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30by30目標とは?生物多様性の取り組み方や事例について解説

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この記事は、2023/11/22に掲載したものを再編集しています。
30by30について、その概要と達成するためのロードマップ、具体的な取り組み事例や期待される効果とともにネイチャーポジティブやTNFDとの関連も踏まえて解説いたします。

TNFDを進める上でのポイントや、LEAPアプローチの実施方法を事例とともに解説したセミナーの動画を公開しました。

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30by30とは

30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2030年までに陸と海の30%以上の生態系を保全しようとする目標です。これは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復傾向へと向かわせる「ネイチャーポジティブ(Nature Positive:自然再興)」というゴールを目指すために達成すべき目標と位置づけられています。
2021年6月にイギリスで開催されたG7サミットにて、G7各国は少なくとも陸と海のそれぞれ30%という割合を保全・保護することについて約束しており、2022年12月にカナダのモントリオール開催のCOP15で採択された「昆明―モントリオール生物多様性世界枠組み」の目標3にも同様の記載があります。
30by30目標に取り組むことで、地球全体の利益である生物多様性の保全及び生態系サービスの供給を維持することにつながります。30by30は「人と自然との結びつきを取り戻すこと」をキーメッセージのひとつとしており、目標の達成を目指すことで交流人口の増加を通じた地域活性化も期待されています。

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30by30とOECM

30by30を達成するためのカギともいえるのが、OECM(Other effective area-based conservation measures)です。OECMとは、国立公園等の公的な保護地区ではないものの、生物多様性を効果的に保全しうる地域のことをいいます。
OECMとは何か、自然共生サイトとの違いは何か等、以下の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。

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保護地域とは

「保護地域」には明確な定義はありませんが、陸域及び内陸水域については自然保護地域、自然環境保全地域、鳥獣保護区、保護林等が含まれ、海洋保護区としては自然公園、鳥獣保護区、指定海域等がこれにあたります。
日本では既に陸域で20.3%、海域で13.3%が保護地域として保全されており、2020年までに愛知目標で掲げられていた目標11「少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%」は達成されています。
環境省は、2030年までに陸と海の30%以上の生態系の保全を目指す30by30目標達成のために、法律で定められた「保護区」だけでなく、民間主体により保全される地域(OECM)の拡充を目指しています。

30by30に期待される効果

それでは保護区を30%に高めることで本当に生物多様性は保全できるのでしょうか?
実は、30by30生物多様保存の実効性について科学的に評価する発表があります。琉球大学の久保田教授と(株)シンクネイチャーの研究グループは、国立公園や自然保護区のような"公的保護区の拡大"と"民有地を対象にしたOECM"をミックスして行えば、生物の相対絶滅リスクを7割低減する効果が見込めると論文で報告しています。また、国有林等に保護地域を拡大するよりも、里山や都市等の民有地に分布する希少種の保全が重要であることも明らかにしています。

また、自然環境及び生態系の保護・管理による効果は、ただ生物種を守るだけにはとどまりません。生態系が健全に保たれることで、社会は生態系サービスを安定的に享受することにつながります。例えば健全な生態系が保たれた健全な森林では、水源涵養や土砂災害防止などのインフラ機能、木材生産機能などが保たれます。外来種の侵入防止や駆逐は、在来種を守るだけではなく、媒介される感染症のリスクを低減する効果もあります。
ここであげた例以外にも、生物多様性を保全することでの社会に対する利益は多岐にわたるのです。近年では、上記のように自然の力を活用して社会課題の解決を目指す「自然を基盤とする解決策」(Nature-based solutions:NbS)というキーワードも注目されています。

30by30のロードマップ

2022年3月、環境省が中心となって検討し『30by30ロードマップ』が策定されました。
ロードマップには2030年までに集中して行う取り組み・施策や30by30目標達成までの工程、具体策等が記されており、主にOECMの認定を拡大することで目標達成を目指すとしています。
OECMの認定を受けると国際データベースに登録されますが、それに先行して日本版OECM認定を進める仕組みが「自然共生サイト」です。
ロードマップ上にはこの自然共生サイトを2023年には全国100地域以上認定し、さらに推進していくことが記されており、正式運用は2023年4月から開始されています。

