インタビュー
株式会社翔泳社 出版事業部 編集部 小澤 様出版社として環境問題に取り組めることって?
色々な企業が環境問題に対峙していると思いますが、出版社で実施している取り組み例をご紹介します。
本に使われている資源は紙だけではありません
出版社は、紙を使って「本」を作り、商品として販売します。本を作るためには非常に膨大な量の紙を使用するのですが、他にも印象に残る本を作ろうと凝った設計・造本にすればするほど、環境に負荷を与える様々な原油系科学物質を使うことになります。
インキや加工(光らせたり、おうとつをつけたり)に使う材質も、何千冊、何万冊という量になればかなりの量になります。 一般には、本棚に長く残ってずっと愛され続ける書籍はほんのわずか。ほとんどの書籍は読み終えたり役目を終えると、何らかの形で廃棄されてしまいます。書籍というのは資源を使う割には他の製品に比べても寿命が短い商品ではないでしょうか。
本作りの現場では「環境問題」が意識されづらい
実際に大量の紙や化学物質を日常的に扱うのは、製紙会社や印刷所、製本所です。(出版社にいる)本の制作現場の人間は、あまり「資源」を意識していないのが実情です。
編集者は、自社の倉庫に膨大に積み上げられた本の山を見ることもあまりないですし、自分が担当した、売れなかった大量の在庫本が廃棄されるところを見る機会もほとんどありません。企画当初から見本が出来て数十冊の書籍が手元までやってくるまで、書籍は常に「資源」ではなく「商品」という対象でしかありません。
また、売れる本を作ろう目立つ本を作ろうと、ついつい凝った造本にしてしまいがちです。このため、現場ではどうにも環境問題を意識しづらい状況にあります。
出版社として環境問題に取り組めることって?
そうした中、弊社では出版社として少しでも環境問題に取り組めないかと、ある社員が一念発起し、行動に移し始めました。その社員の小さな活動は結果的に弊社の商品設計のあり方に大きな影響を与えることになります。
現在、弊社では独自の基準を設け、表現方法とコスト・環境配慮のバランスを重視しています。名づけて「eco Project」! これは独自の実験・調査から下表の6項目の基準を設定し、このうち4項目以上を満たした本のカバーに「エコロジー製品」として、シンボルマークを刷り込むという取り組みです。
資材 | 基準 | 期待される効果 | |
---|---|---|---|
1 | 装丁用紙 | 無塩素漂白パルプ(※1)使用紙 あるいは 再生循環資源を利用した紙 |
有毒な有機塩素化合物発生の軽減 資源の再生循環促進 |
2 | 本文用紙 | 材料の一部に無塩素漂白パルプ あるいは 古紙を利用 |
有毒な有機塩素化合物発生の軽減 ごみ減量・資源の有効活用 |
3 | 製版 | フィルムを使わない製版方法 | 枯渇資源(原油)の保護、産業廃棄物排出量の減少 |
4 | 印刷インキ(※2) | 植物油を含んだインキ | 枯渇資源(原油)の保護、生産可能な農業資源の有効利用 |
5 | 製本メルト | リサイクルを考慮した接着剤 | 紙資源リサイクル時の負荷軽減 |
6 | 装丁加工 | 植物樹脂製フィルムを使用した加工 あるいは フィルム無使用加工 |
枯渇資源(原油)の保護、生産可能な農業資源の有効利用 |
※1 無塩素漂白パルプ...塩素(Cl2)を用いずに漂白したパルプ。
副生成物としてダイオキシンに代表される有機塩素化合物が発生しない。
※2 パール、メタリック、蛍光インキを除く。たとえば紙は再生を意識したものを使っているか、インキは植物油を使っているかなど、環境に配慮した資材を使っているかどうかがポイントとなります。
こうしたプロジェクトによって、最初は面倒に思っていた現場担当者たちも、今では一人ひとりが環境問題にも意識を持って、日々の業務に取り組むようになりました。 環境問題は当事者意識を持ってもらうことが、とても重要です。 ご紹介した取り組みは一例ですが、皆様も会社でもこうした内容などを参考に、環境問題への取り組みを考えてみてはいかがでしょうか。
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環境問題に独自の方法で取り組んでいる翔泳社では、2010年10月にeco検定の対策書『環境社会教科書 eco検定 一発合格テキスト』を刊行しました。もちろん、「eco Project対応」商品です。関連情報
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