インタビュー
住友林業株式会社 護田 佳子 氏 / 幕田 絵理 氏 / 長井 芙未 氏住友林業|女性活躍推進の取り組み~住友林業の女性目線開発プロジェクト~【前編】
女性活用が社会的な課題になっている中、様々な企業で女性の管理職登用やダイバーシティへの取り組みが進められています。住友林業株式会社では、2013年よりスタートした「女性目線開発プロジェクト」の一環で、基幹事業である住宅事業で女性だけの商品開発が行われ、2015年4月に住宅商品「konoka」として発表されました。プロジェクトでは、様々な課題に直面しながらも2年の月日をかけ商品化と展示場建設を実現し、順調に売上を伸ばしています。プロジェクトで商品化を実現してきたメンバーのお話から、企業の女性活躍推進・ダイバーシティに関する取り組み方について考えます。
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※写真:インタビューの様子(左から護田氏、幕田氏、長井氏)
konoka開発の背景
高橋:「konoka」開発の経緯やプロジェクトの内容について、教えていただけますか。
護田氏:2013年、住宅事業本部にて、女性の目線を活かす商品やサービスを目的とした「女性目線開発プロジェクト」が発足しました。まずは、「商品作り」をゴールに設定し、本社・支店・グループ会社の様々な部署に所属する女性社員36名でスタートしました。また、同時期に社長から「住友林業グループ女性活躍推進宣言」が発信されたことも、推進の背景のひとつです。住宅商品では、購入者が住宅メーカーを決定する際に影響力の高い"女性"の共感が無視できません。そこで、開発初期の段階で、当社が提供する木の住まいに関心のありそうな読者層を持つ女性誌「LEE」にて、住まいに関するイメージや重視するポイントなどのアンケート調査を実施しました。多くの男性社員の予想(=キッチン)に反して、リビングを重視する方が約70%もいらっしゃいました。また、重視するポイントとして「ナチュラルテイスト」や「質感」があることがわかり、それらを盛り込みkonokaを作りました。
調査結果からは女性の自宅での過ごし方として、趣味やメイクなど自分の時間も楽しみたいと考えていることがよく分かってきました。今までの家づくりですと、女性を「奥様」や「お母さん」などの立場で捉え、「家事」や「育児」といった役割の目線で提案することが多かったのですが、konokaではひとりの女性である個の理想を最優先に、「私らしさ」というキーワードが商品のポイントとなりました。
また、商品カタログもプロジェクトメンバーがつくっています。従来は、表紙に家の外観を載せ、次に構造・性能・部材などの「説明」が続くというのが通例でしたが、女性の共感を得るためにどうすればいいかを考えた結果、写真や図を多用し、konokaによって実現される素敵な暮らしの「イメージ」や「雰囲気」を先に打ち出すという、今までにないカタログとなりました。
画像(上):プロジェクトリーダー 護田 氏
画像(下):konokaカタログより
男女の考え方の違いが鮮明に!
高橋:プロジェクトを進めていくに当たって様々な課題があったと思いますが、どのようなことがありましたか?
護田氏:プロジェクト開始当初から、女性の想いや考え方を理解してもらうことの難しさに直面しました。このプロジェクトは部署横断的なプロジェクトで、管轄の部署などはなく、予算・権限などない状態でしたので、何か取り組みを進めるためには、その都度各部署の関係者に理解や協力を仰ぐ必要がありました。
幕田氏:しかもそのほとんどが男性です。「女性の求めるものはこれです!」と、ここに至るまでのプロセスとイメージを提示しても、男性は結論を重視するとともに、イメージではなく論理的に思考する傾向が強いため、理解や共感を得ることが難しいと感じました。
この経験を通じて女性と男性の物事の捉え方や、考え方のプロセスの違いが明確になりました。例えば、女性メンバーには商品のイメージから説明しても伝わりますが、男性の上司には背景やターゲットを明確にして具体的な仕様を説明した上で、「その結果このイメージです」という伝え方をしないと伝わりにくかったです。全体のイメージよりも建物の外装はどうなのか、色はどうなのかと、具体的な話になることが多かったように思います。
高橋:男女でそのような考え方の違いがあるのですね。これまであまり意識していませんでした。
長井氏:konokaを社内に普及させるための支店長や営業責任者クラス向けの説明会で、プロジェクトメンバーが資料を作成し、開発の意図や内容を直接説明したのですが、その際には男女の違いを踏まえた伝え方を意識しました。
幕田氏:「みなさんの奥様はどうですか?」と質問して女性の物事の捉え方を具体的にイメージしてもらったり、長井と二人でロールプレイングを披露し、お客様へはこういう伝え方がいいのではないか、と販売方法を提案するなどしました。
護田氏:商品化というゴールを決めたものの、進め方も手探り、関係者へは説得の連続で、2年かかってしまいましたが、最終的には満足のいく形で商品化ができました。会社も温かい目で見てくれていたなと思います。
画像コメント:社内向けkonoka商品説明を担当された幕田氏・長井氏
プロフィール
護田 佳子 氏
住宅事業本部 技術商品開発部 商品開発グループ マネージャー
一級建築士
神戸支店、多摩支店にて設計担当。その後、本部で商品開発に携わり現在に至る。
商品企画、部材開発を担当。
幕田 絵理 氏
住宅事業本部 人財開発部 係長
住宅事業本部の埼玉東支店で住宅営業を担当後、法人営業に携わったのち現職。
住宅営業担当者の研修・育成を担当。
長井 芙未 氏
住宅事業本部 営業推進部 法人営業グループ
横浜北支店にて住宅営業を担当の後、現在は本部で法人営業の業務に携わり現在に至る。
提携法人の社員向けに、住宅関連の販売促進を行う。
主に広告とWEBを担当。
インタビュアー
高橋 泰美(たかはし ひろみ)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略支援チーム
2005年7月に入社し、企業の廃棄物管理に関するソリューション営業やエコ活動に関する企画提案など行う。その後三度の出産、育児休業を経て、2014年4月より復職。現在は企業の持続可能な戦略立案の提案や環境CSR活動の支援等を行っている。仕事、家事、三人の子育てに日々奮闘中。
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