インタビュー
サッポロホールディングス株式会社 グループリスクマネジメント部 CSR社会環境グループ マネージャー 三堀 将 氏 「点」をつなげ、ストーリーにしてCSRを発信していきたい
「企業の社会的責任」と呼ばれるCSRは、消費者が安心できる企業を選ぶ基準のひとつとされています。CSRをうまく商品に活かしてアピールするためにはどのような工夫が必要なのでしょうか?
今回はサッポロホールディングス株式会社、グループリスクマネジメント部CSR社会環境グループの三堀氏に「サッポログループのCSR」についてお話を伺いました。
岩藤:サッポロホールディングスはどのような会社ですか?
三堀氏:「安全・安心・健康」をキーワードに、幅広く「食」の分野でお客様が望まれる価値を提供する「食品価値創造事業」。飲食店舗・商業施設・オフィス・住宅などの街づくり全体で、豊かな時間を過ごすことができる快適な空間を提供する「快適空間創造事業」。サッポログループはこの2つの事業ドメインにおいて、グループの資産・強みを活かした事業を展開しています。
岩藤:御社の目指すCSRについて教えてください。
三堀氏:弊社の経営理念は「潤いを創造し 豊かさに貢献する」であり、その実現のため「新しいNO.1」となる商品やサービスの創造と提供を積み重ね、世界各地で、お客様の豊かな生活のためになくてはならない企業になることを目指しています。
この世の中、「潤いが足りない」と思いませんか(笑)そんな中、経営理念の実現が究極のCSRだと思っています。
岩藤:具体的にはどのようにCSRに取り組んでいるのでしょうか?
三堀氏:サッポログループでは、2012年3月にCSR重要課題を制定しました。その後、各事業会社で具体的なアクションプランを設定してPDCAを回しています。
▼参考リンク
サッポロHD CSRレポート2014年度
CSRの強みはビール原料へのこだわり
岩藤:御社のCSRの強みとは何でしょうか。
三堀氏:当社のCSRの強みの一つは、原料へのこだわりです。 例えば、サッポロビールでは、2006年よりビール、発泡酒等に使用するすべての麦芽とホップで協働契約栽培100%を大手ビール会社で唯一実現しています。協働契約栽培は、フィールドマンと呼ばれる原料の専門家が、生産者と協働で確かな品質と安全・安心をつくり上げています。
岩藤:100%というのはすごいですね。食品・飲料事業ではいかがでしょうか?
三堀氏:ポッカサッポロ・フード&ビバレッジは、2013年に日本最大のレモン産地広島県と「瀬戸内広島レモン」パートナーシップに関する協定を結び、広島県と共にレモンの普及活動を推進しています。
近年は食の安全志向の高まりを背景に、加工食品の生産国や原材料の産地を重要視する消費傾向が見られるようになりました。こうしたニーズにお応えすべく、徹底した品質管理の下で栽培された国内産レモンの使用にこだわった商品も発売しています。
岩藤:地域との連携も御社は特に重視されているのですね。
三堀氏:その通りです。私どもの事業活動は、創業の地、生産・営業の拠点、原料の生産地など、様々な地域とご縁があって初めて成り立っています。こうした認識のもと、事業ごとの強みを活かし、地域のニーズに応え、地域の発展に貢献していきたいと思います。
岩藤:私はワイン好きなのですが、ワインにもこだわっていらっしゃるんですか?
三堀氏:はい。国内では、サッポロプレミアムワイン「グランボレール」ブランドに使用する高品質な葡萄を栽培するため、自社で長野県池田町に葡萄畑を保有し国産100%の高級ワインをつくっています。こちらも生産者との協働契約栽培など、原料づくりから徹底的にこだわっているブランドです。
岩藤:そうなんですね。生産者や地域と連携した原料へのこだわりが、飲む人の満足につながり、CSRの強みにもなっているのですね。
「つくり始めから、飲んだあとまで」総合的なグリーン商品づくりを目指して
岩藤:各地域で、原料にこだわったCSRがよく分かりました。では、バリューチェーン全体を通じた取り組みはいかがでしょうか?
