インタビュー
株式会社丹青社 経営企画統括部 山岡 礼 様 本業と結びついた社会貢献活動とは? (2/2)
ISO26000の発効で、「地域コミュニティ参画および開発」や「人権」に対しての社会的責任が明確になり、より一層企業の活動に注目が寄せられています。
そうした中、社会貢献活動に対して、社内を巻き込んだ活動がなかなか難しい、経営に結びつけるにはどうしたら良いかというお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。
今回はノーマライゼーション 、ダイバーシティの考え方に立って運営される「ユニバーサルキャンプin八丈島」を7年にわたり共催され、また本業に結びつけた活動をされている丹青社山岡様にお話をうかがいました。
(← 第1回の記事はこちら)
いかにして社員を巻き込んだか?
―― 熱意があるほど、得られる気づきがある
(聞き手)蝦名:こういった社会貢献活動をなさっている企業様は多いですが、活動しているのは同じ人ばかり、または募集しても同じ人ばかりが応募するという声をよくうかがいます。公募を始めたきっかけとその時の状況をお聞かせください。
山岡様:活動自体、あるきっかけやご縁で始まった取り組みでしたし、最初は公募もしていませんでした。あくまで一部門の活動で、目的や活動内容は全社共有されていませんでした。部門長に指名されて参加した社員にとっては、業務との調整や両立は厳しかったかもしれません。しかし、実際に体験してきた社員から「ユニバーサルデザインへの関心が高まり、深い理解が得られた」「本業のなかでのコミュニケーションについて考えさせられた」「もっと多くの社員に体験して欲しい」といった声が少しずつ広がりました。
ダイバーシティコミュニケーション研修の様子私自身も第3回目に、指名を受けて参加し、最初は何がなんだかわからず行きました(笑)。しかし、実際行ってみて、通常業務では得られない刺激を受けました。きっかけを作ってくれた経営トップは、これからはユニバーサルデザインの視点がないとお客様や社会とともに成長することはできない、という思いがあったのだと思います。 その後、会社としての取り組みに位置づけしなおし、お客様や社会からの期待に応えていこうということになりました。ただ、せっかく参加するなら、熱意がある人ほど、多くの気づきを得ることができ、価値が高まります。そこで、これまで参加経験のない社員のなかから、自ら応募する熱意ある人材が参加するようにしよう、ということになったのです。
蝦名:いつ頃から社内に浸透してきたのでしょうか?
山岡様:転機になったのは第5回目の活動からです。その年から、一部門の活動でなくなり、事務局業務も経営企画部門に移管し、全社への参加者公募も始まりました。
蝦名:公募第1回目からすんなりと集まったのでしょうか?
山岡様:集まりました。最初は応募者などいないのではないかと心配しました。ところが、思わぬ部門、思わぬ人からの応募がありました。会社として取り組む意思と意味づけを伝える努力を始めたところだったので、感度が高い社員は理解したもしくは理解しようとしてくれたのだと思います。
蝦名:社内での理解が広まっているとのことですが、参加の部門に偏りはないのでしょうか?
山岡様:実際、ユニバーサルデザインに業務上深く関わっている部門や担当者ほど積極的な参加意欲を示してくれます。例えば子どもやお年寄りにもわかりやすく情報を伝える必要がある博物館や、外国人でも利用しやすいホスピタリティが必要な空港や駅、商業施設づくりを担当する部門のデザイナーなどです。
最終的にはすべての社員に体験してもらいたいですが、毎年参加できる数も限られていますし、できるだけ本業に活かそうという熱意のある社員に、能動的に参加してもらいたいので、強制はしていません。
蝦名:そうですね。やはり自分の業務に役立つかどうか、業務内容によって人それぞれでしょうし、単純に参加者数が多ければ良いというものではないですからね。まずは、参加に意欲的な人から巻き込むということですね。
毎年の活動の目標や効果測定はなさっていますか?
山岡様:参加者からはアンケートで改善点を提案してもらったり、振り返りミーティングに参加してもらったりして、良かった点、悪かった点を洗い出し、次年度の活動計画をたてます。
事後研修で振り返り(第6回ユニバーサルキャンプin八丈島報告書より)
蝦名:貴社事業におけるユニバーサルキャンプの今後の抱負をお教えいただけますか?
山岡様:当社の特徴的なユニバーサルデザインの捉え方に、ハードのユニバーサルデザイン(=空間的、物理的な配慮)、ソフトのユニバーサルデザイン(=効果的に、快適に目的を達成するための配慮)、そしてこころのユニバーサルデザイン(=おもてなしの心での心理的、感情的な配慮)の3つがあります。
現実の空間づくりには、効率とユニバーサルデザインのバランス、エンドユーザーの心地よさと運営スタッフの使い勝手のジレンマなど、難しい問題があります。その課題を解決し、こころを動かす空間をつくりあげるために、キャンプという機会を通じて、皆さんと一緒に考え続けたいと思っています。
蝦名:今後とも貴社の活動が継続され、大きなうねりとなっていくことを願っております。本日は貴重なお話ありがとうございます。
プロフィール
山岡 礼 (やまおか れい) 氏
株式会社丹青社
経営企画統括部 経営企画室 企画広報課 課長
入社後、商業空間やコミュニケーション空間を担当する複数の営業部門を経た後に、経営企画部門へ。 今年度から広報部門で、丹青社の社名の由来のとおり、「情熱」(丹=赤)と「英知」(青)をもって、丹精込めて伝えようと奮闘中。子育てしながらMBAを取得し、これまでの経験や得たものを仕事に活かしたいと取り組んでいる。
(聞き手)プロフィール
蝦名 裕一郎 (えびな ゆういちろう)
アミタ株式会社
マーケティング事業部 マーケティングチーム
アミタ株式会社に入社後、人事部門、コンサルティング部門を経て、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。
ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイト「CSR JAPAN」の運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。
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