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社会的インパクト評価 ~その目的、実践方法、事例を解説~

昨今、投資や社会課題の解決の場などで「社会的インパクト評価」という言葉を耳にします。社会的インパクト評価(Social Impact Assessment)とは、プロジェクトやプログラムが社会に与える影響を定量的、定性的に把握しその価値を判断することを指します。企業、団体、機関などが行う活動が、地域社会や特定のグループにどのような影響を及ぼすかを理解するために近年注目されつつある考え方です。本記事で社会的インパクト評価の大枠を押さえましょう。

社会的インパクト評価の目的

まずは社会的インパクト評価の目的についてです。
内閣府社会的インパクト評価検討WGによると社会的インパクト評価を行う目的は主に2点あるとしています。

1つ目は「ステークホルダーへの説明責任を果たす」ことです。
外部のステークホルダーに社会的インパクトに関する戦略と結果を開示することでコミュニケーションの円滑化をはかることができます。

2つ目は「プロジェクトやプログラムの学び・改善に活用する」ことです。
組織内で社会的インパクトに関する戦略と結果を共有し、事業や組織の理解を深めることで、意思決定の判断材料が提供され、組織の在り方の改善、成長につながります。

社会にとって「良いこと」というのは、その時や場所、価値観や文化の違いによって様々ですが、これらの目的を達成することで、組織の成長や新たな資源の獲得が可能となり、社会課題の解決がより促進されると考えられます。

社会的インパクト評価の実践

ここからは、社会的インパクト評価を実際に進めていくプロセスを解説します。
一般的に社会的インパクト評価のステップは、実践に向けた「準備(計画)」から、プロジェクトの改善につなげる「報告」の7段階のステップに分けて構成されます。 ステップごとに見ていきましょう。

▼評価のステップ

SIA_step.png

出典:GSG国内諮問委員会 社会的インパクト評価ワーキング・グループ
社会的インパクト評価ツールセット 実践マニュアル

  1. 準備(評価の目的、目標の明確化)
    社会的インパクト評価を行う前に、評価の目的と目標を明確に定義することは重要です。
    評価の目的は、プロジェクトの社会的影響を理解し、改善点を特定することですが、評価から何を学び、どうプロジェクトやプログラムの改善に役立てるのか、また誰にどのような説明責任を果たしたいのかを明確にしておきましょう。
    また、得られた評価を活用しどのような経営判断につなげるかを考えておくや、ステークホルダーとの協議に利用する等、あらかじめ評価の目的を決めておくとよいでしょう。

  2. ロジックモデルを作成する
    ロジックモデルは社会的インパクト評価における重要な要素です。ロジックモデルとは、事業や活動がどのように社会的インパクトを生み出すかを、因果関係に基づいて図式化したもので、プロジェクトの計画と評価を体系的に行うためのツールです。以下がロジックモデルの構成要素です。

    ●インプット: 事業や活動に投入される資源や要素
     (例: 資金、人材、物資)
    ●活動: 事業や活動で実施される具体的な行動
     (例: 研修の実施、相談窓口の開設)
    ●アウトプット: 活動によって直接的に生み出される成果
     (例: 参加者数、相談件数)
    ●アウトカム: アウトプットによって生み出される、より長期的な変化や影響
     (例: 知識・スキルの向上、生活の改善)
    ●インパクト: アウトカムによって生み出される、社会全体への影響
     (例: 社会問題の解決、地域活性化)

    ▼ロジックモデルの構造

    logicmodel.png出典:日本財団 ロジック・モデル作成ガイド

    ロジックモデルを活用することで、プロジェクトの全体像を明確にし、評価プロセスを効率的に進めることができます。
    これにより、プロジェクトの目標達成に向けた具体的なステップを踏むことができ、社会的インパクト評価の精度が向上します。

  3. アウトカムを考える
    ロジックモデルが完成したら評価するプロジェクト全体で目指す成果=アウトカムを考えましょう。
    ロジックモデルに配置したアウトカムに優先順位をつけ、評価するアウトカムを決めます。アウトカムはたくさんあるかもしれませんが、評価対象アウトカムを決める際の視点として「事業活動の結果が直結している」、また評価対象としたアウトカムは「測定可能」であるかの2点を考慮に入れて決めることが重要です。以下のポイントに注目して決めるのがよいでしょう。

    ▼評価するアウトカムを考える時のポイント

    outcum_point.png出典:GSG国内諮問委員会 社会的インパクト評価ワーキング・グループ
    社会的インパクト評価ツールセット 実践マニュアル

  4. 指標・測定方法を考える
    このステップでは、社会的インパクト評価のために適切な指標と測定方法を考えます。評価対象のアウトカムを定量的または定性的に測定するための尺度や基準を指標とするのが良いでしょう。また測定方法は評価目的やステークホルダーのニーズ、利用可能な資源に応じて選びます。定量的なデータを好むステークホルダーがいたり、定量データではプロジェクトの価値は測れないというステークホルダーがいたりするため、バランスを考慮した適切なデータ収集・分析を行いましょう。以下、就労支援事業における、アウトカム指標と測定方法の一覧を参考にしてみてください。