三堀氏:ポッカサッポロフード&ビバレッジのカートカン商品をご紹介します。カートカンとは、森林整備の過程で生じた間伐材や端材を活用した環境配慮型紙製容器です。当社のカートカン商品は売上の一部が「緑の募金」に寄付され、国内の森林整備を行うボランティア団体やNPO等の活動資金として活用されています。
レインフォレスト・アライアンス認証茶葉100%使用の「素材がやさしいミルクティー」(右)
三堀氏:最近では、国産の間伐材を薄くシート状に加工したものを貼り付けた、独自のラッピング自動販売機を開発しました。また、間伐材を使用した木枠で装飾した自動販売機を展開するなど、日本の森林を元気に育成するため、間伐材の複合的な活用にも取り組んでいます。カートカン自動販売機の設置は、お客様に、環境配慮の姿勢を示すことができると同時に、環境に対する関心を高めていただくことができます。
岩藤:購入する商品の品質が優れ、かつ環境保護につながることは消費者としても嬉しいですね。
三堀氏:もう一つ。カーボン・オフセットを利用したキャンペーン「北海道の森に乾杯!」を紹介します。こちらは北海道の森林から生まれたCO2クレジット(J-VER)を利用したもので、350ml缶1本あたりに、約66g、お飲みになったお客様の日常生活から排出されるCO2を減らすことができます。また売り上げの一部は、コープさっぽろ様の「コープ未来(あした)の森づくり基金」に寄附され、「未来(あした)の森」を育てる活動に貢献しています。
岩藤:飲むことが地球温暖化防止につながり、北海道の森を元気にするなんて!とても素敵です。BtoC企業ならではの、バリューチェーン全体を意識したCSR活動ですね。
「点」をつなげ、ストーリーにしてCSRを発信していきたい
岩藤:御社の今後の展望はどのようにお考えなのでしょうか。
三堀氏:サッポログループのCSR経営を、企業ブランド価値向上につなげていきたいと思っています。そのためにはさまざまな活動を点ではなく、ストーリーをもってしっかりとアピールし、ステークホルダーの皆様に認めてもらうことが大切だと思います。例えば、食品原料の多くは農作物ですから、持続可能型農業の促進というテーマについて、食品メーカーとしてあるべき姿を示していきたいと考えています。
岩藤:とても共感します。本日は、お話を伺って初めて知ることばかりでした。アピールする相手はお客様だけでしょうか?
三堀氏:いいえ。CSR推進は、常に幅広いマルチステークホルダーの皆様を意識して実施しています。例えば、投資家に向けたアピールとしては、国際環境NGO「CDP」への情報開示を誠実に行っています。
岩藤:御社はCDP気候変動レポート2013 で、2年連続でCDLI(開示先進企業)に選出され、生活必需品セクターでNo.1のスコアですね。
三堀氏:ありがとうございます。当社の積極的な気候変動への取り組みを、評価いただいた結果だと思います。これからも、新しいNo.1を積み重ね、それをステークホルダーの皆様にお認めいただけるようにアピールしていきたいと思います。
企業ブランド価値を高めるCSRに向けて
岩藤:今回、様々なお話を聞いて思ったことは、幅広い事業活動を通じて取り組まれている、活動ファクトをストーリーでつなげることの大切さです。そうすることで、ステークホルダーにCSR活動が伝わりますし、サッポログループ内のシナジーにもつながると感じました。
三堀氏:その通りです。CSRは自己満足ではなく、どれだけステークホルダーの皆様にお認めいただけるのか?が大切だと思っています。ストーリーのある活動を全事業会社で実行し、それをきちんとお伝えできたなら、必ず企業ブランド価値向上につながると考えます。
岩藤:ストーリー性のあるCSR活動は、商品ブランドのように、御社の価値を高めることにつながると思います。いわば「CSRブランド」。その実現を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
※本文及び画像は以下のサイトより使用させていただいています。
サッポロビール株式会社
http://www.sapporobeer.jp/qualityassurance/material/contractfarming.html
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
http://www.pokkasapporo-fb.jp/products/cartocan.html
話し手プロフィール
三堀 将 氏
サッポロホールディングス株式会社
グループリスクマネジメント部 CSR社会環境グループ マネージャー
1994年サッポロビールに入社後、約15年間、各工場と本社でエンジニアリング業務を担当。2010年から、サッポロホールディングスのCSR・環境業務に従事。モットー「万人に受けてこそCSR」。
聞き手プロフィール
岩藤 杏奈
アミタ株式会社
環境戦略支援グループ カスタマーリレーションチーム
岡山県出身。神戸大学卒業後、アミタ入社。学生時代、カンボジアでのボランティア活動を通してエネルギー循環型社会の大切さに気付く。現在は非対面の営業チームであるカスタマーリレーションチームにて、アミタの各種サービス提供を担当。
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