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PFASとは?国内外の規制についても解説

PFASとは、有機フッ素化合物の総称であり、その一種であるPFOSPFOAは、生活用品や工業用品に多く使われていました。近年その有害性から製造等が禁止されており、欧州をはじめとし、他の有機フッ素化合物にも規制が広がる可能性があります。今回はPFOSPFOAの概要から国内外の規制、企業がすべき対応までお伝えします。

目次

PFASとは?

環境省によると有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、10,000種類以上の物質があるとされています。PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)はそのPFASの一種です。
これらは化学的に安定性が高く、撥水性・撥油性という特有の性質を持つことから、2000年代初期まで、半導体用反射防止剤や金属メッキ処理剤、フッ素ポリマー加工助剤や界面活性剤等、多様な用途で使われていました。しかし2009年以降、国内外で環境中での残留性や健康被害が懸念され現在では、国際的に製造・輸入が禁止されています。

▼PFASの分類について

pfas_category.jpg

出典:環境省

PFASの健康・環境への影響

PFASのなかでも、PFOS・PFOAは水に溶けやすくまた気化しづらいため、河川などの環境中に放出された場合、長く残留し、食物連鎖等を通じて人体に取り込まれる可能性があります。PFOSは2009年の「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)」の第4回締約国会議にて、PFOAは2019年の第9回締約国会議にて、それぞれ制限・廃絶の対象となりました。

環境省によると、PFOSとPFOAが人体に与える影響として、コレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が発表されています。しかし、どの程度の量によって影響を及ぼすかについては確定されておらず、現在も国際的に研究が続けられています。

PFASの世界での規制動向

POPs 条約を批准している、日本やEUを含む約180か国の国と地域では、現在PFOSは「製造・使用を制限」、またPFOAは「製造・使用を禁止」しています。
加えて、各国は飲料水におけるPFASの含有量に基準値を設けており、イギリスでは1リットルあたり100ナノグラム以下とされており、ドイツでは2023年の飲料水令に基づきPFAS20種類の合計として100ナノグラム、PFAS4種の合計として20ナノグラムが採択されました。前者は2026年から、後者は2028年から施行されます。

アメリカでは、2024年4月にPFOS・PFOAの第一種飲料水規則が最終決定され、1リットルあたり4ナノグラム以下の目標値を定めています。後述のとおり、日本の暫定的な目標値は1リットル当たりPFOSとPFOAを合わせて50ナノグラムとなっており、これを下回る厳しいものとなっています。また、WHOも2022年9月に飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書「飲料水中のPFOSおよびPFOA」のパブリックレビュー版を公表し、1リットルあたり100ナノグラム以下という目標値を提案する等、今後、各国でより厳格な制限を設ける動きが見られると予想されます。

また、PFOS・PFOAに加えて、これらと同様の性質を持ち代替品として使用されてきたPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も、2022年にPOPs条約にて廃絶対象となり、これを受け日本国内でも2023年に化審法の第一種特定化学物質に指定されました。下記の表に、PFAS(PFOS・PFAS・PFHxSなど)の規制状況をまとめました。

▼PFASの規制状況 ※2023年11月時点

国または地域 項目
(ナノグラム/リットル)
日本 PFOS・PFOAの合計 50
PFHxS
WHO PFOS 100
PFOA 100
PFAS 500
アメリカ PFOS 4
PFOA 4
PFNA 1.0
イギリス あらゆるFPAS 100
ドイツ PFAS20種の合計 100(2026年より適用)
PFAS4種の合計 20(2028年より適用)

水道における PFAS の処理技術等に関する資料集
(公益財団法人水道技術研究センター)
をもとにアミタ作成

さらに欧州では、上述のPOPs条約の制限や飲料水の含有量目標と合わせて、より厳しい規制強化・戦略が動き出しています。

2023年にデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5つの当局は、欧州化学品庁(ECHA)に対して約10,000種類ものPFASを規制対象とした規制案を提出しました。この案は2025年に発行される予定で、18カ月間の移行期間の後、企業は製造・発売・使用(輸入を含む)が制限されます。幅広い種類のPFASが規制されることにより、そのサプライチェーンにも影響があるでしょう。

アメリカでも、アメリカ環境保護庁(USEPA)が2021年に3年間のPFAS戦略ロードマップを提示し、公衆衛生の保護、環境の保護、汚染者の責任追及のための新たな施策方針を打ち出しました。アメリカの多国籍企業3M(スリーエム)はこれらの諸国の規制強化や戦略に伴い、2025年末までにPFASの製造から完全撤退し、製品ポートフォリオ全体で使用の中止に取り組むことを発表しました。このような動きは、今後、国内にも影響を与えると考えられ、日本の関連業界にも対応が迫られると予想されます。