また、2024年4月19日に公布された「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(生物多様性増進活動推進法)」では、現行の自然共生サイト制度を土台としてより幅広い取り組みを柔軟に促進できるように再構築、法制化するとされています。
自然共生サイトと生物多様性増進活動促進法の違いとして「自然共生サイト」では民間の取り組みによって生物多様性の保全が図られている「場所」に対する認定であるのに対し、「生物多様性増進活動促進法」では、「活動」を認定することとしています。
そして法制化に当たり、生物多様性が豊かな場所を維持するための活動だけでなく、新たに開発跡地や管理放棄地などにおける生物多様性の創出・回復の活動も対象となります。既にある豊かな生物多様性を保全するとともに、劣化した生態系の創出・回復も行っていくことで30by30目標達成への取り組みを加速します。
「生物多様性増進活動推進法」は、2025年4月から施行される予定です。

30by30の取り組み企業事例

2022年4月8日、30by30ロードマップの各種施策を実行的に進めるための有志連合として、環境省を含めた産官民17団体を発起人とする「生物多様性のための30by30アライアンス」が発足されました。参加者は所有地や所管地内をOECMへの登録や保護地域(国立公園等)の拡大を目指すことに加えて、自らの土地を所有・管理していなくても、他エリアの管理を支援する等、直接・間接的に30by30目標への貢献をすることが求められます。
アライアンスに参加することで、最新情報の共有や予算上の支援を受けることができ、取り組みが進めやすくなるというメリットがあります。
実際に30by30アライアンスに参加している企業の取り組み事例を、3つご紹介します。

①アサヒグループホールディングス株式会社
活動場所:森林保全
アサヒグループは、80年間適切な森林管理を行い、FSC認証も取得している社有林「アサヒの森」でのOECM認証取得を目指しています。
主な活動として、2025年までに日本のビール工場で使用する水と同量の水を「アサヒの森」での水涵養量で賄うウォーターニュートラルの実現や、2010~2012に行われた生物多様性調査で植物668種、鳥類60種が確認された同地域の継続的な森林経営と生物多様性保全、アサヒグループの事業に欠かせない水資源を守ることを目的とした、社員による森林保全活動等に取り組んでいます。

②キヤノングループ
活動場所:キヤノングループ事業所
キヤノングループでは、鳥をテーマにした生物多様性保全活動である「キヤノンバードブランチプロジェクト」を通じて生物多様性の大切さを啓発しています。
キヤノンの事業所内では巣箱やバードバスの整備、野鳥観察や調査を行っており、本社敷地内の30%を占める「下丸子の森」では36種類の野鳥が確認されています。プロジェクトWebサイトでは双眼鏡やカメラ等自社の製品を活用した野鳥の写真図鑑や撮影解説、野鳥に関するコラム掲載等を行っています。

③ANAホールディングス株式会社
活動場所:国内外のANAグループ社員や社外の航空関係者と連携した取り組み
ANAグループでは、航空輸送を利用した野生生物の違法取引及び、外来種侵入の防止に努めています。野生生物の違法取引撲滅を目的とする「バッキンガム宮殿宣言」の11項目のうち、3項目にコミットするアクションプランを実施するための啓発活動として、国際的なNGOと共働し、ANAグループ社員を対象とした水際対策のためのセミナーを開催しました。2019年度からは、成田国際空港株式会社と共催で毎年開催しています。

ここでご紹介した事例以外にも、企業ごとに自社の特性を活かした様々な取り組みが行われています。もっと事例を知りたいという方は、下記URLからご覧ください。

参考
30by30アライアンス 参加団体一覧/活動事例(環境省)

最後に 企業の生物多様性の取り組み方

本記事では、30by30の概要や達成に向けたロードマップの内容、具体的な取り組み事例をご紹介しました。
生物多様性への配慮をしていくための基本プロセスとして「関係性評価・体制構築」「目標設定・計画策定」「計画実施」「検証と報告・見直し」の順で進められることが生物多様性民間参画ガイドラインにて整理されています。現在多くの企業が開示を目指しているTNFDは「関係性評価・体制構築」のための分析手法であるといえます。

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TNFD等の枠組みに沿って、自社の事業活動が生物多様性に与えている影響や事業の生態系サービスへの依存度、それらが健全に保たれないことによるリスク等の情報を開示して終わってしまうのではなく、具体的な計画を立て、実際に健全な生態系の保全に取り組むことでステークホルダーとの良好な関係構築にもつながります。

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TNFD等の情報開示枠組みに取り組むことで明らかになった情報を活用し、具体的な「計画実施」を進めていく際にOECMへの登録、及び30by30目標への貢献がひとつの分かりやすいマイルストンとなるのではないでしょうか。

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参考情報
生物多様性の関連記事は「TNFDv1.0・生物多様性の取り組みポイント・事例・動向まとめ記事」をご覧ください。

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執筆者情報(執筆時点)

山口 玲奈(やまぐち れな)
アミタホールディングス株式会社
ミッションマネジメントグループ カンパニーサポートチーム

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