全印工連|業界団体初のCSR認定制度に迫る! 【前編】 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

全日本印刷工業組合連合会 池田 幸寛 氏 / 三島 秀夫 氏 / 滝澤 光正 氏全印工連|業界団体初のCSR認定制度に迫る! 【前編】

全日本印刷工業組合連合会(以下、全印工連)では、2013年から業界団体でのCSR認定制度を開始し、2015年6月で89社が認定されています。業界団体がCSR認定制度を設立している初の事例で、その先進的な取り組みについて伺ってきました。お話を伺ったのは、全印工連常務理事でありCSR推進専門委員会委員長の池田様、副委員長の滝澤様、三島様の3名。インタビュアーはCSRJAPAN編集長の猪又が務めました。(CSRJAPAN副編集長=高橋泰美)

【全印工連】業界団体初のCSR認定制度に迫る!【後編】

◇全印工連CSR認定制度について
http://www.aj-pia.or.jp/csr/main.html

初の業界団体によるCSR認定制度設立!

ikeda.jpg猪又:業界団体が主導してCSRを推進するため、全印工連では2年前から認定制度を作り運用されていると伺いました。その背景を伺いたいのですが、委員長である池田様が強く推進されていたのでしょうか?池田様の経営される池田印刷株式会社では以前からCSRに積極的に取り組んでいらしたのですか?

池田氏:CSRと いう認識はありませんでしたが、今思うと私が社長を引き継いでから取り組んでいたのかもしれません。私が社長になったのは30代。それも急な交代でしたので、先輩社員の中には面白くなく辞めていった方もおり、社内をまとめるため新社長として何か筋の通ったことをやらなければならないと考えておりました。まず検討したのはISO9000の導入でした。当時は複雑で費用もかかることから中小企業が取得するには難しい状況でしたが、環境への意識が社会的に高まっていたこともあり、ISO9000の取得に踏み切りました。その活動の中で社員との共感を得られ、ISO14000、プライバシーマークを次々に取得いたしました。認証取得をする中で何に取り組むべきかが見え始め、池田印刷だからこそできることについて模索し始めたのがその頃でした。同じ印刷機械であれば同じものができてしまう。会社を存続させるためには独自性を出していかないといけないという危機感から独自に取り組みを進めていた時、ある方から「御社のやっていることはまさしくCSRだよね。」と言われたんです。CSRを意識し始めたのはそれからになります。社員と一緒に、できる範囲で、継続できる範囲で、毎年できることは何だろう、ということをコンセプトにCSRに取り組んでいます。

画像:CSR推進専門委員会 委員長 池田氏

今までの取り組みをCSRとして再認識

takizawa.jpg猪又:CSRをやっていこうとする時、社員の反応はいかがでしたか?賛同は得られましたか?

滝澤氏:私たちの組合でCSR認定制度を立ち上げる理由として、印刷産業全体の出荷額が下がっていて過当競争に陥っている現状があります。その中でどう勝ち残っていくかを考えるうえでCSRは大事だという話に行きつきました。企業の不祥事に厳しい目が注がれる現在、社会に認められないと自社の存続が難しいだろうということで組合員に呼びかけてCSR認定制度を始めたのですが、当社での取り組みは比較的反発もなく始めることができました。印刷会社は小規模でも歴史ある会社が多いので、地道にまっとうに商売をしていくことが大切だということを、この制度を通じて再認識したのではないかと思います。

三島氏:当社、六三印刷株式会社では、今まで実施していたことがCSRだと認識していなかったことを見える化して伝えようとしているところです。社内では反発するどころか面白がる社員もいるぐらいですよ。中小企業のCSR活動で有名な石井造園株式会社の石井社長がおっしゃっていますが、「無理なく達成感があることを!」と思っています。

猪又:中小企業でもCSRをやる意義というのはどこにあるのでしょうか?

池田氏:紙を製造するに当たり、機械の使用により多くのエネルギーを使ったり、使用する薬品の中で取扱いに注意が必要なものがあったりします。環境に負荷を与えてしまう業界なんです。CSRを考えることで、環境への問題に気付いたり社会変化に対応できたりすることがメリットだと思っています。またそれぞれの企業が地域密着型の仕事をされています。地域から信頼される企業であり続けるためにCSRという考え方が必要になると思っています。

画像:副委員長の滝澤氏

CSRリテラシーを高める制度設計

mishima.jpg猪又:認定制度はどのような仕組みなのでしょうか?

