インタビュー
株式会社ディスコ 広島環境管理チームリーダー高木 隆行様社内を巻き込む環境活動(2/2)
~きちんと投資しないと、成果はでません~
前回に引き続き、株式会社ディスコ 環境マネジメント室 広島環境管理チームリーダー高木 隆行氏に、経営と社員を巻き込む秘訣、事務局のコツをお聞きしました。
(←第1回の記事はこちら。)
サプライチェーンのCSRにも注意しなければ、健全な企業活動は難しい
蝦名:生物多様性、地域貢献、環境教育は活動しようにもなかなか本業とのつながりや具体的活動がイメージしにくいテーマのようですが、貴社はどうされていますか?
高木氏:お客様等から、「コンゴ紛争鉱物を調達していないか?回答をほしい。」といわれました。幸い弊社は調達していなかったのですが、海外の環境に関する要望は非常に厳しいです。今後、サプライチェーンのCSRにも注意しないことには、健全な企業活動は難しいと感じました。
サプライチェーンに対するCSRの中で、生物多様性の問題があります。例えば、当社はニッケルを使っています。ニッケルの主産地は観光で有名なニューカレドニアですが、裏側では山を削っている。そういう現地の現状を社員に教育して、生物多様性と当社の活動のつながりを理解してもらいます。このようなこともeラーニングで学べるようにしています。
蝦名:植林活動を開始された経緯をお教えください
高木氏:社内だけでなく、社外や地域にも貢献するという目的、また社員とその家族を巻き込んで生物多様性を理解してもらうために、植林地を探していました。
社員の家族も来てくれて、特にお子さんにとっては貴重な体験のようで非常に喜んでくれています。今回も募集100名に対して160名の申込がきました。ボランティア活動で、休日に来てもらわないといけないのですが、みんな楽しんで参加してくれていいます。今は中学生も学校で環境教育を受けていますので、現場で生物多様性を学ぶちょうど良い機会になるようです。
高木氏:参加している社員に参加理由をヒアリングしたところ、「自分でコミットすると掲げた目標なので参加しています」という回答を聞けました。地域貢献を果たすというビジョンとのつながりも意識してくれていました。
この活動がすぐにお金になると思っていませんが、生物多様性がいかに重要なことかということをきちんと社員に理解してもらうことから始めようとしています。「緑の認定 」(注1)を2020年までに最高ランクを取得するということも指標化しています。あとは「SATOYAMAイニシアティブ」(注2)を確立していこうと考えています。
注2:「SATOYAMAイニシアティブ」・・・国連大学高等研究所と環境省によって推進される試み。里山が、人の福利(=human well-being)と生物の多様性の両方を高める可能性があることに着目し、土地と自然資源を最適に利用・管理することを通じて、人間と自然環境の持続可能な関係の再構築を目指す。
環境活動の事務局は企画力が勝負
蝦名:参加者を増やすような工夫はなさっているのですか?
高木氏:当初は楽しんでもらうために、バーベキュー等楽しいイベントも用意しましたし、イベントは参加しやすいように半日から1日で終わるようにしています。後は、各回の活動で充実感を与えるように工夫しています。東京からわざわざ参加してくれた社員もいて「東京でもやってほしい」という声もありました。
環境新聞や環境掲示板という社内告知もやっていて、景品つきのクイズを企画したこともあります。そういう企画力も事務局の力の見せ所ですね。
今では、各社員も独自に環境活動を楽しむ企画を考えているようです。海岸清掃のボランティアの後に釣りを計画したり、営業部門が営業訪問の際にも社有車の燃費を指標にして、燃料効率のナンバー1を競う取り組みをやったりしていて、社内で表彰されたりもしています。
蝦名:競争の中で、だめな人を罰するより、良い人をほめるということでしょうか?
高木氏:そうですね。コンプライアンスはボトムアップが必須ですが、その先を行く取り組みの場合は自発的行動と良い活動を表彰しています。弊社には賞がたくさんあって、環境活動に対する賞もあります。今後はサイト(拠点)ごとの取り組みを競ってもらい、表彰するようなことを考えています。
やはりきちんと経営資源を投資しないと、環境活動も成果はでませんよ。
蝦名:貴重なお話ありがとうございました。
関連情報
(聞き手)プロフィール
蝦名 裕一郎 (えびな ゆういちろう)
アミタ株式会社
マーケティング事業部 マーケティングチーム
アミタ株式会社に入社後、人事部門、コンサルティング部門を経て、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。
ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイト「CSR JAPAN」の運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。
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