インタビュー
株式会社ディノス・セシール 広報室 CSR・社内広報ユニット 蓼沼 透 氏 / 山内 三保子 氏ディノス・セシール|管理職向けにCSR研修を実施した効果とは?
株式会社ディノス・セシールでは社内でCSRの取組みを促進させるため、部長を中心とした管理職を対象としたCSR研修を実施されました。対象を管理職に絞った理由や研修を実施した目的、研修後の社内変化についてお話を伺うことができました。
環境ISOからCSRへ
高橋:様々な会社でCSRの取組みが進んでいますが、御社でCSRへの取組みが始まったきっかけを教えてください。
山内氏:旧ディノスでは2001年、当時の社長が今後は環境への取組みも必要との考えだったこともあり、ISO14001認証を取得、活動を開始しました。しかしながら、当社では製造や物流を委託しているため製造業等に比べて環境負荷が比較的少なく、社員から自分たちの部門は環境活動は関係がないという声が聞かれるようになりました。そんな時、ISO14001の審査員から、「ISO14001の"環境"はecologyではなくenvironmentであり対象に人も含まれるCSRの活動もやっていいんだよ」とアドバイスを受け、ISO14001の取組みの中で活動の範囲を広げたのがきっかけです。CSRの観点で活動範囲を広げると社員の環境活動が活発になりました。東日本大震災時には復興支援としてできることがないか、社員個人レベルでも事業レベルでも企画が次々と立ち上がり、その結果、東京商工会議所主催の「eco検定アワード2012」で大賞という評価をいただきました。この受賞で、CSRは無理なく全社で進めていけるという確信を持ち、IS026000をベースとしたCSRに取り組むことにしたのです。
画像コメント:株式会社ディノスの時から環境ISOやCSR業務を推進されてきた、山内氏。新会社誕生後もCSRスペシャリストとしてCSR活動の推進を行っている。
管理職を対象とした研修を実施
高橋:この夏、貴社ではCSRに関する研修を実施され、弊社からも講師を派遣させていただきました。研修を企画され、また外部講師に依頼されたのはなぜでしょうか?
蓼沼氏:当社は昨年、株式会社ディノスと株式会社セシールが合併して誕生した会社です。旧ディノスではISO26000をベースにCSRを進めていましたが、旧セシールではISO14001に準拠した環境活動を中心に行っていました。新会社としてはISO26000ベースでのCSRを進めていくことが決まっておりましたので、基本的な理解と、ある程度ご存知の方には情報のアップデートのため、研修を開催しました。講師の方からCSR全般の話をしていただき、CSRは堅苦しいものではなく、今の業務の視点を少し変えればいいということを伝えていただきたかったのです。
山内氏:CSR関連の状況は日々変わっていきます。なので定期的な研修が必要だと考えています。今までも広報室主催で社内研修は行っていました。しかしながら、内部講師ではCSRの必要性を社員に十分理解してもらえなかったり、活動を強制的なものと取られる可能性もあります。社外講師から伝えてもらった方が、社員の受け入れやすいのかもしれないと思い、この度アミタ株式会社に講師を依頼しました。
高橋:今回は全社員向けの研修にせず、対象を管理職に絞ったのですね。
山内氏:管理職の方々は、社として何かに取り組もうという時にキーとなる存在です。TOPダウン・ボトムUPも必要ですが、実務上はミドルUP・ミドルダウンが重要。管理職層の理解が得られればスムーズにいくことも多いし、成功事例が出た時の水平展開も期待できる、そう考えたときに、やはり管理職層にCSRについてある程度共通の認識を持っていただく必要があると。CSRや社会貢献マインドはほとんどの人が持っていると思うのですが、それは社外だけではなく社内でも、業務の中で取り組むものであること、業務の中ですでにできている取り組みもこともあること、その気付きが今後当社としてCSRを展開していくための初めのステップになると思っています。
また社会への貢献を意識すると、自然と社会問題への関心も高めることができる。CSRマインドを育てることは、法令順守やリスクコントロールにもつながると思います。
画像コメント:セミナー当日の様子。日常の業務にCSRをどう結びつけられるかという観点で熱心に受講。
CSRを通じて上司と部下に接点が!