PFOSPFOAの日本での規制動向

日本おいてもPFOSの製造・使用は、POPs条約ですでに制限されていますが、2009年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令(以下、化審法の施行令」が改正され、本法律の第一種特定化学物質に特定、不可欠用途以外での製造・使用は原則禁止となりました。この法律ができたことにより、2017年では例外的に認められていた用途も含め日本におけるPFOSは全ての用途で禁止されました。
また、PFOAにおいても2021年に改正化審法施行令が公布され、PFOS同様に禁止となりました。

日本でも、厚生労働省がPFOS・PFOA を水質管理目標設定項目に位置付け、水道水中のPFOSとPFOAの合算値で1リットルあたり50ナノグラム 以下とする暫定目標値を定めています。水道事業者がこの目標値を超過した場合、濃度低減化措置が講じられるようにしています。
また、環境省も厚生労働省の暫定目標値と同様に、公共用水域や地下水におけるPFOS・PFOA濃度を合算値で1リットルあたり50ナノグラム以下とする暫定目標値を定めています。

しかしながら最近、一部の地域の河川等にて暫定目標値を超える濃度のPFOS・PFOAが検出され、追加調査の実施や調査区域の拡大が検討されるなど、注目が集まりました。
このような事態を受け、2024年5月には環境省と国土交通省が都道府県や水道事業業者に対して、2024年9月30日までに水質検査結果を報告するよう求めた、という出来事もありました。

日本国内で進む、PFASの代替製品・関連製品開発

PFASは特に半導体や電気自動車の部品の物質に使われており、同業界では代替製品の開発が急務となっています。2023年DICは半導体業界で使われる界面活性剤の代替として、従来と同等の表面活性効果を持つPFASフリーの製品を開発し、2024年東レはPFASを使用しない半導体用フィルムを実用化しました。

また、代替製品の開発、実用化だけでなく、分析や除去のニーズが拡大することも見込まれており、それに応じた商品の開発・販売に動き出す企業も増えています。日東精工は、欧州のPFAS規制によるPFASの分析需要に応じ、2024年におけるPFAS類のスクリーニング分析機器の売上が好調となりました。また、2024年5月、株式会社クレハはアメリカのグループ会社であるKureha America Inc.を通じ、同国スタートアップ企業であるClaros Technologies Inc.と低分子 PFAS 無害化技術プラットフォームを活用したサービスの提供に向けた、技術・ビジネス開発での戦略的パートナーシップを締結しています。

PFASに対して、日本企業がすべきことは?

このように規制や廃止が進むPFASに対して、日本企業は何をすればよいのでしょうか。それにはまず、日本国内外の規制の現状を正確に把握することです。化審法だけでなく、欧州の規制強化や多国籍企業の方針もモニタリングし、自社の製品にPFASが使用されているか確認しましょう。自社製品にこれらが含まれていた場合、代替となる化学物質の調査やPFASの無害化処理の導入等を検討する必要があります。また、サプライチェーンにおいてもPFASが使用されていないかを確認し、使用されていた場合、サプライヤーに対して代替物質の切り替えを依頼するなど、適宜コミュニティケーションをとり全体でPFASに対して向き合いましょう。

また、重要なのはPFASを含む製品や副産物の廃棄です。これらの物質は分解しにくく環境中に蓄積されやすい特性があるため、製造工程や使用済み製品の廃棄においても厳格な管理が求められています。廃棄の際は、環境省が2022年9月に公開した含有廃棄物の適切な処分方法のガイドライン「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を必ず確認しましょう。いくつか知っておくべき要件を紹介します。

  • 保管方法
    「PFOS・PFOAの含有廃棄物の保管場所である旨を表示する」等の要件を満たす掲示板の設置や、含有廃棄物が飛散・流出、地下に浸水、悪臭が発散しないように適切な措置を講ずることなどが要件として挙げられています。

    ▼掲示板の例(PFOS含有廃棄物の例) hokanbasho.jpg出典:環境省

  • 収集運搬
    収集、運搬にあたり、PFOS・PFOAの含有廃棄物が飛散・流失しないようにすることや、悪臭・騒音・振動によって生活環境の保全上支障が生じないようにすること等が挙げられています。

  • 処分方法
    PFOS・PFOAが確実に分解される方法で実施しなければなりません。事前に分解処理施設にて確認試験を行い、分解効率が99.999%以上であることや管理目標値を達成していることが求められます。PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項では、現時点では、PFOS含有廃棄物は約850度・PFOA含有廃棄物は約1,000度以上の焼却処理がされており、上述の分解効率や管理目標値の要件を満たすことが確認できれば焼却処理以外の分解処理を排除するものでないと記載されています。
最後に

2025年に発行が予定される欧州規制等、国内外で現在法規制されている以外のPFOAも規制対象の拡大余地があり、企業はその動向をウォッチし続ける必要があります。また、規制ニーズに応える商品開発が進んでいるように、PFAS規制をマイナスとして認識するのではなく、環境に貢献できるチャンスとして取り組むと、自社のビジネスの持続性を高めることに繋がるでしょう。

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執筆者(執筆時点)

田中 千智(たなか ちさと)

アミタ株式会社

社会デザイングループ

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