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Scope3(スコープ3)カテゴリ5の算定方法と企業事例、排出量削減方法を解説 !

Image by AndreasAux from Pixabay

Scope3のカテゴリ5を中心にその算定方法や、大和ハウス工業やファミリーマート等の具体的取り組み事例も紹介。またビジネス上で実際にGHG排出量を削減する方法についても解説します。

※本記事は2024年4月に執筆されたものを加筆、修正しています。

目次

そもそもScope(スコープ)とは

Scopeとは、GHGプロトコルに定められたGHG排出量の範囲を分類する区分をさしており、大きく分けて下記の3種類に分類されます。

  • Scope1:企業が直接排出する温室効果ガス
  • Scope2:企業が使用する電気や熱など、外部から購入したエネルギーの間接的な排出量
  • Scope3:企業のサプライチェーン全体で発生する排出量

それではScope3について詳しくみてみましょう。

関連記事:scope1 scope2 scope3、サプライチェーン排出量とは?

Scope3(スコープ3)とは

改めて、Scope3(スコープ3)とは、企業が直接所有や運営していない間接的な活動による温室効果ガス(GHG)排出量を評価する枠組みです。
企業のサプライチェーン全体における排出量を評価し、より広範囲の環境影響を考慮します。Scope3の計測と削減は、企業のサステナビリティ・脱炭素戦略において重要な要素となっています。

カテゴリ分類とは

Scope3のカテゴリ分類とは、異なる活動に基づいて排出量をグループ化する方法です。共通の特性を持つ活動をカテゴリにまとめ、効果的な削減策を見つけることができます。Scope3には15のカテゴリがあり、各カテゴリには該当する活動が含まれます。以下の表に、カテゴリごとの活動の例を挙げます。

▼カテゴリごとの区分と該当する排出活動例

区分 該当する排出活動(例)
上流 1 購入した製品・サービス 原材料の調達、採掘、加工など、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2 資本財 工場などの資本財の製造や資材採掘、加工など、生産設備の増設
3 燃料・エネルギー関連 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)、調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4 輸送、配送(上流) 購入物品・調達の物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5 事業から出る廃棄物 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送、処理
6 出張 従業員の出張に伴う移動
7 雇用者の通勤 従業員の通勤に伴う移動
8 リース資産(上流) 自社が賃借しているリース資産、倉庫の稼働
下流 9 輸送、配送(下流) 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10 販売した製品の加工 事業者による中間製品の加工
11 販売した製品の使用 使用者による製品の使用
12 販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
13 リース資産(下流) 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14 フランチャイズ 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1、2 に該当する活動
15 投資 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他(任意) 従業員や消費者の日常生活

出典:環境省Scope3~算定編~」を参考にアミタが作成

また、Scope3のカテゴリ分類では上流と下流の区分けも重要です。
Scope3では、お金の流れで上流と下流を考えます。

カテゴリ18が上流、カテゴリ915が下流に位置付けられており、上流の定義は「(原則として)購入した製品やサービスに関する活動」、下流の定義は「(原則として)販売した製品やサービスに関する活動」です。

カテゴリ5とは

では本記事のテーマカテゴリ5は何を指すのでしょう。カテゴリ5はScope3におけるカテゴリのうち「事業から出る廃棄物」に関連する排出量を指します。Scope3 でのカテゴリに属するため、具体的には自社以外での廃棄物の輸送や処理に伴う排出量として算定します。

カテゴリ5の算定方法

ではどのような方法で算定すればよいのでしょう。カテゴリ5の排出量を算定するためには、以下の基本的な計算式を使用します。

活動量×排出原単位


活動量は、輸送や処理などの具体的な活動量を示し、排出原単位はCO2排出量などの指標です。

▼CO2排出量の算定基本式

Scope3.png

出典:環境省Scope3~算定編~」


具体的な計算方法は、環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」などの排出原単位データベースを参考にすることが推奨されていますので、以下のデータベースを参照してみてください。

関連情報:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(排出原単位データベース)

また下記の記事では、より詳細なScope3全体の算定の進め方と、各カテゴリの実践例を紹介しています。

関連記事:Scope3(スコープ3)を解説!排出量の算定方法とは?

