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カーボンネガティブとは?意味や事例を解説!
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カーボンネガティブとは温室効果ガスの排出量よりも吸収量が多い状態を指します。今回の記事では、カーボンネガティブの意味と企業事例について解説し、最後に、脱炭素のキーワードとなりつつある炭素循環についてもご紹介します。
カーボンネガティブとは?
カーボンネガティブとは、CO2の排出量よりも吸収するCO2の量が多い状態のことをいいます。カーボンネガティブという用語が注目されるようになった背景には、マイクロソフトコーポレーション(以下、マイクロソフト)の掲げる脱炭素目標にあります。マイクロソフトは、2020年1月に持続可能な環境のための新たな取り組みについて発表しました。その内容に、2030年までにカーボンネガティブを実現すると掲げたのです。
カーボンネガティブと同じ意味で「カーボンポジティブ」が使われることもあります。これはCO2を"除去"する=ネガティブという考え方に対し、CO2を"吸収できている"=ポジティブという考え方で、語句は反対語ではあるものの同じ意味を示しています。
カーボンニュートラルとの違いは?
一方で「カーボンニュートラル」は、環境省によると、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いて実質ゼロにすることを意味します。つまり、カーボンニュートラルとの違いは、カーボンネガティブのCO2を除去するという削減への積極性です。
カーボンネガティブに取り組む意義とは?
カーボンネガティブは、排出量よりも吸収量が多くなる状態であることからCO2の削減には非常に重要な取り組みです。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の報告書によると、パリ協定の1.5℃目標を達成するには、2030年までに世界の温室効果ガスの排出量を2010年比で45%削減しなければならないと示しています。しかしながら、各国政府の状況はその目標から離れており、国連気候変動会議COP25の議長は、NDC統合報告書※について主要排出国の全体的な水準が極めて低く留まっていると指摘しています。昨年から延期となっている、2021年11月に開催予定の国連気候変動会議COP26では、特に主要排出国やG20の国々は先頭に立つべく、2030年までの各国政府の野心的な行動計画の提出が求められます。企業活動から排出される温室効果ガスの割合は高く、NDCにも影響すると考えると、企業に求められる実行計画もますます高い水準になると予想されます。企業における今後の対策としては、CO2排出量を正味ゼロにするだけでなく、除去および再利用(循環)という視点も重要であると考えられます。
また、先日、国際的に大きな動きがありました。2021年7月14日にEUが2030年までに1990年比でCO2排出量を55%削減する目標達成に向けて、対策案を発表しました。その対策案には、2035年にガソリン車やディーゼル車の新車販売を実質禁止する旨が記載されている他、EUよりも気候変動対策が緩い国からの一部輸入品に対して、国境炭素税を導入するといった計画が盛り込まれています。対象輸入品は、CO2排出量の多いアルミ、セメント、肥料、電力の5品目です。現時点で、影響が大きいと見られているのはロシアや中国、トルコといった対象品目の多くを輸出している国ですが、今後、課税品目に自動車などが追加されれば日本にも大きな影響が出ると考えられています。
※NDC(Nationally Determined Contribution)...パリ協定(2015年12月採択、2016年11月発効)では、全ての国が温室効果ガスの排出削減目標を「国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に提出・更新する義務があります(パリ協定第4条2及びCOP21決定1パラ23、24)。出典:外務省「日本の排出削減目標」
カーボンネガティブの取り組み事例
- 企業の事例
‐マイクロソフト‐
「2030 年までにマイクロソフトはカーボンネガティブとなり、1975 年の創業以来、直接的および電力消費により間接的に排出してきた CO2 の環境への影響を 2050 年までに完全に排除します。」とマイクロソフトは自社のサイトで発表しています。つまり、過去にまでさかのぼり、1975年創業以来排出してきたScope1、Scope2に該当するCO2排出分を2050年までに排除する目標を掲げたのです。これらの目標を達成するためのひとつの方法として、マイクロソフトはインターナルカーボンプライシング(以下、ICP)※を導入しています。
※インターナルカーボンプライシング(ICP)...企業内部で見積もる炭素の価格であり、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組み。また、気候変動関連目標に紐づく企業の計画策定に用いる手法であり、省エネ推進へのインセンティブ、収益機会とリスクの特定、あるいは投資意思決定の指針等として活用される。出典:環境省「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン」
▼ICPの3つの活用方法
Shadow price (シャドープライス) |
・気候変動リスクを定量的に把握 ・投資指標に入れることで、低炭素投資を推進 |
Implicit carbon price (インプリシットプライス) |
|
Internal fee (内部炭素課金) |
資金のやり取り有 ・社内で排出量に応じて、資金を実際に回収・低炭素投資等へ活用 |
出典:環境省「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン」をもとにアミタで作成
