インタビュー
愛知海運株式会社 国内ロジスティクスカンパニー 上野 明 氏愛知海運|地元企業ができる地域を巻き込んだ社会貢献活動
「地方創生」が叫ばれる中、最近では地域に密着した企業が地元のために何が出来るのかを真剣に考える企業が増えてきた。CSRは大手企業だけが実施するものではなく、企業規模や業界に関係なく、どの企業でも実施することが可能なのだ。今回取り上げる愛知海運株式会社では決してCSRについて造形が深いというわけではない20代から30代前半の若手社員が中心となって、地域の学校、行政、地域の方々などを巻き込んだ活動を昨年実施した。地方企業ができるCSR活動とはどういったものなのか?愛知海運に直撃インタビューを実施してきた。(2015/1/20 インタビュー実施)
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最初からCSR活動をやろうとは考えていなかった!?
猪又:今回のCSR活動がスタートしたきっかけは?
上野氏:もともと愛知海運自体は積極的にCSR活動を実施している会社ではなかったのです。たまたま部署を超えて、管理職前の20代~30代前半の若手社員が集まり、社長と今後の会社の方向性を話し合う「ミドルボード」という会がスタートしました。その会ですが、実は以前に実施していた会なのですが一旦休止していました。この度、現社長である原が社内コミュニケーションの重要性を感じており、再度復活させたいという強い意向がありまして、長年のブランクを経て2013年10月に会が招集されたのです。ですので、最初は今回のCSR活動をやるために集まった会というわけではなく、社長とのコミュニケーションの場として集まっただけなのです。
猪又:なぜ今回のCSR活動に至ったのでしょうか?
上野氏:弊社では毎日述べ100台以上のトレーラーが荷物を運んでいるのですが、衣浦港から岐阜県内の製紙工場まで紙の原料の木材チップを運んでいます。このトレーラーが非常に大きくて、道路を走っていると圧迫感があります。実際に過去にもその影響でクレームを起きたこともありました。社長も圧迫感を払拭するために、弊社オリジナルのゆるキャラを作成してトレーラーに掲載しようと考えておりました。実は、第一回のミドルボードの会合の中で、すでに原の知り合いの印刷会社にゆるキャラを提案してくれと依頼していることが分かりました。キャラクター案も出来てあがっていたのですが、私自身今更ゆるキャラってどうなのかと思い最終的には社長の提案でしたが、一旦白紙にしていただくようにお願いいたしました。今でも、社長が「上野によってゆるキャラがつぶされた」と冗談でからかわれているのですが(笑)
画像コメント:最初からCSR活動を考えるために集まった会ではなかったと説明する上野氏
今回のCSR活動が実現できたのは多くの協力者の賜物
猪又:ゆるキャラの代替案はどうされたのですか?
上野氏:実はアミタさんのメルマガでCSR活動のQ&Aが掲載されていてそれが大変参考になりました。私も「本業以外でも何か地域貢献活動ができないか?」ということでボードメンバーと話し合いました。その話し合いで、地元の小学生に絵を書いて頂き、それをトレーラーに張り付ける「ラッピングカー」というアイデアが出てきました。たまたまですが、ミドルボードのメンバーに半田市在住者がおり、その彼の同級生が半田市内の小学校の教諭をしていました。すぐに、その教諭経由で小学校の校長先生に話を持っていったら是非やろうという話になりました。
猪又:でも教育委員会が反対するのではないでしょうか?
上野氏:その辺りも校長先生が教育委員会の方々に掛け合って頂き、今回の活動は、あくまでも「子供たちのためにやる」ということで納得を頂きました。今回の活動は荷主様の同意がないと実現できませんでした。また、このトレーラーが衣浦物流という弊社の子会社の所有車なのですが、そこへも今回の企画について説明をしてトレーラーにラッピングをする許可を頂きました。また、運転手さんへの説明をいたしました。更に、ラッピングの印刷をしてくれた半田中央印刷様、更に半田市の町興しを運営している地元の方々など、皆様の賛同がないと活動自体も難しいのです。
画像コメント:地域の多くの方々に協力頂いたからこそ活動が実現できたと力説する上野氏
期待と不安で一杯だったが、予想に反して492枚の小学生からの絵が集まった!
