インタビュー
株式会社GSユアサ 環境統括部長 尾崎 満彦 氏GSユアサに聞く、事業領域を活かした環境・社会面での貢献とは?
前編のインタビューでは、広域認定制度の活用と資源リスクの関係について、お話いただきましたが、後編では、GSユアサの基幹事業である「蓄エネルギー」を通じた環境・社会面での貢献についてお伺いします。
企業が生き残る道は、環境面や社会面でのニーズに応える製品・市場を創ること
松田:広域認定を通じた鉛資源の回収以外に、どのような取り組みをされていますか?
尾崎氏:特徴的なものとして、リチウムイオン電池の事業があげられます。
企業は、事業が拡大すればするほど、事業規模に相応しい社会的役割を求められます。企業側もこれに応えられるように、環境面や社会面で貢献できる領域を拡げられれば、無理なく自社の事業価値を高め、併せて新たな社会的価値を創造することも可能となります。幸い、GSユアサの事業領域の中核には、蓄電池や周辺機器といった低炭素型社会や災害時での電力確保など、今日の社会的ニーズに近いところに位置するものがあります。技術開発面での不断の努力でこれらの利便性を更に高め、また新たなデバイスや製品をどんどん市場に提供することなどによって、これまで以上にお客様に満足していただくことが、GSユアサにおけるCSV即ち、「事業活動を通じた社会的価値の向上」の具現化であり、事業継続に繋がる道だと考えています。
リチウムイオン電池は、身近なところでは携帯電話など小型のものから、電気自動車やハイブリッド車など自動車用、更にはロケットにも搭載されています。特徴として小型で大きな電力を蓄えられること、充放電の効率の高いことがあげられます。充電で得た電力をより効率的に放電できるので、電力貯蔵用途としても多く使われています。GSユアサでは、その環境性能に着目し開発を進め、利用拡大を図ってきました。
松田:リチウムイオン電池を通じた環境貢献として、具体的にどんなことを行っているのですか。
▼非電化区間を電池で走るEV-E301系
尾崎氏:1つは、JR東日本で採用された新型車両EV-E301系があります。鉄道の場合、非電化区間ではディーゼル機関で走行するのが一般的ですが、EV-E301系ではディーゼルに置き換わり、GSユアサのリチウムイオン電池が搭載されています。これにより、排気ガスの排出抑制にも繋がりますし、回生ブレーキで発生するエネルギーを蓄電池に回収し、有効利用することができるようになりました。2014年3月からJR東日本東北本線および烏山線の宇都宮~烏山間で営業運転が行われています。日本には他にも非電化区間がありますので、それらの区間についても拡張いただければ、その分だけ鉄道分野での化石燃料消費の削減やエネルギーの効率利用、CO2排出削減につながります。
http://www.gs-yuasa.com/jp/newsrelease/article.php?ucode=gs150605311218_20
松田:是非乗ってみたいです。他にはどのような事例がありますか。
▼リチウムイオン電池専用コンテナ
尾崎氏:2015年9月に、島根県の隠岐諸島にある中国電力西ノ島変電所にコンテナ式リチウムイオン電池システムを納入しました。隠岐諸島のような、本土と送電網で繋がっていない離島では、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギー発電の導入に際して、蓄エネルギーが重要な役割を果たします。再生可能エネルギー発電では、発電出力が自然条件に左右されることが多く、電力供給がどうしても不安定になってしまうためです。
西ノ島変電所では、再生可能エネルギー発電で生み出した電力の安定供給のために、充放電能力に優れ、耐久性も備えたGSユアサのリチウムイオン電池システムを導入いただきました。
離島や、電力インフラの整備が進んでいない地域にリチウムイオン電池システムを広げていくことで、再生可能エネルギーの普及率向上にも貢献していきたいですね。
http://www.gs-yuasa.com/jp/newsrelease/article.php?ucode=gs151006350414_174
松田:これらの取り組みを生み出していく際に重要なことはなんでしょうか?
尾崎氏:省エネや資源の有効利用、または生物多様性の保全など、環境面や社会面で求められていることは多岐に渡りますが、現代社会で企業が生き残るためには、こうした環境面や社会面でのニーズに応えられるような製品や市場を自ら作り出していくことが求められています。そのためには、これらのニーズをいち早くキャッチアップすることが鍵であると考えます。
リチウムイオン電池は耐用年数が長いため、大体2020年くらいから使用済み電池が市場に増えてくるのでは、と考えています。取り扱えるリサイクラー(中間処理会社)さんが少ないのですが、産業用のリチウムイオン電池についても安定的な再資源化システムの構築が不可欠となるでしょう。
松田:鉛蓄電池と同様のリサイクルシステムが確立できれば社会的意義も大きいですね。本日はありがとうございました。
株式会社 GSユアサから学ぶ、事業を活かした環境面・社会面での貢献のポイント まとめ
- 事業開発の延長線上に環境面や社会面での貢献を位置づけ、事業規模が拡大すればするほど、環境面や社会面での貢献度が上がるという、比例の関係性を作り出すことが重要である。
- 環境面や社会面での貢献に繋がる製品を作り出すためには、環境面や社会面で求められていることをいち早く捉えることが鍵となる。
話し手プロフィール
尾崎 満彦 氏
株式会社 GSユアサ
環境統括部 部長
1985年 湯淺電池株式会社入社。資材部へ配属。以降、鉛主材料、自動車用電池部品 等を歴任。
2004年 日本電池株式会社と経営統合。GSユアサ資材調達統括部にて引続き鉛調達業務 等を担当。
2005年~2007年 SBRA共同スキーム構築に参加。
2007年~2014年 再び鉛調達業務 等を担当。
2014年 環境統括部へ異動。10月より環境統括部長(現職)
聞き手プロフィール
松田 弘一郎 (まつだ こういちろう)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ マーケティングチーム
岐阜県出身。法政大学人間環境学部を卒業後、アミタに入社。大学3年の夏に南インドを訪れ、廃棄物の再資源化等をはじめとした環境保全においても、先進国と途上国との連携・協働の促進が重要であると痛感する。現在は、非対面の営業やウェブサイトの管理などを担うマーケティングチームにて、廃棄物に関する問い合わせの窓口を担当。
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