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COP28とは?結果と注目ポイントをわかりやすく解説!
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COP28について、結果と注目ポイントを分かりやすくお伝えします。
目次 |
COPとは
「国連気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties、以下COPと表記)」とは、国連気候変動枠組条約の加盟国が、条約に関する物事を決定するための最高意思決定機関です。条約は1992年に採択され、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目標としています。COPは1995年から毎年開催されており、地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいくために実施されています。2023年、COP28は11月30日~12月13日の期間にアラブ首長国連邦の都市・ドバイで開催されました。
これまでのCOPの結果をおさらい
COPでは気候変動に関係する様々なテーマが議論されていますが、主要な議題としては以下があげられます。
▼COPで主に議論されるテーマ
議論のテーマ | 内容 |
グローバル・ストックテイクの実施 | パリ協定で掲げた1.5℃目標に対する進捗評価をする仕組み |
緩和 | 気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らす取り組み |
適応 |
既に起きている、または将来的に起きると考えられる気候変動が原因の影響を回避・軽減させる取り組み |
気候資金 | 開発途上国が気候変動の緩和と適応の取り組みを行うために先進国に求められている資金支援 |
損失と損害 | 気候変動の影響に脆弱な立場に向けた支援 |
(出典:環境省をもとにアミタ作成)
COP27では、既に起きている気候変動による「損失と損害」に関して、気候変動の影響に脆弱な途上国に向けての基金設立に合意がされました。しかしこの基金については、今後どの国がどの脆弱な国に対して支払うのか、何に対してどのぐらい支払うかといった議論には詳細な意見が分かれていました。また、1.5℃目標に向けた排出削減行動の強化についての議論の必要性や、気候変動の影響を減らすための「緩和作業計画(MWP)」も、その実用性や影響力について効果的なのか疑問視される声があがっていました。
過去のCOP(気候変動)をおさらい!
・パリ協定とCOP21とは何ですか?
・パリ協定(COP21)後に企業が取り組む『省エネ』と『創エネ』
・COP22開催後の気候変動に関する日本国内の動向と、企業活動への影響について教えてください。
・COP27とは?議論と結果をわかりやすく解説!
COP28の注目ポイント「グローバル・ストックテイク」
COP28ではグローバル・ストックテイク(以下、GST)が初めて実施されたことに注目が集まりました。GSTとはパリ協定で掲げられた「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標に向けて世界全体の進捗を評価する仕組みです。パリ協定のPDCA(下記図)で示すように、各国はパリ協定をベースに国家計画策定と政策立案を行い「温室効果ガスの排出削減目標(NDC)」を立てます。このGSTは5年ごとに行われる仕組みになっており、パリ協定発効以降今回のCOPで初めて実施されました。
▼パリ協定の概要
目的 | 産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持。1.5℃に抑える努力を追求。 |
目標 | 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成できるよう、排出ピークをできるだけ早期に迎え、最新の科学に従って急激に削減。 |
各国の目標 | 各国は、約束(削減目標)を作成・提出・維持し、削減目標の目的を達成するための国内対策をとる。削減目標は、5年毎に更新する。 |
長期戦略 | 全ての国が長期の低排出開発戦略を策定・提出するよう努めるべき。(COP決定で、2020年までの提出を招請) |
グローバル・ ストックテイク |
5年毎に全体進捗を評価するため、協定の実施を定期的に確認する。世界全体の実施状況の確認結果は、各国の行動及び支援を更新する際の情報となる。 |
(出典:環境省)
▼パリ協定のPDCA
(出典:環境省)
GSTの進捗評価では、現在各国が掲げている目標をそれぞれが達成したとしても、なんと3℃近く気温が上昇してしまう恐れがあるという結果でした。現在、気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、世界の温室効果ガス排出量を2019年比較で2030年までに43%削減、2035年には60%削減、2050年にはネットゼロにする必要があることが認識されています。しかしながら、GSTの評価では1.5℃目標は達成できません。GSTの結果を踏まえ各国が交渉・議論をした結果、COP28で以下をはじめとしたいくつかの内容が盛り込まれました。
・1.5℃目標達成のためには緊急的な行動の必要性がある ・2025年までに排出量をピークアウト※させる必要がある ・全ての業種を対象とした排出削減が求められる |
※ピークアウト:頂点に達し、それ以上は上がらない状態のこと
COP28の結果(合意されたこと)
では今回のCOPで決まったことは何でしょう。要点をまとめてみました。
1. 10年間で化石燃料からの脱却を加速させること
初のGSTの結果を踏まえCOP28では「2030年頃までのおよそ10年で化石燃料からの脱却を加速する」という内容が決定文章に記載されました。一部の国の反対により「化石燃料の段階的廃止」という強い表現にこそならなかったものの、化石燃料から再生可能エネルギーに移行していくための重要なこの合意を受け、各国の温暖化対策の取り組みが進むことが考えられます。
2. 気候変動影響からの損失と損害を防ぎ、救済するための基金の運用
COP開幕日に基金の制度の大枠についての決定がされました。
基金に関しては気候変動の影響に対して特に脆弱な途上国を支援の対象とすること、先進国が基金立ち上げ経費の拠出を主導することに加えて、あらゆる資金源からの拠出を受けるなどが決定されています。基金設立後、日本も1000万米ドルを拠出する用意があることを表明しています。
3. 世界の再エネを「2030年に3倍」に拡大
2030年までに世界の再エネ容量を少なくとも1万1000ギガワット(110億キロワット)に増やすこと、またエネルギー効率を2倍にすることが合意されました。
さいごに
本記事ではCOP28で注目されたポイント、合意事項について解説いたしました。上述したようにCOP28では2035年に温室効果ガス60%削減が求められています。日本は2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を掲げており、COP28閉会時点では20%減という状況です。日本はエネルギーの安定供給を確保しつつ、排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していくことを表明しましたが、化石燃料に大きく依存していることに危機感を持ち、目標に向けてさらに取り組みを加速させることが強く求められるでしょう。
また企業にとってもこの話題は他人事ではありません。カーボンニュートラルに向けて、エネルギーの脱炭素化は、取り組みの中でも優先的に進めていくべきでしょう。燃料の価格が高騰している今が再生可能エネルギーという選択肢を検討する機会なのかもしれません。COP28の結果を受けて世界が目指している方向性と現状を確認し、今一度自社のカーボンニュートラルの取り組みについて振り返ってみましょう。
合わせて読みたい生物多様性に関する条約(COP)
2010年に開催される、COP10とはどのようなものですか?
生物多様性COP15の2030年目標、日本企業への影響とは?
執筆者情報(執筆時点)
梅木 菜々子
アミタ株式会社
サーキュラーデザイングループ インバウンドマーケティングユニット
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