猪又:学校、行政、地域の方々とも協力しながら連携して活動が実現できたことは凄いことですね。
上野氏:正直ここまで大きな活動になるとは思いませんでした。最初は小学生の子供たちに絵を描いてもらえるのか、募集をかけたけれども1枚も集まらなかったらどうしようか、逆に集まりすぎて掲載出来ない場合はどうしようかという心配や不安で一杯でした。今回は任意で家族をテーマに小学生に絵を描いてもらいましたが、予想に反して492枚の絵が集まりました。その中で180枚を大きな用紙に印刷をして、それをシールにしてトレーラーのボディーに張り付けました。費用は作業を含めたシールの印刷代、式典代などかかりましたが、今後の業務を考えた場合に、行政とのパイプが強くなったこと、半田市と亀崎地区の愛知海運の名前を知って頂けたことを考えた場合に決して高い費用ではなかったと考えております。
画像コメント:CSR活動には費用が掛かったが、それに見合う効果があった。
地域住民、行政、社員など約400名の方がお披露目会に集まり大盛況で終了
猪又:11月の式典はいかがでしたか?
上野氏:11月に実施したトレーラーのお披露目会ですが、なにしろ私たちもこういったイベント自体が初めてだったこともありうまくいかずに大変でした。お披露目会の直前、ボードメンバーは朝5時に出社して業務をこなしながら式典の準備に追われていました。一生懸命準備した結果、当日は天気も良く、当初想定していなかった約400名ぐらいの方にお越しいただきました。そのイベントには、絵を描いてくれた児童やそのご家族の方は勿論ですが、小学校校長、衆議院議員、県議会議員、区長、半田市長など協力頂いた方も参加いたしました。また、地元の新聞、ケーブルテレビからの取材を受けたり、半田市の市報に掲載されたりしてイベントの認知も高まりました。更に、荷主様に協力を頂きまして、トレーラーが運んでいる木材チップがノートやティッシュになるまでの製造工程をパネル展示したりして子供たちにも衣浦港の役割などを説明をさせて頂きました。また、絵を描いてくれた小学生にはノートを、それ以外の方にはティッシュを配布いたしました。
活動前はリスクを心配する人もいたが実施後はそれが危惧に終わった
上野氏:実をいうと、今回の活動で一番苦労したのは社内の調整でした。この活動を実施することで、注目が集まっていいと思う人もいれば、逆にそう思わない方も何人かいました。そう思わない人の理由として、今回の活動を実施することで「そもそもトレーラーを100台走らせている事自体が問題じゃないか?」と地域住民に思われるのではないか?と心配する声もありました。実際に、地域住民の方からもよく思われていないという声も聞いていましたし。現状では、地域の方には定期的に説明会などを実施していますが、社内的に、こういう活動が新たに問題を引き起こすリスクを生むのではないかと思われることもありました。
猪又:実際に実施してみてどうでしたか?
上野氏:現在、社長以外にミドルボードのメンバーは6名ですが、お披露目会のお手伝いを社内にお願いしたら、お休みにも関わらず、有志が約25名がきてくれました。今では、社内も100%やってよかったといってくれています。特にお披露目会に参加してくれた社員は子供たちやそのご家族がものすごく喜んでくれたり、写真を取ったりしている姿をみて感動していたようです。お披露目会で小学生の代表の子が、「交通安全でこれからも仕事を頑張ってください」と言われたときには、そのときにはあまり感じませんでしたが、後から考えてみると、自分たちの仕事の重要性を改めて気づき直しました。
今後の展開は?
猪又:今後の活動の展開は?
上野氏:半田市長や校長先生からは「ラッピングトレーラーをまた今年もやるんだよね」という声も上がっています。今回は半田市、亀崎地区がスタートとして地域と関わりながら進めてまいりましたが、今後は目的地である岐阜県内で実施しようという話もあがっています。ただし、ミドルボードは今年3月で一旦解散いたします。また新たにメンバーが招集される予定ですが、そのボードメンバーたちの判断になると思います。
猪又:CSR活動は続けていくことが大切です。是非、今回の取り組みを続けていってもらいたいですね。今回は色々なお話しをお聞かせ頂きましてありがとうございました。
プロフィール
上野 明(うえの あきら)氏
愛知海運株式会社
国内ロジスティクスカンパニー
2003年4月入社し、名古屋港に入港する船の作業管理等を経験後、商社への出向を3年間経験。2014年4月より現部署にて内航船を使用した物流の提案営業を行う。
インタビュアー
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
CSRプロデューサー
早稲田大学理工学部卒業後、大手通信教育会社に入社。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。
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