インタビュー
京都市ソーシャルイノベーション研究所 山中 はるな 氏SILK|「四方良し」でソーシャルビジネスを認定
近年、行政やボランティアではなくビジネスで社会課題を解決するソーシャルビジネスが注目されています。また企業は本業による価値創造で社会に貢献するべきといったCSV(Creating Shared Value) も注目されています。
本日はソーシャルビジネスの第三者認証制度である「これからの1000年を紡ぐ企業認定」について、京都市ソーシャルイノベーション研究所(SOCIAL INNOVATION LABORATORY KYOTO 略称SILK)の山中様にお話をうかがいました。
ソーシャルビジネスの認定制度が生まれた経緯は?
山中氏:2014年12月に京都市は京都市ソーシャル・イノベーション・クラスター構想を発表しました。これは組織や個人が京都で社会的課題の解決に挑戦することで、過度の効率性や競争原理とは異なる価値観を、日本はもとより、世界にも広めていこうとする構想です。同市は本構想を実現する為に様々な取り組みを行う拠点として、SILKを設立しました。
本構想の具体的な取り組みの1つとしてSILKでは「これからの1000年を紡ぐ企業認定」というソーシャルビジネスの認定制度を作り、2015年7月7日から認定企業の募集を開始し、2016年4月22日には同市内の6社がこの認定を受けています。
小川:そもそもなぜソーシャルビジネスの認定制度が必要だったのでしょうか?
山中氏:日本国内だけじゃなく、世界にはいろいろな社会課題があります。そういった社会課題の解決に向けてビジネスとして継続的に取り組んでいく、そういった社会的企業が増えています。今回の制度は、そうした社会的企業を京都市として認定し、様々な支援を行うことでより成長を加速させていきたいという考えから生まれました。
岩藤:認定を受けると具体的に企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
山中氏:社会的企業を京都市として認定することで、京都市やSILKが行っている様々な活動やネットワークを使って連携や支援をさせていただいています。認定企業の業種・状況などによりニーズが様々なので、一律の支援内容ではないですが「認知度を上げたい」・「人材を募集している」・「融資が必要」という個々のニーズに対して相談にのりながら、人と人との紹介なども行い具体的な対策をともに考えています。
画像:左からアミタHD岩藤(左)、SILK山中氏(中)、アミタ小川(右)
認定のポイントは「四方良し」
岩藤:一言でいうとどのような企業が認定されるのでしょうか?
山中氏:私たちは社会的企業のポイントを「四方良し」という言葉で表しています。
岩藤:近江商人が大切にしていたと言われる、売り手良し・買い手良し・世間良しという「三方良し」に加えてもう一つあるのですか?
山中氏:はい。四つ目は「未来良し」です。従来日本型のCSRとよばれる「三方良し」に加えて、現代社会の延長線上ではなく、新たな取り組みを通してよりよい未来を作っておられる企業というところが特徴的です。「これからの1000年を紡ぐ企業認定」という名前もここから生まれています。
たとえば、近年環境負荷が低く、持続可能な農業をされている若手農家の方が増えてきています。しかし、生産量が様々で、安定供給が難しいという課題があります。認定企業の1つである「株式会社坂ノ途中」という企業はその農家をネットワーク化して、質のよい野菜を安定的に通販やお店で販売しています。これは売り手である農家、買い手である私たち消費者や飲食店、社会である地球環境、そして未来の環境に優しい取り組みです。
岩藤:まさに「四方良し」ですね。確かに、この企業が発展すればするほど、自然と人間関係が豊かになるビジネスモデルだと思います。アミタとしても、本制度の設計にご協力できて光栄でした。
山中氏:アミタさんには、環境認証審査で培ってきたノウハウをもとに認定制度の設計に関わっていただきました。制度設計の際に心がけた点、こだわった点などは小川さんからご説明いただけますか?