ICPの活用方法には、上図3つの種類があります。資金のやり取りが発生しないShadow Price(シャドープライス)、Implicit carbon price(インプリシットプライス)、実際に資金のやり取りが行われるInternal fee(内部炭素課金)の3つです。資金のやり取りが発生しない2つの活用方法は、主に気候変動リスクを定量的に可視化することを目的としています。一方で、マイクロソフトが導入している内部炭素課金は、社内の部門ごとにCO2排出量に応じて、実際に資金を回収し低炭素投資等へ活用するという流れになります。マイクロソフトは「2012 年より開始し、昨年に増加した社内の炭素料金の対象を、自社による直接的排出だけではなく、サプライチェーンとバリューチェーン全体の排出へと拡大することによりプログラムの資金の一部を確保します。」と2020年1月のブログで発表しています。マイクロソフトは2012年から内部炭素課金を自社から直接排出するScope1と電力使用など間接的に排出するScope2に関わる部門から炭素価格を回収していましたが、サプライチェーン・バリューチェーン全体から排出されるScope3にも課すことで、他業界、お客様まで炭素価格の回収を拡大させ、低炭素への投資資金等に回すことを宣言しています。このように自社だけでなく、サプライヤーやエンドユーザーまでを巻き込んでこそ脱炭素の実現に近づきます。
引用:日本マイクロソフト株式会社「2030 年までにカーボンネガティブを実現」
- 国の事例
‐ブータン王国‐
カーボンネガティブを国で達成しているのがブータン王国です。2016年には、TED Talksで当時の首相が自らブータン王国の環境に対するミッションを語る姿もありました。ブータンは、CO2の排出量に対して吸収量が3倍だと言われています。その理由のひとつがブータンの憲法にあります。ブータンの憲法には、国土の60%以上を常に森林として維持することが定められているのです。また、ほかにも電気自動車の購入やLED証明の購入に助成金で援助を行う施策なども取られています。こうした施策や人々のライフスタイルが国単位でカーボンネガティブを達成する理由になっているのです。
- カーボンネガティブのための技術事例
‐CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization or Storage)‐
火力発電の際に排出されるCO2をコンクリートに吸収させ固定化させる技術があります。本来、大気に排出されるはずのCO2がコンクリートに大量固定することで、排出量の削減に貢献することができるのです。このようなCCUSという技術は、発電所や工場から排出されるCO2をほかの気体から分離、回収し、資源として有効利用または地下の安定した地層の中に貯留する技術であると経済産業省は定義しています。また、回収したCO2を資源として利用することをカーボンリサイクルと呼びます。例えば、ほかにも、回収したCO2を貯留する技術として、バイオマス発電時に排出されるCO2を回収し地中に貯留するBECCS(Bioenergy with carbon dioxide capture and storage)、大気中に存在するCO2を直接回収し貯留するDACCS(Direct air capture with carbon storage)などCO2を除去する技術も考えられています。このような技術の進歩も脱炭素には欠かせません。
脱炭素の取り組みの注意点
企業ごとに状況は異なるため、カーボンニュートラルやカーボンネガティブなどの考えを理解した上で、自社がどのような目標を目指すのか、そして取り組む際のリスクと機会はどこにあるのか、よく検討する必要があります。また一方で、表面的な脱炭素の取り組みにならないように注意しなければなりません。時折、ニュース等でも「見せかけの環境配慮(グリーンウォッシュ)」に関する報道があります。例えば、環境に配慮した燃料を購入しCO2排出量を削減したとしても、輸送や生産過程などで、これらの削減量以上にCO2排出量が増えてしまっては意味がありません。調達や生産過程も考慮に入れて、サプライチェーン全体を視野に入れて取り組む必要があります。目に見える部分のみの脱炭素に取り組むのではなく、その方法が最も脱炭素につながる行動なのか見極める必要があります。上述したように、CO2を除去する技術は日々進化していきますので、そういったトレンドを掴んでいくことも重要です。
今後求められる「炭素循環」という考え方
多くの企業が脱炭素に対する目標を立てて、いかに事業活動からCO2をはじめとする温室効果ガスを排出することなく事業を持続していけるのか試行錯誤されています。炭素は、CO2やメタンなどの形態で、動植物や土壌中の有機物、化石燃料、また海水に存在しており、それらが形を変えながら移動をすることを炭素循環といいます。植物の光合成によりCO2を吸収している一方で、生物の呼吸によってCO2が排出されるのも炭素循環の一例となります。人々は、産業革命以降、自然のシステムではまかなえないほどの温室効果ガスを排出してしまい、循環のバランスが崩れ、地球温暖化の影響によって気温上昇や災害など実生活にまで影響が及んでいます。炭素が自然の中でバランスよく循環するためにCO2の削減や除去、吸収など様々な方法で取り組んでいく必要があります。上述したCCUSやDACCSといった技術は、CO2を新たな資源として利用、貯留するといった炭素循環の視点を持っており、これが今後は重要になるのではないかと考えています。
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「Cyano Project(シアノプロジェクト)」は、企業が「イノベーションのジレンマ」に陥ることなく、時代や社会の変化に合わせて新たな価値を創出し、経営と社会の持続性を高めることを目的とした約3年間の事業創出プログラムです。
執筆者プロフィール(執筆時点)
古城 日向子(こじょう ひなこ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム
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