インタビュー
株式会社コスモスモア CSR推進室 小川 陽平 様・永 拓也 様 社員を巻き込むCSR・環境活動(1/2)-CSRレポートをどう使う?
CSRレポートには、外部に向けて説明責任を果たすという役割があります。一方で、その制作過程や配布方法によっては、社員の活動を促進したり、啓発したりする効果もあります。
今回は、社員の活動促進や啓発にCSRレポートを活用しているコスモスモアのCSR推進室 室長 小川 様、永 様にお話を伺いました。
まずは社内の活動を形にすることから
蝦名:サステナビリティレポート創刊の経緯をお聞かせください。
小川様:社内の社会貢献活動を冊子に残そうということで、私が発案しました。いま取り組んでいる活動が掲載されれば、そのうち事業との連携が始まるだろうと。また、いきなり本業での環境活動についてガイドラインに沿った報告書が書けるような体制ではなかったので、それならと他社とは方針を変えて、社内活動から始めるレポートにしました。
また、形にしたものを外部に配り、「いいですね」と評価されて始めて、社内が活動の意味に気づく。そのためにも形にすることは重要だと思いました。ガイドラインも良いと思いますが、レポート発行の主目的が情報開示にないのであれば、何か他の目的を考えたほうがいい。
リーマンショック前後、J-SOX等ガバナンスに関するものは、既にやっていました。だから、ガバナンスは当社のレポートの範囲に入れていません。なにより続かないと意味がないので、楽しく継続できたほうがいいと思っています。
編集長はみんなで持ちまわり、家族にも配布
蝦名:他の企業様だと、外部への説明責任を果たすことが主目的のため、通常GRI(グローバル・ レポーティング・イニシアチブ)等のガイドラインから入り、社内の巻き込みに苦労されているように見受けられるのですが、全社を巻き込んで作るというコンセプトで考えられたのはとてもユニークだと思います。
貴社のサステナビリティレポートを拝見して、非常にデザインから編集、内容まで特徴的なのですが、誰がどうやって作られるのですか?
小川様:デザインに長けた社員がやってくれています。表紙など一部は外部に委託していますが、創刊時の2008年は表紙含めすべて社内で制作しました。現在もそのデザインを踏襲してくれています。
蝦名:毎年、編集長は持ちまわりなのですか?
小川様:スタッフ部門で2008年、2009年と作って、2010年から持ちまわりになりました。目次割や分担も様々な部署から選抜された編集会議で決めています。
永様:部署によりますが、挙手制でメンバーを選定している部署もあります。
「社内報」のような位置づけの読みやすいレポート
蝦名:このレポートの読みやすさを見て、社内報のような感じを受けたのですが?
小川様:そうですね。基本的にスタートは社内報ですね。もともと紙媒体の社内コミュニケーションツールはなかったので、社内報からサステナビリティレポートを始めようということにしました。
蝦名:このレポートは、どのような場面で使われていますか?
小川様:社員全員とその家族、協力会社100社以上への配布ですね。あとは、私の部署は総務部門さんがお客さんなので、営業にも使っています。社員も読んでくれていると思います。特に家族は喜んでくれていると思います。
蝦名:レポートによって活動が浸透してきたなという感じはありますか?
小川様:ありますね。当社は建設業で工事をする会社なので、元々「安全第一」の考え方です。それに加えて、コスモスモアは環境を大事にしているのだということは浸透してきました。ただ、現場レベルでの廃棄物の分別等が大手他社と比べて進んでいるか等、本業への反映はまだまだこれからです。
建設業において、環境対策は重要だと思います。例えば、モデルルーム事業でも1年借りて建てて、またすぐ壊すということになる。環境への負荷は高いのに意識は遅れていると感じていました。だから、環境について力を入れないといけないと考え、環境に焦点を定めました。
コンセプトは「楽しく続けられる」こと
蝦名:社員の方がたくさん出ていらっしゃるのも特徴的で、見ていて楽しそうな雰囲気が伝わってきます。コンセプトもやはり「楽しく」というのはあるのでしょうか?
永様:そうですね、実際に楽しいですしね。それに、若い社員中心に作ってくれるとその感覚が非常にいいですよね、アイデアも斬新ですし。社員が自らの環境活動を宣言するのにも、こういった取材を兼ねて自らの襟を正す機会があったほうが意識啓発になると考えたからです。
女性は出産をきっかけに環境や安全安心に意識がいきますが、すべての社員がそうとは限らないので、機会の1つになってくれればと思っています。
蝦名:貴社は若い社員の方が多いので、あまりCSRや環境への取り組みに抵抗はなかったのではないですか?
小川様:確かにそこまで難しさを感じませんでしたが、やはり部署によって温度差はあります。それはやはり、トップがCSRの価値を理解できないと各社の取り組みが進まないのと同じで、部長や課長といった部門長の人間の考え方で多少左右されます。
事業とCSRを意識的に結びつけたい
蝦名:2011年4月にCSR推進室を作られたとのことですが、どのような背景があったのでしょうか?
小川様:いままでは組織ありきでなく、活動ありきでやってきましたが、新たにレベルアップを目標にしてやりたいと思って設立されました。従業員のレベルアップもそうですし、事業とCSRをもっと意識的に結び付けていきたいと考えての設立です。中長期的に計画を立てて進めていきたいと考えています。
2008年、2009年はレポートも作り始めということで、インパクトがあったのですが、2010年、2011年と安定した反面、新しいものを生み出すと言う点では、辛口に言うと少し物足りないという感じがありましたので、もう一度てこ入れしようということです。
蝦名:読み手に特に注目してほしいところなどはありますか?
小川様:1つは、年々省エネが進んでいる事実、2つ目は少しずつ事業とCSRが一体化してきているところ、3つ目は、社員が楽しみながら活動をしているところですね。
蝦名:来年度のレポートも楽しみにしております。
(→ 第2回につづく)
(聞き手)プロフィール
蝦名 裕一郎 (えびな ゆういちろう)
アミタ株式会社
マーケティング事業部 マーケティングチーム
アミタ株式会社に入社後、人事部門、コンサルティング部門を経て、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。
ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイト「CSR JAPAN」の運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。
■ブログ: CSRが当たり前になる世の中に
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