池田氏:ワンスター認定、ツースター認定、スリースタ認定の三段階制です。ワンスターは書類審査のみで、ツースター認定の申請はワンスター認定取得から2年後の更新審査で初めて申請可能となるピラミッド型の認定制度になっています。また、ツースター認定では書類だけでなく訪問による審査も実施され、より厳しい審査となります。現在89社がワンスター認定を取得済みで、初回審査から2年が経つため、これからツースター認定の対象企業が出てくるところです。全印工連は各都道府県の工業組合からなり、加盟企業は5,113社にのぼります。多くの企業から関心が集まっており、委員会メンバーは時に各地に説明に伺うなどの普及活動をしています。

チェックリストは大きく8項目に分かれ、印刷業特有の事情や質問項目も含んでいます。例えばISO14001よりもグリーンプリンティングを取得している方が高得点を得られる設定にしています。ここに出ている項目は、初めてワンスター認定を取得される企業様に、「これをやりなさい。」ではなく「こんな取組み方もあるよ。」と例題という形で示しています。

チェックリストの項目ですべての取組みを網羅できているとは思ってはいません。中にはCSRは社会貢献だけすればいいと捉われている企業もあるようですが、我々は襟を正して商売をしていく時の拠り所だと捉えています。例えば環境の取り組みであれば「ごみの分別」がすぐに浮かびますが、我々が取り組めるのはそれだけではない。やるべきはもっとありますがやることが曖昧になっている。業界団体として取り組み内容を一本化するためにもチェックリストを作成しました。認定制度の目的としては差別化ではなく業界全体でのCSRリテラシーの底上げと考えており、まさにワンスター認定がそれにあたります。

三島氏:ワンスター認定を切り口としてCSRを認識してもらうためのもの、敷居を低くしてみんなに取組んでもらうようにしよう、ということで取り組み例として挙げてあります。チェックリストを見てもらうと、みなさん普段やっている当たり前のことも書いてあると思います。ですが、皆さんそれがCSRだという認識がないんですよね。

猪又:各分野で3ポイント、4ポイント取ればワンスター認定は取れるようになっていて、あまり厳しい設定ではないのはそのためですね。

画像:副委員長の三島氏

(後編へ続く。)

プロフィール

mr.ikeda.png池田 幸寛(いけだ ゆきひろ)氏
全日本印刷工業組合連合会 常務理事 CSR推進専門委員会委員長
池田印刷株式会社 代表取締役

大学卒業後、昭和47年4月 池田印刷株式会社に入社、平成7年4月 代表取締役に就任。ISO14001を平成15年に取得して、ISO9001、Pマーク、GP、MUD、FSC認証等 中小起業のCSRの原点の認定を取得。CSRレポートを発行し、本年11年目(vol.11)となる。現在、全日本印刷工業組合連合会常務理事、CSR推進専門委員会委員長として全国の仲間にCSR普及活動を行っている。

mr.mishima.png三島 秀夫(みしま ひでお)氏
全日本印刷工業組合連合会 CSR推進専門委員会 女性活躍推進室副委員長
六三印刷株式会社 専務取締役

1992年 六三印刷株式会社に入社。
2008-2011年度 全国青年印刷人協議会副議長
2012-2015年度 全日本印刷工業組合連合会CSR推進専門委員会副委員長
2014-2015年度 全日本印刷工業組合連合会女性活躍推進室副委員長
滝澤らとともに、認定制度の制度設計に携わる。


mr.takizawa.png滝澤 光正(たきざわ みつまさ)氏
全日本印刷工業組合連合会 CSR推進専門委員会副委員長
滝澤新聞印刷株式会社 代表取締役

早稲田大学卒業後、他業界での経験を経て滝澤新聞印刷株式会社に入社。2007年に三代目社長に就任。
2010-2011期、全日本印刷工業組合連合会の青年組織である全国青年印刷人協議会の副議長として業界内でのCSRの普及、啓発に努め、現在の認定制度の原案づくりにも携わる。
2012-2013期、全国青年印刷人協議会議長。

インタビュアー

inomata_profile.jpg猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
CSRJAPAN編集長 兼 CSRプロデューサー

早稲田大学理工学部卒業後、大手通信教育会社に入社。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。

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