カテゴリ5を算定している企業事例

ここからは環境省がカテゴリ5の排出量を算定している事例として挙げている企業をご紹介します。

  • 大和ハウス工業

大和ハウス工業が発表しているカテゴリ5の事例の一つです。全体に対して、生産拠点および建設・解体現場で発生した産業廃棄物・処理に関するGHG排出量は0.8%ですが、2019年から2022年にかけ削減が進んでいます。


▼大和ハウス工業 バリューチェーンのGHG排出量(Scope1,2,3のGHG排出量)

daiwahouse sustainbility report2024.png出典:大和ハウス工業 サステナビリティレポート2023(155ページ目)


また同社は、2030年度までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を40%削減する計画を策定しており、主要サプライヤーの90%以上にCO2削減目標を設定し、省エネ活動を推進するよう働きかけています。


▼大和ハウス工業 脱炭素への挑戦-カーボンニュートラル戦略-

daiwa_house.png

出典:大和ハウス工業 webページ

  • ファミリーマート

ファミリーマートは、販売の主軸を食品が占めるため、全体に対するカテゴリ5の割合が他業種に比べ高めです。

▼ファミリーマート 2022 年度 温室効果ガスカテゴリ別排出量

famima_sustainblereport2023.png

出典:ファミリーマート サステナビリティレポート2023(104ページ)

消費期限による食品ロス抑制のため、より長持ちする商品の開発や、消費者へロスの少ない購買行動を促すなどで、カテゴリ5における排出量の削減に取り組んでいます。

▼ファミリーマート:商品による食品ロス抑制の取り組み

famima_sustainblereport2023_96.png

famima_sustainblereport2023_97.png

出典:ファミリーマート 食品ロスと廃棄物への取り組み

カテゴリ5の算定の副次的メリットとして、業種によるカテゴリ毎の排出量の偏りが把握できる点が挙げられます。これによって各企業は、より負荷が高いカテゴリの排出削減対策の強化や、優先度の設定をすることができるようになります。

カテゴリ5GHG排出量削減方法

GHG排出量の削減にあたっては「排出されるものをいかに削減するか」という考えがありますが
「いかに排出しないか」という観点も重要です。

ここでは「いかに排出しないか」に観点を置いた、カテゴリ5におけるGHG排出量を削減するための方法を解説します。

  • サプライヤーへの働きかけ
    サプライヤーとの協力を強化し、廃棄物の削減を共同で進めましょう。例えばサプライヤーに対して包装の軽量化や肉薄化、通い箱などのリユース梱包、不要になった輸送資材の回収・リサイクルなどを求めることで、廃棄物の発生を減らすことができます。

  • 調達や生産工程、在庫や廃棄基準の見直し
    原材料の調達や生産工程を最適化し、無駄な廃棄物削減を進めましょう。調達時点から、GHG排出の少ないリサイクル可能な原材料を優先的に選択することも検討してください。
    また、原材料在庫や製品在庫の廃棄も大きなロスです。在庫基準や廃棄基準の見直しにより廃棄量を削減することは、関連するGHG排出量のみならず、コスト削減にも大きく寄与する取り組みと言えます。

  • 労働環境や業務効率の改善
    自社の従業員へリテラシー教育を通じて、廃棄物の適切な廃棄・分別方法を啓蒙することは重要です。また業務プロセスの改善は、無駄な廃棄物の発生を減らすことができます。労働環境の改善や業務効率化も重要な要素であり、従業員の意識向上や効率的な作業手法の導入は、廃棄物の削減に貢献します。

以上が、カテゴリ5におけるCO2排出量削減のいくつかの方法です。

まとめ

上記で紹介した「廃棄物そのものを排出しないこと」がGHG排出量削減につながるという観点に加え、近年は、GHG排出量削減には「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の推進が非常に有効であると言われています。
従来、このような分野においては主に廃棄物自体の排出削減やリサイクル率向上に観点が置かれがちでしたが、現在では廃棄物を"資源"と捉え、可能な限り再利用やリサイクルに回すことで、限られた資源を再利用することにプラスアルファしてGHG排出量の削減にも貢献する、という取り組みが広がってきています。

関連記事:Scope3の削減に向けたサーキュラーな原材料調達戦略

企業はこれらの方法を組み合わせ、持続可能性なビジネス戦略の一環としてScope3のカテゴリ5の排出量削減に取り組みましょう。

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執筆者情報

大重 宏隆
アミタ株式会社
社会デザイングループ 

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