インタビュー
キッコーマン食品株式会社 マネージャー室販促支援グループ 林 祐樹 氏キッコーマン|本業でのCSR~鮭を取り戻す販売促進活動~
伝統的な調味料の生産や、調理時間の短縮・料理のレパートリー提案のための商品開発を行っているキッコーマングループ。日本人の魚の消費量が減っている今、元来日本の食卓で主流だった魚を食べてもらおうと、「うちのごはん」シリーズに鮭、いか、鰤の3種類を新たに追加し2月から発売している。鮭について調べるうち、ある社会問題に気付いた林氏。この秋、CSR関連部署とコラボレーションし社会貢献につながる販売促進活動を展開されるということで、お話を伺いました。
岩手の鮭漁獲量が年々減少。特に震災以降急速に減っている!!
高橋:今回CSR関連部署と連携した販売促進を企画されていると伺いました。企画の概要について教えてください。
林氏:近年、日本国内において魚の消費量が減っているのはご存知でしょうか?食の欧米化や、肉に比べて魚料理のレパートリーが少ないこと、調理時、特に焼いた時の臭いなどの問題から、魚を調理する人が減っているようです。伝統的な調味料を昔から作っている当社では、本来日本食の中心であった魚をもっと食べてもらおうと、レパートリーを増やす一環で、この度「うちのごはん」シリーズに、鮭、 いか、鰤に関連する商品を新たに発売いたしました。これから販売促進を進めて行く時にどのようにお客様にアプローチするか検討していたところ、鮭の国内漁獲量が減っていることを知りました。
鮭の国内の主な産地は北海道と岩手などの東北地方なのですが、岩手では特に震災以降漁獲量が急激に減少していました。国内の漁獲量を保つことは食料自給率の確保にも繋がりますし、魚の中で人気の鮭が値段の高騰などで将来食べられる機会が減ってしまう危険を避けるためにも、この社会問題に関われないかと考えました。
そこで、岩手大学三陸水産研究センターにご協力いただき、"うちのごはん魚介のおかずサラダ"の 「サーモンの竜田風」「イカの唐揚風」「ブリの香り揚げ風」の売上1袋につき鮭の稚魚1尾を川へ放流してもらう、という「みんなで鮭の稚魚を送ろうプロジェクト」を立ち上げました。岩手大学では鮭のDNA分析により鮭の回帰について研究しており、当該商品の9月〜11月の売上実績に応じて売上の一部を大学に寄付し、稚魚の放流を通じて研究を支援していきたいと考えました。また、お客様に対しては、当該商品の販売促進活動を通じて鮭の問題に関心をもっていただき、一緒にこの社会問題に対応していけたらと思っています。
高橋:9月からの企画ということですが、反響はいかがですか?
林氏:今回の企画をスーパーなど小売店に話したところ高評価でした。10月から本格的に展開し店頭での試食販売等を行っていく予定ですのでお客様の直接の反応はまだ分かりませんが、これから徐々に広まることを期待しています。
画像コメント:グラフを見ると、岩手県の鮭の回帰率が減っている様子が分かります。
CSR担当部署との連携により、新しい販売促進活動を実現!
高橋:社会貢献も兼ねた販売促進活動はストーリーがあって面白いですね!以前にもこういった企画はあったのでしょうか?
林氏:今回が初めてなのです!鮭の問題に取り組みたいとCSR担当部署に相談し岩手大学との連携が取れました。当面はこの企画を進め、販売促進に社会貢献の要素を取り入れられるのか検証していきたいと思います。
画像コメント:「みんなで鮭の稚魚を送ろうプロジェクト」の企画や大学と連携した仕組み作りを行ってこられた林様。
寄付をする仕組み作りや外部パートナーとの連携で気を付けた点とは?
高橋:寄付をすると、御社にとっては本来得られる利益が減ることになりますよね。この企画をご提案された時の社内の反応はいかがでしたか?
林氏:企画の趣旨は社会貢献活動が中心です。売上アップは最終目標ではありますが、当面は社会貢献や復興支援のため、また多くの方に広く問題を知っていただくことが目標です。このような共通認識を社内でもつことができ、実現に至りました。
高橋:岩手大学協力をお願いする際に注意したことはどのようなことでしたか?
林氏:まずは3年間継続して実施することにしました。単年のみにしてしまうと販売促進活動のイメージが強くなってしまうのではないかと感じたからです。継続して岩手大学を支援することで、社会問題にきちんと取り組みたいと考えました。
また寄付をした分確実に稚魚を放流してもらえるよう大学との契約を結びました。稚魚を放流した時にはホームページや会員へのメールマガジンで報告する等、当該商品を購入してくださった皆様との約束を果たしたことも伝えていこうとも考えています。
高橋:今日は貴重なお話をありがとうございました。この企画の動向について、また教えてくださいね。
画像コメント:林様は営業時代の知識や経験を生かして、販売促進に社会貢献の要素をどのように取り入れるかを模索してこられました。社内外を巻込んで新しい企画を立ち上げるにはいろいろな課題がありますが、林様の鮭を取り戻したいという熱意で乗り越えていらっしゃいました。
編集後記
このインタビューの後、早速スーパーへ行ってみました。小さな店舗でしたが「サーモンの竜田風」も置いてあったので早速購入して作ってみました!調理の途中、子供に進行を止められつつも10分程度で完成!ビニール袋に付属の粉と鮭の切り身を入れよく振り、フライパンで焼き、最後に付属のソースを絡めるだけ!! 簡単で美味しく、彩りもこんなに綺麗♪ 化学調味料を使っていないのも嬉しい!その上、特別なことをしないで社会貢献できるこの販売促進活動は素晴らしいと感じました。10月から本格始動ということですが、私たちも経過を追っていきたいと思います。
貴重なお時間をいただいた林様、改めましてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
プロフィール
林 祐樹 氏
キッコーマン食品(株) マネージャー室販促支援グループ
2004年4月に入社し、近畿支社量販営業部で量販店企業への営業活動を7年行う。その後、近畿支社営業企画部で営業のサポート業務を3年行い、2014年6月現在の部署に異動。現在は全国の店頭向け販売促進提案を立案。
インタビュアー
高橋 泰美(たかはし ひろみ)
アミタ株式会社 CSR JAPAN副編集長
筑波大学第三学群国際総合学類卒。2005年7月に入社し、企業の廃棄物管理に関するソリューション営業やエコ活動に関する企画提案など行う。その後三度の出産、育児休業を経て、2014年4月より復職。現在は企業のCSRに関する企画提案やCSR活動の支援等を行っている。仕事、育児、家事の両立について日々研究中。
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