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インタビュー

JSR株式会社 CSR部 部長 鎌田 政仁 氏、梶原 一郎 氏、堀田 匡人 氏、宮本 昌宏 氏JSR株式会社|SDGsをJSRグループ中期CSR計画へ!2030年に向けた CSR部の戦略とは?

電子材料やディスプレイ材料等の製造をはじめとし、情報通信分野を技術面から支えるJSR株式会社。同社の「JSRグループCSRレポート2017」では、CSR計画の大きな見直しが実施され、外部有識者とトップ対談を実施するなど、SDGsへの取り組みが加速しています。そこで、今回はJSR株式会社のCSR部の皆様に、日頃の取り組みの工夫についてお話をうかがいました。

苦労の末のレポート完成。CSR計画のコンセプト見直しからSDGsまで。

渥美:2017年度のレポート完成、おめでとうございます。課題やご苦労があったことと思いますがいかがでしたか?

梶原氏:まず、今年は弊社の中期経営計画「JSR20i9」がスタートし、それに合わせてJSRグループ中期CSR計画のコンセプトの見直しのところから始めました。コンセプトづくりそのものも大変でしたが、レポート作成ではそのコンセプトと、実行してきた活動をどのように表現していくか、そこに苦労しました。

JSRの企業理念や社会課題などを整理しながら、"事業活動で貢献する社会的課題"、"事業活動によって生じる社会的課題"、"事業活動の基盤となる課題"の3つに整理できた結果、外部の方から見て分かりやすくなったと思いますし、自分たちのCSRに対する考え方がよりシャープになったように思います。少しずつですが進歩している実感があります。

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図:JSRグループの企業理念と重要課題(JSR株式会社ウェブサイトより)

渥美: 今回のレポートから"持続性"、"持続可能性"という言葉が増えた印象を受けます。サステナビリティやSDGsについて、社内の変化はいかがですか?

鎌田氏:中期CSR計画では、2019年と2030年に向けた取り組み項目を定めており、それらに関連するSDGsのゴールを置いています。

では、実際の事業の計画や動きがどうかというと、まだまだ視点はインサイドアウトであり、本来ならSDGsが目指すような、社会の視点に立ったアウトサイドインでなければならないと思いますが、それはこれからです。当然、会社として収益は必要であって、事業部はその収益目標達成に向けて一生懸命ですから、これから我々CSR部がSDGsのような視点をもって社内に発信していかなければならないと思います。

渥美:SDGsについて、社内の認知度はいかがですか?

梶原氏:認知度は段々と上がってきています。

SDGs起点で事業を始めるとなるとだいぶ壁が高い印象で、当然苦労をすると思いますが、CSR部としてはマテリアリティを抽出し整理するなど工夫をしなければなりません。

社員に対して、「自分たちがしていることがSDGsのこの部分に該当する」というようなSDGsと紐づけた説明もしていきながら、社内浸透をしていきたいと思います。

SDGsを細部まで社員に理解させるのは難しいです。CSRの浸透でさえ難しいですが、CSRの浸透は工夫をして機会をつくり、ようやく定着してきました。その機会に合わせSDGsも浸透させていく必要があるのだろうと思います。

渥美:長くCSRと真剣に向き合ってきた会社でなければ、今回整理されたような図(上記)は描きづらいと思います。先程、「SDGsと紐づけ」と表現されていましたが、元々企業理念とSDGsの主旨が適っていて、それらを丁寧に整理されていったのですね。

堀田氏:はい、ただし一方で紐づけだけではイノベーションは起こりにくいだろうと思っています。

梶原氏:SDGsをまっさらな目で見たときに、それまで気が付かなかったことに気が付く。SDGsにどう役立つかに目をつけて、新しい事業の機会を見つける手法として、SDGsからもう一度、我々に何ができるかというのを考えてみたいと思っています。

渥美:レポートの話に戻りますが、今回のレポートでは、企業トップが外部の有識者と対談をされるという、トップ対談も印象的ですね。外部有識者を招かれた背景にはどのような意図がありましたか?社内外への発信意図も聞かせていただければと思います。

jsr_topinterview.pngトップ対談 創立60周年を迎えるJSRが目指すCSR経営(JSR株式会社ウェブサイトより)

梶原氏:足元数年の近場ではなく遠い未来まで想像したときに、環境の変化が激しいですよね。「変化の波をどう乗り越えていくかを社員自ら考えながら進めていかなければならない」というメッセージを、トップ対談でも、続く働き方改革の対談でも載せています。

宮本氏:社内向けに重きをおいたメッセージに見えますが、「JSRはこういう考え方で進めていくんだ」ということを社外に是非PRしたいですし、これからも社内、社外どちらに対しても発信していきたいと思っています。

また、今回、社外の方と対談したことで、これまでにはなかった客観的な目線が入って、社員に対しても良かったのではないかと思います。ピーダーセン氏をお招きできたことも大きかったと思います。

堀田氏:アミタさんのSDGs戦略研究会メンバーで私の前任者だった前部長の捫垣も、今年のレポートで社外有識者対談を載せることができて、非常に満足していました。

渥美:大変満足されているご様子でしたね(笑) SDGs戦略研究会メンバーの皆さんに嬉しそうにレポートを配られていました。

継続は力なり。CSRの社内浸透について

171121_jsr002.jpg渥美:先程、CSRの社内浸透について、力を入れて工夫されてきたとのことでしたが、具体的にお聞かせいただけますか?

