「小さな企業のCSR」~CSRレポートは事業計画を作ることと同じです~(最終回) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

株式会社カスタネット 代表取締役社長 植木 力 様「小さな企業のCSR」~CSRレポートは事業計画を作ることと同じです~(最終回)

  • 「CSRレポートは大企業でないと予算も人員もなくてとても作れない...」
  • 「課題もきっちり報告しましょうと言われても、結局は上長の修正が入る過程で消されてしまう...」
  • 「うちにはCSR活動をやる予算はないんだと言われてしまう...」

「『それではいけません!』と正論で言われても現実は違うんだ...」、とお悩みのご担当者様に、実際それらのことを実行されている株式会社カスタネットさんはどのようにされているのか、うかがってきました。

3回連載の最終回です。

CSRレポートは事業計画を作ることと同じ

植木氏:中小企業の方々はなぜCSRレポートを作らないのか?と疑問に思います。経営者にとって、CSRレポートは社会に対してのマニフェストなんです。事業計画を作ることと同じなのです。そこが今理解されていない。別に活動内容がたくさんなくてもいいのですよ。始めたばかりの活動でもいい。中小企業って必ず何かCSRと呼べる活動をやってるんですよ。過去を調べてまとめたら十分作成できます

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猪又:その一手間が重要ですよね。体裁とかも、きれいでなくてもまずは伝えることから始めたらいいと思うんです。

植木氏:さらに、大企業と中小企業のレポートの違いで大きなポイントがある。それは誰に読んでもらうかです。大企業は個人投資家や、機関投資家、海外の取引先等、様々な利害関係者がいる。でも、中小企業は規模が小さいから利害関係者もそこまで多くない。そして何より大きな利害を共有しているのはお客様なんですよ。特にメインは既存の取引先です。新規のお客様ってそうそう増えるわけじゃない。中小企業だと中々増えないと思う。

ただ、仮に会社案内って更新しても普通取引先に送れないですよね。それに10年ぶりに更新しましたって送っても、「もう知っているから」って読まないですよね。でもCSRレポートだったら既存のお客様に持って行けるんですよ。要は、営業ツールなんです。会社案内を読んでもらうためにレポートという体裁を敢えて作ったんです。

中小企業で会社案内を作れる会社っていっぱいありますよね。その予算があるんだったらなぜCSRレポートを作らないのか。会社案内に、お金をいっぱいかけたりして、きれいなものを作るが、誰のためにやっているのか。下手したら従業員すら読まない会社案内を作るくらいなら、従業員が読みたくなるような、CSRレポートを作って自分の会社はこんなことしてるって言えるようにしたほうが余程いい。簡単なことなんですよ。

蝦名:ですから御社のレポートは社内報の意味合いも込められていますよね。

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植木氏:そうです。当然ですが、従業員は経営者ほど愛社精神が無いのです。仕事以外の時に会社の業績とか考えない。重要なのは、友達とか親戚とかにどんな会社に勤めているかと聞かれた時に、何がいえるか。言えないってことは、愛社精神がない。その人が朝起きて会社に行くのを嫌だと思っていたり、お金を稼ぐためだけに仕事をしていて社会に役に立っている実感がなかったり。それでいて、楽に稼げる時代ではなくて、病になって辞めたりする。「自分はこんな会社で働いている」と言えることは、自然に愛社精神が生まれ、働くモチベーションが沸くものなんです

中小企業は一人のモチベーションが下がったら大きな影響になる。逆に一人のモチベーションがあがったら大きな力になる。一人による影響力が大きい。だから、印刷代にかけるお金は微々たる物だと考えています。

植木氏:ある時自社のCSRレポートを大企業の方に見てもらいました。ある人が、環境や人権のことが書いてませんねと言いました。でも中小企業に環境とか人権等ガイドラインに記載されている情報をすべて記載する必要があるでしょうか。ガイドラインに掲載されている情報を網羅するのがCSRレポートかと。今自社のCSRに関する現状をわずかな情報でも伝えることを始めているほうが余程CSRの主旨に沿っていると思います。

猪又:今お話いただいた感覚って、大企業のご担当者様が言いたくてもいえないものなんだとも思います。植木さんのお話を聞いて、企業規模に関わらずシンプルに、偽りない現状を伝えたいと思っていただいたらすごく意味がある。

蝦名:そうなったときに敢えて出そうな質問を伺うと、「うちも中小企業なんですが植木さんみたいにしたいんです、どうしたらいいですか。」という問いなのですがいかがでしょうか?

植木氏:最低限A3二つ折りからでもいいので作り始めることです。会社案内をCSRレポートにしたら、それだけでいいんやと思います。そんなん微々たるお金です。書くことがないって言いますが、中小企業は絶対CSRにあたる活動をやっていますし、仮になかったとしたら、すいません今は何もしてません、でも今年はこれをしますと目標を書くだけでもいい。

猪又:CSRJAPANはそういう企業さんにも是非掲載してほしいと思います。そんなに難しく考えないことですよね、A4一枚、表がCSRレポートで、裏に会社案内が書いてあって、下に検討中とか書いてあるようなものでも事実が掲載されていたらいいと思います。セミナーでもより多くの方に本日のようなお話をたくさん語っていただきたいと思います。本日はありがとうございます。

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▼連載記事一覧はこちら
第1回:CSRの本質は社会に役立つことでお金が儲かるということ
第2回:会社案内を充実させようとしたときにCSRレポートを思いつきました
最終回:CSRレポートは事業計画を作ることと同じ

関連情報
プロフィール
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植木 力 氏
株式会社カスタネット
代表取締役社長

1958年 京都府生まれ。高校卒業後、航空自衛隊に入隊。その後大日本スクリーン製造株式会社に転職し、管理系の仕事に従事。2001年に社内ベンチャー制度によりオフィス用品販売会社・株式会社カスタネットを創業。立ち上げから社会貢献活動を行い、創業2年で6000万円の赤字を抱えるも、活動を継続。徐々に取り組みが評価され、2010年に発行した『小さな企業のCSR報告書』で一躍有名となる。「企業にとって事業と社会貢献は車の両輪」をモットーに、社会貢献が企業の信用度を高め、営業面でも有利に働くことを実証した、社会企業家の草分け的存在。著書に『事業の神様に好かれる法17カ条』『小さな企業のソーシャルビジネス』等がある。

(聞き手)プロフィール
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猪又 陽一
アミタホールディングス株式会社
総合環境ソリューション推進グループ
マーケティングチーム リーダー

早稲田大学卒業後、株式会社ベネッセコーポレーションに就職。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業の日本法人等の立ち上げに携わる。その後、株式会社リクルートエージェントを経てアミタに合流。環境・CSR分野におけるマーケティングを担当。2010年企業ウェブ・グランプリBtoB部門受賞サイト「おしえて!アミタさん」やCSRレポート比較サイト「CSR JAPAN」等をプロデュースする等Webを使ったコミュニケーション実績多数。

(聞き手)プロフィール
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蝦名 裕一郎
アミタホールディングス株式会社
経営統括グループ 共感資本チーム

神戸大学大学院国際協力研究科修了。アミタ株式会社に入社後、コンサルティング部門にて、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイトCSR JAPANの運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。

■ブログ: CSRが当たり前になる世の中に

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