)
田部井 進一(たべい しんいち)
アミタ株式会社
取締役
アミタグループへ合流後、主に企業の環境部・サステナビリティ部門を対象に、環境ビジョンの策定や市場調査など、多くの支援実績を持つ。2020年より取締役として、アミタ(株)における営業および市場開拓を担当。アミタグループの事業の柱となる「社会デザイン事業」の確立に向けて、新規サービスの創出・新規市場開拓を進める。
森田 惇生(もりた じゅんき)
アミタ株式会社
社会デザイングループ 社会デザイン群青チーム
大学休学中、北中米を1年間放浪。その時カナダで出会った小規模な有機農家の自給的な生活に感銘を受け、帰国後文学部から農学部へ編入。卒業後、アロマを用いた空間デザインの企業に勤めるも、循環型の生活があったあの時の気持ちを忘れられず、アミタ入社に至る。神戸大農学部卒。
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