小川:ありがとうございます。アミタではこれまでFSC®/PEFCなどの森林認証 、MSC/ASCなどの水産認証 などを筆頭に、環境に関わる認証審査を行ってきました。また、それらの審査ノウハウをもとに古紙配合率管理審査やCO2吸収量・削減量などの第三者認証 の制度設計支援および審査も実施してきました。
今回のプロジェクトで心がけたことは、社会課題解決に取り組んでいるという大前提に基づき、「四方良し」を軸とした、わかりやすいシンプルな制度設計です。ポイントはビジネスとして収支が成り立っていることです。ビジネスとしての成立を前提としたのは、組織と活動の持続可能性に強く影響すると考えるからです。一過性の活動ではなく、継続的に活動し続けられるかも重要視しています。
岩藤:確かに申請書を拝見すると 、本質的な質問ではありますが基本的でシンプルな項目がならんでいますね。
小川:その他に審査員をしている森林認証や水産認証でも、社会・環境に対する持続可能性については重要視しているのですが、持続可能性という点を「未来良し」という日本らしいキーワードで整理できたことはよかったと思っています。
山中氏:認定された企業は総じてステークホルダー全般に対して、パートナーとして共に発展していくというスタンスが徹底されていました。それは小川さんの審査時のヒアリングなどで痛感しました。
画像コメント:わかりやすい認定制度を心がけました。
CSR(企業の社会的責任)に期待することは?
小川:山中様やSILKが企業の社会的責任(CSR)に期待することはなんでしょうか?
山中氏:各社の企業理念と事業の中で行われることですね。最近は本業でのCSRという考え方も認知されてきましたが、やはり事業活動と別にしては、影響度も継続度も小さいと考えています。もう少し踏み込みますとCSR部門内でやるものではなく全社で日常に行うことであると思っています。SILKではそういった考えとそれに対する実行を行える人財育成も実施していこうということで、イノベーション・キュレーター塾 も行っています。現在第二期の募集中ですので、ぜひCSR担当者の方もご参加いただければと考えています。
岩藤:SILK、および山中様はこの認定制度でどんな未来を作っていきたいですか?
山中氏:認定を受けた社会的企業の商品を利用する、投資するなどのカタチで、一般の人々が社会課題解決に参画してほしいと考えています。そうなることで、認定制度を運営する私たちも「四方良し」に貢献したいと考えています。
画像コメント:本業でのCSRを期待します。
参照
関連情報
アミタの環境認証サービス~審査基準策定・第三者審査など~
アミタでは、1999年のFSC®森林認証サービス開始以降、森林・漁業・生物多様性などの持続可能性に関する専門的知見・客観的基準の策定力・豊富な審査実績にもとづき、多くの環境認証審査を実施してきました。CO2吸収量・削減量などの第三者認証などの実績もあります。また、これらのノウハウを生かした認証制度設計なども実施しています。
プロフィール
山中 はるな (やまなか はるな) 氏
公益財団法人 京都高度技術研究所
京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)イノベーション・コーディネーター
広告出版会社での企画職を経て、2009年から京都市まちづくりアドバイザーとして勤務。ファシリテーションスマインドとスキルを通して、住民参 加型の区の基本計画の策定、地域活性化のためのプロセスデザイン、コミュニティの対話の場づくりを行う。2015年より現職。「これからの 1000年を紡ぐ企業認定」、「イノベーション・キュレーター塾」事業担当。
インタビュアー
小川 直也(おがわ なおや)
アミタ株式会社
環境認証チーム タスクリーダー
2002年アミタ株式会社に合流。以来一貫してFSC 森林認証(森林管理認証、COC 認証)やMSC/ASC COC認証を始めとする環境認証審査を行っている。 また、環境認証のセミナー講師なども行っている。
岩藤 杏奈(いわどう あんな)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム
岡山県出身。神戸大学卒業後、アミタ入社。学生時代、カンボジアでのボランティア活動を通してエネルギー循環型社会の大切さに気付く。入社後はテレマーケティングやメール・郵送DMなどの非対面営業部門にてアミタの各種サービスの提供、セミナー企画等を担当。2016年からは広報・IRを担当する共感資本チームに配属。同社の「未来開拓者ラヂオ」にてパーソナリティを務める。
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