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第五次循環型社会形成推進基本計画の背景・ポイントをわかりやすく解説
2024年8月、循環基本法の五回目の改訂「第五次循環型社会形成推進基本計画(以下、第五次循環基本計画)」が閣議決定されました。
「循環経済を国家戦略に」と銘打たれた今回の改訂にある背景とポイントについてわかりやすく解説します。
目次 |
第五次循環基本計画改定の背景・ポイント ~日本が目指す循環経済とは~
まずは今回の基本計画について、その背景とポイントを押さえましょう。
循環基本計画は、おおむね5年ごとに環境基本計画をもとに策定されますが、今回は2018年から6年ぶりの改訂です。
環境省から発表されている「第五次循環基本計画概要」によると、まず、資源の枯渇や廃棄物の増加を防ぐために、大量生産・大量消費・大量廃棄型のいわゆるリニアエコノミーから、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を推進する必要があるとしています。
この背景には、前回の改訂からの間にプラ新法が制定されたこと、エネルギー価格の高騰、さらにEUの再生材利用義務化の加速などによる、将来的な資源確保の観点があるといえるでしょう。
5月に成立した「再資源化事業等高度化法」からもわかるよう、廃棄物を含む資源の効率的な利用と再利用の推進が目的にあると考えられます。
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次に基本計画では、循環経済の推進が「社会課題の解決」に直結することを強調しています。第四次循環基本計画でも環境問題への取り組みは重視されていましたが、今回は産業競争力の強化や経済安全保障、地方創生など「質の高い暮らしの実現」といった幅広い社会的・経済的課題の解決と連携している点が新たな特徴です。
さらに基本計画では、質の高い生活=ウェルビーイングの実現が「新たな成長の実現」につながる、成長戦略の一環になる、と強調されており、従来の廃棄物・リサイクルや環境保全の枠組みを超えて、循環型社会形成の推進が社会全体の幸福や生活の質を高めることにまで言及している点がこれまでからの進化といえるでしょう。
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第五次循環計画の構成 ~5つの重点分野について~
今回の基本計画は、前回の作りと基本的には変わっておらず「循環型社会の全体像に関する指標」と「5つの主要分野」、さらにその主要分野ごとの達成状況がわかるよう「取組の進展に関する指標」に分けた構成となっています。
▼第五次循環型社会形成推進基本計画について
出典:環境省 第五次循環型社会形成推進基本計画について
それぞれの重点分野ごとに「(その分野が抱えている)課題・背景」「(課題を改善、解決する)中長期的な方向性」「(その分野の)目指す将来像」が示されており、あわせてその分野に「国がどのような取組をするのか」、分野ごとの「(達成したい)指標」が記載されています。一部、抜粋してご紹介します。
主要分野 | 持続可能な地域と社会づくり | ライフサイクル全体での徹底的な資源循環 | 循環システムの構築と地方創生の実現 | 着実な適正処理・環境再生の実行 | 国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開 |
課題・背景 |
循環経済への移行を加速し、資源の安定供給にもつなげていくことが必要 | 近年の循環利用率は横ばいであり、経済成長率は鈍化 | 地域においてもネット・ゼロ、ネイチャーポジティブと循環経済の統合的取組を進めることが重要 | 「資源生産性」を向上させるためのDXの推進 | 国際的なルール形成をリードし国際的な資源循環を進める |
将来像 | 循環経済への移行により循環型社会が形成され、持続可能な社会が実現 | 多様な手段を組み合わせたライフサイクル全体の最適化 | 循環資源が各地域・各資源に応じた最適な規模で循環 | 新たな技術開発、企業による情報開示等の仕組みが整えられ、ESG投資が拡大 | 環境上適正な国際的な資源循環体制の構築 |
方向性 | 各地域に特徴的な循環資源・再生可能資源を循環させる取組の創出・自立・拡大 | 再生材の利用拡大と安定供給等などを通じて資源循環市場の創出を支援 | 循環資源を各地域・各資源に応じた最適な規模で循環させる取組を推進 | デジタル技術・ロボティクス等の最新技術の徹底活用 | CEREP等の民間企業での活用を促進することで、バリューチェーン全体での循環性を向上 |
国の取組 | 循環経済ビジネスへのESG金融を促進 | 循環経済関連ビジネスの市場規模を2050年までに120兆円に拡大 | 地域循環共生圏を始めとする地域循環システムの構築、中核的人材の育成 | SIP等を通じた技術開発と、情報流通基盤の整備 | G7、G20、OECD、UNEA等での国際的な資源循環政策形成をリード |
指標 | カーボンフットプリントを除いたエコロジカルフットプリント | 入口側の循環利用率から最終処分量まで、全ての資源循環状況把握 | 地域特性を活かした廃棄物の排出抑制・循環利用の状況把握 | 産業廃棄物委託処理量に対する電子マニフェストの捕捉率 75%達成 | 特定有害廃棄物等の輸出入量規制 |
詳しくご覧になりたい方は環境省の第五次計画を確認してみてください。
関連情報:環境省 重点分野ごと取り組み P10~
まとめ ~循環型社会の形成は各主体が連携・協力すること~
この基本計画は、"各主体の連携"という言葉でまとめられています。
循環型社会を作るためには、国や地方公共団体、事業者、NPO・NGO、学術研究機関、そして国民一人ひとりがそれぞれの知識やアイデアを出しあい、互いに連携して取り組むことが重要としています。この基本計画は環境的、経済的、社会的側面すべてを包括し、より良くさせるための戦略です。私たち一人ひとりがこの取り組みに参加し、持続可能な社会の実現を目指すことが求められています。
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大重 宏隆
アミタ株式会社
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