多くの人に読まれるCSRレポートとは?― CSR担当者の本音トーク(2/4) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

株式会社大和総研 環境・CSR調査部長 河口 真理子 様多くの人に読まれるCSRレポートとは?
― CSR担当者の本音トーク(2/4)

今回、国内でも先進的にSRIに取り組まれている企業の大和証券グループのCSR報告書制作のご担当者様に、CSRレポートの現状やSRIについて、お話を伺いました。

CSR報告書制作にも関わられ、NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長等を務めながら、専門家として環境経営・CSR・社会的責任投資に携われている、

大和総研の河口 真理子様に、CSR報告書の作り手としてのご意見と、専門家としての見解等を本音で語っていただきました。
(← 第1回の記事はこちら

「誰が・何に・どう使うか」を選択して投資する時代

蝦名:SRIの概念を説明している図なども非常に分かりやすいですね。

河口様:「SRIを知らない方が分かりやすいように」というところは特に苦労して作った点です。
「マイクロファイナンスって本当に良いことをしているの」とか、「証券会社・株式=儲かる・損する、のどちらか」という、イメージを持っている方も多くいらっしゃるかもしれません。

本当に大事なのは、「投資する」ということには単なる自分の資産運用だけでなく社会にさまざまな影響を与えるということがあり、それを理解した上で、どれぐらいリスクを取りながらも投資するのか、といった投資哲学のようなものを伝えるべきだと思っています。それでなければ、金融や投資はただのマネーゲーム・ギャンブルと思われてしまう。

証券業界全体に言えることですが、証券会社は「株の投資のやり方」など「しくみ」についてはキチンと教えてくれるのですが、ではそもそも「なぜ投資するのか?」「お金はなぜ貯金するの?」といったようなことは、あまり発信されていません。その投資する前の段階の金融哲学について、他社がやっていないのであれば、その金融や投資本来の意義や社会的責任をきちんと説明することが弊社の社会的責任と考えています。

時々、「お金には色がない」といわれることがありますが、「どこに、どんな意思で投資するか」といったことが分かれば、色々な選択肢ができるわけですから、「色・意思」はあるんですね。

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「震災後、利他の気持ちでお金を出す人が増えた」

蝦名:3.11の震災を機に日本人のお金の使い方の意識も変わってきていると思います。寄付や義捐金はもちろんですが、被災地の商品を買って応援しようという動きは、なかなか今まで大きな動きとして見られなかったと思います。

河口様:そうですね。先日の震災で、多くの人が寄付や義捐金にお金をだし、今までとは少しお金の使い方・付き合い方などが変わってきているように思います。自分のためではなく、人のためにお金を出したいという利他の気持ちでお金を出す人が増えたというのは良いことです。ただ、ここでお伝えしたいのは、「寄付」と「投資」との違いです。「寄付」というのは一方通行の仕組みで、寄付金を出して、受け取る側は受け取ってお終いです。出す側は、お金を出した瞬間『良いことをした』で終わりになる。でも、そのお金がどのように使われるか、タイムラグもあるし、使われ方もさまざまです。

蝦名:確かに、寄付を集める中間支援団体がかなり意識的に配慮しなければ、寄付は送って終わりになる可能性がありますね。寄付した側の関心も支払った瞬間が一番高い。その点、投資については、最終的な事業結果がリターンに影響を及ぼすため、関心が継続しますね。

河口様:例えば、被災された地域や企業の方々にお話を伺うと、寄付もありがたいが、今は経済的に自立しビジネスをしていくための資金として、投資や出資がありがたい、そういう考えが強くなってきています。そういった社会性と同時にリターンも期待するお金が増えていかなければ、本当の復興には繋がらないのではと思います。

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蝦名:弊社(アミタ)も仙台に拠点を構え現地に入っているのですが、現地からは支援で無く仕事がほしいという要望が高いようです。支援という与える側、受ける側という構図は長期的視点に立つと被災された方にとってもストレスになるので、あくまで自立する手段が必要ということですね。

河口様:そうした意味でも、SRIというものは、これから伸びていく、伸ばしていかなければならないのではないかと思っています。

蝦名:では、個人の方はCSRレポートのどのような点をみて、企業の社会性・環境性を判断したらよいですか?

河口様:まずは、自分が好きなこととか、愛用しているものを製造している企業のCSRレポートを見てみるのが良いと思います。こういう素材をこんな意図で使っているのか、社長はこんなことを考えているのか、と関心がある物事に関するCSR活動を見ていくというのが、まず興味を持つきっかけとしてよいのではと思います。全く知らない会社のものを見ても中々興味を持ちにくいと思いますから。

また、経営トップの考え方は、トップその人が語っていても、担当者が代筆していても、読み手に伝わるものです。難しい知識やCSRについての理解がなくても、それは伝わるものです。

社員も重要なステークホルダー

蝦名:ちなみに表紙デザインについては何か背景や狙いがあるのですか?

河口様:当社の場合最初は大変でした。モノ作りの会社ならそれをイメージしたものを使うこともありますが、証券会社は「物」を作ってはいないので、「人」との信頼のポイントだと考えました。そこで、グループ社員の「赤ちゃん」の写真を使ってみようということになりました。赤ちゃんの写真を嫌う人はいませんし。

また、CSRや持続可能性というのは次世代にむけた活動です。健全な社会を次世代に渡すために、というメッセージをこめて赤ちゃんにしました。社員にとってみても、自分のお子さんが表紙に載っていたら、でき上がった報告書を大事にして、とりあえず読むでしょう?職場とか身内とか周りにも見せますよね。そういった意味でも、社員やその家族に興味を持ってもらえると思って、こういう表紙にしました。社員も重要なステークホルダーですから。

最初は知名度が低かったので社内報に寄せられた赤ちゃん紹介の写真を使ったり、最近お子さんが生まれた方にお願いして、写真をいただいたりしていましたが、認知が広がり、自然とたくさん集まるようになりました。「うちの上司の子を中央に載せて」みたいな声もときどきあり、困っているくらいですから(笑)

(第3回に続く)

関連情報
プロフィール
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河口 真理子 (かわぐち まりこ)
株式会社大和総研
環境・CSR調査部長

1986年一橋大学大学院修士課程修了(環境経済)、同年大和証券入社。94年より、大和総研にて企業調査を経て、98年より、環境経営、CSR/SRIの調査研究に従事、2010年4月から1年3ヵ月、大和証券グループ本社にてCSR担当部長を経て、現在、大和総研 環境・CSR調査部長。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。

NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長。サステナビリテイ日本フォーラム評議委員、環境省・環境ビジネスウィメンの会メンバー、東京都環境審議会委員など。

(聞き手)プロフィール
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蝦名 裕一郎 (えびな ゆういちろう)
アミタ株式会社
マーケティング事業部 マーケティングチーム

アミタ株式会社に入社後、人事部門、コンサルティング部門を経て、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。

ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイト「CSR JAPAN」の運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。
■ブログ: CSRが当たり前になる世の中に

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