堀田氏:ひとつは"CSRレポートを読む会"というものをJSRグループ180部門で実施していて、この取り組みを始めて5年が経ちます。

梶原氏:最初の頃は社員からCSRに対して否定的な意見がありましたが、最近では各部門からCSR部に提案をくれたり、自部門の目標とCSRを絡めたりしてくれています。会の立てつけについても、CSR部から課題を出すだけではなく、自分たちで課題を出して読み合わせたりしていて、浸透してきているのを感じます。今年は10月開催予定です。

渥美:継続して取り組まれてきた結果なのでしょうね。

梶原氏:もう一つは"キャラバン"と呼んでいるもので、JSRの各拠点に足を運ぶイベントがあり、これは8年続けています。元々はRC(レスポンシブルケア)と合わせてCSRについて拠点のみなさんに説明する機会として始まりましたが、今ではみなさんのCSRへの関心が高まり、質問をもらうことが多くなりました。今年は海外のグループ拠点へも行きました。

渥美:海外のグループ会社や協力会社ですと、SDGsの文脈から入った方がコンセンサスを得られるという話を聞きます。コミュニケーションツールとしてもグローバルではSDGsは利用しやすいかもしれません。
また、本社CSR部門の方が毎年拠点行脚するという話は他社さんでは聞かない話です。今は通信手段の選択肢が広がり便利ですが、直接対話するということを大切になさっているのですね。

梶原氏:会って対話するというのはあった方がいいですね。我々も現場の声が聞きたい。"CSRレポートを読む会"でアンケート回収とフィードバックをしていますが、それでもやはり一方通行感が否めません。キャラバンのような場を設けて、複数の手段でコミュニケーションができるというのは良いことなので、続けていきたいと考えています。

宮本氏:従業員の建設的な意見を次のCSRレポートに活かすようにしています。

CSRから次のステップへ。今後の方向性について

渥美:JSR様のCSR、サステナビリティの今後の方向性についてはどのようにお考えですか?

梶原氏:方向性といいますか、「統合報告」について、どのようにやっていくか考えているところです。必要な情報は揃っていますが、財務、非財務情報を単純に合わせればいいというものではなく、ストーリーが必要ですよね。非財務情報がどのように我々の価値に組み込まれているのかということを伝えられるストーリーです。

また、先程、社内のコミュニケーションの話をしましたが、外部から見てクリアーで分かりやすいレポートにできるように、各部門の理解、協力を得て、開示情報をより充実させたいです。

渥美:財務・非財務情報の統合のお話、SDGs戦略研究会に参加されて、そのあたりのヒントは得られましたか?

堀田氏:後任として参加してまだ3回ですので、残り5回を通じてヒントを得たいですね。SDGs戦略研究会では講義やメンバーとのディスカッションを通じて、社会課題、環境課題の本質を理解することできます。

これからはSDGs起点でいろいろなことをまとめていくということを段々求められていくと思います。我々もどう対応していくか、これから議論をして、翌年度以降の計画をしていこうと思います。

渥美:いつもありがとうございます。あと5回、引き続きよろしくお願いします。

鎌田氏:SDGsのような根源の課題に対して、企業として携わり、それで商売していく。そういう絵がかけると、会社の未来、持続可能性を伝えることができますよね。そういうことをきちんと伝えられるレポートを作っていきたいと思います。

話し手プロフィール

JSR_001.jpg鎌田 政仁 氏
JSR株式会社
CSR部 部長

1992年JSR(株)入社
物流企画部門、事業企画部門を経て2017年10月にCSR部に異動。

JSR_002.jpg梶原 一郎 氏
JSR株式会社
CSR部 参事

1988年JSR(株)入社
研究開発部門にて、四日市研究センター研究所、研究開発部を経て2017年4月にCSR部に異動。

JSR_003.jpg堀田 匡人 氏
JSR株式会社
CSR部 主査

1985年JSR(株)入社
国内営業、海外営業、工場事務、調達部門を経て2017年6月にCSR部に異動。

JSR_004.jpg宮本 昌宏 氏
JSR株式会社
CSR部 主事

1986年JSR(株)入社
研究開発部門にて、四日市研究センター、筑波研究所、知的財産部を経て
2011年5月にCSR部に異動。

聞き手プロフィール

amita_atsumi.jpg渥美 黄太
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 東日本チーム ユニットリーダー

2006年アミタ(株)に入社。初任地の東京勤務から2015年まで、関東や中部地区で主に化学や機械メーカーのリサイクル、アウトソーシング事業を担当。2016年から東京本社で企業向けの環境戦略支援を手掛ける。

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