    ▼アウトカム指標と測定方法の一覧

    autcum_list.png出典:GSG国内諮問委員会 社会的インパクト評価ワーキング・グループ
    社会的インパクト評価ツールセット 実践マニュアル

  5. データを収集する
    指標、測定方法が決まったらアンケートやインタビューを通じて、定量評価と定性評価の両方のデータを収集します。評価対象となる受益者やステークホルダーを特定し、サンプルを適切に抽出します。プロジェクト開始前のベースラインデータを収集し、事前・事後と比較することで効果を測定しましょう。

  6. データを分析する
    収集したデータを集計します。ベースラインデータと事業実施後のデータを比較し、効果を分析しましょう。
    さらに、セグメント別にデータを集計し、インパクトの要因を分析します。データの解釈と結論の抽出では、当初のインパクト仮説に基づいて成果を評価し、プログラムの改善や報告に役立てます。データ保護と守秘義務も重要で、適切な対策を講じる必要があります。

  7. 報告する、事業改善につなげる
    評価報告書を作成し、事業改善に活かしましょう。報告書を書く際のポイントは読み手を意識することです。事業に関わる様々なステークホルダーを想定し、透明性、説明責任、検証可能性を重視して作成しましょう。あくまで報告書のデータから何を学び、どう事業改善につなげるかが目的です。

社会的インパクト評価を用いた事例

ここまで、社会的インパクト評価を用いることによって、プロジェクトやプログラムはより定量的、定性的に把握できるようになり、その価値を判断できるようになることは分かりました。では実際に社会的インパクト評価を用いた具体的な例にはどのようなものがあるのでしょうか。
いくつか事例をご紹介します。

  1. グラミン銀行(マイクロファイナンス機関)
    バングラデシュのムハマド・ユヌス氏によって創設されたグラミン銀行は、貧困層へのマイクロクレジット(小額融資)を通じて、経済的自立を支援するプロジェクトを展開しました。この活動は国際的に評価され、ノーベル平和賞を受賞しましたが、別のマイクロファイナンスがこの制度を利用し膨大な金利で貸し付けを行い、批判を浴びたケースもあります。 しかしここに社会的インパクト評価を入れる事により、この制度が掲げている社会的使命の達成度合いを測ることが可能になります。
    国際機関がイニシアチブをとり、社会的貢献を定量的に判断できるよう作られたインパクト評価の包括的なマニュアルが「USSPM(Universal Standard for Social Performance Management)」です。このUSSPMでは下記の6つの軸で社会的インパクト評価を行います。

    ① 社会的ゴールを設定し、モニタリングする
    ② 定めた社会的ゴールに対し、経営陣、管理職、従業員のコミットを確認する
    ③ 顧客のニーズと希望に合った商品、サービス、デリバリーモデルとチャネルを確認する
    ④ 顧客に対し責任をとる
    ⑤ 従業員に対し責任をとる
    ⑥ 財務と社会的なパフォーマンスを両立させる

    ▼USSPM 6つの主要な評価軸

    SPTF wheel.png
    出典:The Microfinance Centre
    Universal Standard for Social Performance Management

    このガイドラインに沿った経営、運営を各マイクロファイナンス機関が公表することで、社会的責任を果たしているかどうかが分かるようになる、ということです。


  2. MEGURU STATION®(互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション)
    アミタグループが開発・提供している、地域と企業の課題を統合解決する互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション「MEGURU STATION®」にて、アミタHDと、三井住友信託銀行が「健康寿命の延長」や「地域とのつながり感の増加」等、市民のWell-being向上といった中長期的な好影響が生まれる可能性について、社会的インパクト評価を実施しました。

    MEGURU STATION®の設置がインパクトをもたらすまでの一連の過程を、市民・自治体・企業の3つのステークホルダーの視点からロジックモデルを構築し、神戸市の資源回収ステーション2カ所で行った利用者アンケートの結果を使用し、一部アウトカムの定量評価を実施した結果、運動機会や会話機会(コミニュケーション)の増加、環境意識の向上などが短期的に表れることが示されました。

▼市民視点:ロジックモデル(一部抜粋)とアンケート結果の反映

MEGURU SIA.pngアミタ作成

関連記事:MEGURU STATION®と社会的インパクト評価

まとめ
  • 社会的インパクト評価の課題
    社会的インパクト評価には多くのメリットがありますが、いくつかの課題も存在します。

    評価の前提や手法ができるまで動かない、分かりにくいコストがかかる、そもそもロジックモデルを理解していない、社会インパクトの発想が乏しい等の現場の理解不足が挙げられます。またインパクト創出までに時間がかかるものがあった場合、その期間を支える資金が不足する等、資金提供者の理解不足もあります。

    こうした取り組みを推進するにあたり、内閣府は「社会的インパクト評価に関わる多様な主体(事業者、資金提供社、研究者、シンクタンク、行政等)が連携し、計画的かつ整合的に社会的インパクトの普及に向けた取組を推進していく必要」があると、標ぼうしています。

  • 今後、社会的インパクト評価に求められること
    前述の通り、社会にとって「良いこと」というのは多様性がありますが、社会的インパクト評価は、適切に実施されれば、プロジェクトの価値を最大化する良い手法です。社会的インパクト評価に関わる主体全体で課題を解決し、評価プロセスを継続的に改善し、社会的ウェルビーイング向上を目指していきましょう。

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執筆者情報

アミタ株式会社
社会デザイングループ 大重 宏隆(おおしげ ひろたか)

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