インタビュー
日本マクドナルド株式会社 コーポレートリレーション本部 CSR部 マネージャー 岩井 正人 氏マクドナルド|社内外に魅力を伝えるCSRレポートづくりとこれからのCSR活動とは?
幼児からお年寄りまで、幅広い世代に人気のある日本マクドナルド。入社以来、店舗運営から商品開発まで様々な部署で活躍され、2014年からコーポレートリレーション本部 CSR部のマネジャーを務める岩井様に、日本マクドナルド株式会社のCSR活動についておうかがいしました。
写真:本社内にあるハンバーガー大学前にて(左から岩井氏、アミタ猪又)
より「読みやすさ」を重視したCSRレポート
猪又:岩井さんは商品開発から店舗管理まで、幅広くお仕事を経験されたうえで、CSR部は2014年から担当されているとうかがいました。はじめにCSRレポートを作成することになり、どのような印象を持たれましたか?
岩井氏:まず、当社がこれまで作ったCSRレポートを読んでみたのですが、少し分かりづらい印象を持ちました。情報量も多く、専門家に見ていただくにはとても良い内容ですが、写真が少ないなど、お客様や社内のスタッフにマクドナルドの良さをもっと伝えられないだろうかと思いました。
猪又:なるほど、情報量が多いだけでは伝わらない、ということですね。
岩井氏:せっかくしっかりとした取り組みを行っているのに、もったいないと思いました。そこで、2014年のレポートでは、イラストを多く採用することで、分かりやすいレポートを目指しました。しかし、読んだ方の反応としては、まだ「読みづらい」という反応でしたね。ページも30pと分量があったので、「興味があるところしか見ない」とも言われました。
猪又:それは厳しいですが、率直な感想ですね(笑)
岩井氏:ええ。そこで、現在公開している2015年のレポートではストーリー性を重視した構成を採用し、「読みやすさ」にこだわって作成しています。例えば、品質管理を説明する際には牛が育ち、ハンバーガーとして店舗で提供されるまでの流れをイラストで説明しています。逆に、電気の使用量や廃棄物の排出量については、これまでグラフを使って詳細に説明していたものを、2015年の実績と対前年の比較の数字だけを記載することで、よりシンプルに分かりやすくしました。
画像:写真:「ハンバーガーがお客様に届くまで」(CSRレポート2015 p.4)より
社外への発信だけでなく、社内に浸透させる工夫
猪又:たしかに、いろんな箇所で読みやすさを追求されていますね。社内への浸透はいかがでしょうか?
岩井氏:CSRレポートについては、社内のフロアにも貼りだして、日頃から自然とレポートを目にする機会を作っています。
猪又:それは良い取り組みですね。
岩井氏:CSRについては社内の認知が低いと感じていたのですが、色々工夫することで少しずつ啓発を進められていると思います。例えば、社内の教育制度である「ハンバーガー大学」では、CSRに関する授業を用意しており、その一環で「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を訪問し、ボランティアに参加する機会も設けています。
※ドナルド・マクドナルド・ハウス...難病と闘う子どもたちの家族のための滞在施設。
猪又:各店舗への浸透はいかがでしょうか。
岩井氏:各店舗では、地域の清掃など積極的なCSR活動を展開しています。しかし、各店舗にヒアリングすると、自分たちの活動がCSRの一翼を担っていることに気づかないケースがあることがわかりました。そこで、各店舗での活動もきちんと拾い上げレポートで紹介することで、従業員の一人一人が自身の活動がCSR活動につながっていることを気づかせ、意識させたいと考えています。
猪又:CSR活動を分かりやすくすることは、社内への浸透にもつながりますね。
写真:社内にCSRレポートが掲示されている
2020年までに紙製容器包装類をFSC®認証製品に
猪又:今後のCSR戦略について教えてください。紙製容器包装類の調達について、方針が出されましたね。
岩井氏:マクドナルドでは2014年に紙製容器包装類のすべてを持続可能性が認定されたもの、またはリサイクルされたものとすることをグローバル指針として掲げています。このグローバル指針に従い、日本マクドナルドでは、紙製容器包装類については2020年までにすべてFSC®(Forest Stewardship Council®: 森林管理協議会 以下、FSCと表記)認証を受けたものを採用することに決定しました。現在、取り組みを進めており、2016年末には紙製容器包装類の45%はFSC認証製品となる見通しです。
猪又:廃棄物に関してはいかがですか。
岩井氏:廃棄物については、基本的にはできるだけゴミを出さないことが前提ですが、やむなく出た廃棄物についてはリサイクルを進めています。具体的に申し上げると、廃食油についてはほぼ100%リサイクルしています。他には、特にコーヒー豆粕やポテトの残さが多く排出されます。これらを、117店舗で飼料化・肥料化・バイオマスの3つの方法でリサイクルしており、どんなリサイクル方法が、マクドナルドにとって良いリサイクルなのかを見極めようとしています。
猪又:店舗が多いのでとりまとめるのも大変ですよね。
岩井氏:廃棄物に関してはマニュアルを整備しています。外食産業で廃棄物に特化したマニュアルを整備しているところはまだ少ないかもしれません。困った時にはマニュアルを参照できるよう、処理費用の料金体系など全国の情報をまとめています。同様に全国で廃棄物に関するデータ管理を行っています。
猪又:なるほど。コンプライアンスなど、いわゆる「守りのCSR」の部分をきっちり整備しながら、より分かりやすい情報の発信をされているわけですね。本日はありがとうございました。
写真:店舗運営から商品開発など様々な部署を経験し、現在はCSR部のマネジャーを務める岩井氏
関連情報
プロフィール
岩井 正人(いわい まさと)氏
日本マクドナルド株式会社
コーポレートリレーション本部 CSR部 マネージャー
1984年日本マクドナルド株式会社に入社。入社以来、店長やオペレーションコンサルタントを担当し、店舗運営に関わる。1991~1994年にかけて商品開発部に所属し、マックカフェの立ち上げに関わる。その後、オペレーションマネジャーとして東京の100店舗の運営を行うなどの経験を経て、2014年からCSR担当となり現在に至る。
インタビュアー
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
シニアコンサルタント
1970年生まれ。1994年早稲田大学理工学部卒業後、アミタに合流。環境・CSR分野における戦略・実行、コミュニケーション、教育など幅広く従事。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」をプロデュース。今年の3月には、著書「CSRデジタルコミュニケーション入門」(インプレスR&D社)を出版。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。
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