高橋:研修を実施され、その後社内に変化はありましたか?
蓼沼氏:研修後、あまりCSRに関心のなかったという何名かの社員に話を聞くと、CSRは担当部門がやることで自分とは関係ないと思っていたと言うのです。「何をすればいいの?」という考えだったと。ですが研修後には、CSRは一部門だけが取組むのではなく、全社員が同じ目的に向うことで社員の結束力が高まったり業務へのモチベーションが上がったりする、お客様に対してはブランド価値向上につながり、それが利益につながるというところに気付いたのです。社員一人ひとりが取組まなければならないという意識に変えることができたことは大きな変化です。
セミナー参加者に数か月後の取組み状況を聞いてみたいですね。どのように変わっているか楽しみです。
山内氏:当社では、対象商品を購入すると寄付につながる仕組みをつくり、東日本大震災からの復興支援や途上国の女性の支援など様々な団体の支援を行っているのですが、今回の研修後、ある管理職の方から、新たにその寄付の仕組みを作りたいという相談がありました。残念ながら実現には至らなかったのですが、ちょっとうれしかったですね。これまでは、現場の社員の方が管理職を説得して...というパターンが多かったですから。
短期間のうちに受講者の1人が、CSRの本質を理解して行動してくれた、これは研修の成果であり、今後も同様の動きが広がっていくのではないかと考えています。
画像コメント:山内氏とともに、株式会社ディノス・セシールのCSRを推進してこられた蓼沼氏。研修に同行し、受講した管理職の意識の変化を実感。
CSRをきっかけに、事業全体が活性化することを期待
高橋:本日はCSR研修の大切さについてお話くださり、ありがとうございました。最後に、今後の貴社CSR活動の展望をお聞かせください。
山内氏:意識向上の部分で言いますと、管理職向けの研修を定期的に行いたいと思っています。今回は基本的な研修でしたので、業務の中でどのように取組むべきか等、本業につなげられるようにしていきたいと思います。またお客様と近い現場を担当している社員にも研修を行いたいですね。
私自身、CSRの活動を通じて各部署にコネクションができました。エコやCSRというキーワードで一つの方向を向くことで部署を超えた取組みができるという実感があります。
CSRで事業が活性化する、CSRという目的で部署や役職の垣根を越えて横断的な活動が進み社員同士のコミュニケーションが促進される等、合併後の事業発展につなげていきたいです。
プロフィール
蓼沼 透(たでぬま とおる)氏
株式会社ディノス・セシール
広報室 CSR・社内広報ユニット ユニットマネージャー
1986年、(株)フジサンケイリビングサービス(現ディノス・セシール)入社。カタログ通販・テレビ通販のMDを経て、催事担当の後コールセンターの運営を担当。2012年より広報部にてCSRに携わる。
山内 三保子 氏
株式会社ディノス・セシール
広報室 CSR・社内広報ユニット スペシャリスト
1988年、(株)フジサンケイリビングサービス(現ディノス・セシール)入社。入社以来15年、MDとして商品仕入れ・カタログ紙面製作・媒体管理に携わる。2001~2003年にかけてフェアトレード商品、ユニバーサルデザイン商品を販売、ソーシャルな活動に関心を持つ。その後産休・育休を経て2006年CSR担当となり現在に至る。
インタビュアー
高橋 泰美 (たかはし ひろみ)
アミタ株式会社 CSR JAPAN副編集長
筑波大学第三学群国際総合学類卒業。2005年7月に入社し、企業の廃棄物管理に関するソリューション営業やエコ活動に関する企画提案など行う。その後三度の出産、育児休業を経て、2014年4月より復職。現在は企業のCSRに関する企画提案やCSR活動の支援等を行っている。仕事、育児、家事の両立について日々研究中。
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