Q&A
2021年のアース・オーバーシュート・デーはいつ?日本の資源利用の状況は?
Image by Hans Braxmeier from Pixabay
毎年、人間が地球の許容量を超えてどれだけの資源を利用しているかを示す指標として、世界的に公表されているアース・オーバーシュート・デー。
本記事では、2021年のアース・オーバーシュート・デーはいつなのか、日本の資源利用の状況や改善策についてお伝えします。
目次 |
アース・オーバーシュート・デーとは? 2021年はいつ?
アース・オーバーシュート・デーは、人類が消費している自然資源の量が、1年間に地球が再生できる自然資源の量を上回る日を示します。そのため、毎年アース・オーバーシュート・デーは変わりますが、2021年のアース・オーバーシュート・デーは7月29日と発表されました。
この日以降、人類は地球が再生できない量の資源を消費することになります。つまり、自然資源を赤字状態で消費し続けていることになり、未来の資源を切り崩して生活している状態と言えます。
アース・オーバーシュート・デーは、毎年、国際シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワーク(以下、GFN)が発表しており、その年のエコロジカル・フットプリントやバイオキャパシティに応じて計算されています。
アース・オーバーシュート・デー
=(地球のバイオキャパシティ/人類のエコロジカル・フットプリント)x 365
バイオキャパシティ | 地球が生産・吸収できる生態系サービスの供給量 |
エコロジカル・フットプリント | 人類が消費する資源を生産したり、社会経済活動から発生するCO2を吸収したりするのに必要な生態系サービスの需要量を地球の面積で表した指標。6種類に分かれている。 |
次に、世界のバイオキャパシティとエコロジカル・フットプリントの推移を見ていきましょう。
図:1961年以降の世界のエコロジカル・フットプリントとバイオキャパシティのギャップ
出典:グローバル・フットプリント・ネットワーク
このグラフを見ると、エコロジカル・フットプリント(需要)が右肩上がりに増え続けており、1970年以降はエコロジカル・フットプリント(需要)がバイオキャパシティ(供給)を上回っていることがわかります。つまり、1970年以降から現在までの50年間、私たちは、未来の資源を切り崩して消費し続けていることになります。
図:1970年から2021年のアース・オーバーシュート・デーの推移
出典:GlobalFootprintNetworkwww.footprintnetwork.org
アース・オーバーシュート・デーの推移は上記の通りです。この図から過去20年間で2カ月間も早まっていることがわかります。2020年は、新型コロナウイルスの影響もあり8月22日と一時的に改善しましたが、2021年は1カ月早い結果となりました。
日本の状況は?国別の資源利用状況
国別のアース・オーバーシュート・デーをみた場合、どのような結果が出るのでしょうか。
図:2021年 国別のオーバーシュートデー
出典:GlobalFootprintNetworkwww.footprintnetwork.org
最も早くアース・オーバーシュート・デーを迎えるのは、カタールの2021年2月9日です。上記の図に載っていない国、例えばバングラデシュやハイチなどは、自国が1年間で生産・吸収できる自然資源の供給内に収まっており、アース・オーバーシュート・デーを迎えません。
2021年の日本のアース・オーバーシュート・デーは5月6日となり、世界のアース・オーバーシュート・デーより2カ月早い結果となりました。この結果は、地球上のすべての人々が日本人と同じような消費行動をした場合を想定して算出されています。
なお、地球上のすべての人々が日本人と同じような消費行動をした場合、地球2.9個分の資源が必要だと示すデータもあります。 |
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出典:GlobalFootprintNetworkwww.footprintnetwork.org |
さらに左記の図は、各国の人々の需要を自国内の自然資源のみで満たそうとした場合、その国の資源が何個分必要かを示した図となります。 |
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出典:GlobalFootprintNetworkwww.footprintnetwork.org |
エコロジカル・フットプリントとバイオキャパシティの国別のデータは下記です。日本は、エコロジカル・フットプリントに対して、自国のバイオキャパシティが釣り合っていない状況だということがわかります。バイオキャパシティを増やすことは容易ではないため、消費量であるエコロジカル・フットプリントを低減していく必要があります。
▼エコロジカル・フットプリント/バイオキャパシティ 国別ランキング
エコロジカル・フットプリント(需要) | バイオキャパシティ(供給) |
1位 中国 | 1位 ブラジル |
2位 アメリカ | 2位 中国 |
3位 インド | 3位 アメリカ |
4位 ロシア | 4位 ロシア |
5位 日本 | 5位 インド |
- | 25位 日本 |
出典:グローバル・フットプリント・ネットワーク公開情報からアミタ株式会社が作成
考えられる解決策は?深刻なカーボン・フットプリントの課題
GFNの調査によると、2021年のアース・オーバーシュート・デーが早まった主な要因は、カーボン・フットプリントの増加(2020年から6.6%増加)と世界の森林のバイオキャパシティの減少(2020年から0.5%減少)であるといわれています。バイオキャパシティの減少は、主にアマゾンの森林伐採が急増したことによるもので、2021年の予測では森林伐採が前年比で最大43%増加していると言われています。
ここで、エコロジカル・フットプリントの内訳を見てみましょう。
エコロジカル・フットプリントは、人類が環境に与えている負荷を6種類の土地面積に置き換えています。
図:土地面積の種類別で表した世界のエコロジカル・フットプリント
出典:グローバル・フットプリント・ネットワーク
青 |
: | カーボン・フットプリント(Carbon) 排出された二酸化炭素を吸収するために必要な森林面積の総量 |
水色 |
: | 漁場(Fishing Grounds) 様々な魚種の持続可能な漁獲高の最大推計値を利用して計算 |
橙色 |
: | 耕作地(Cropland) 人間が消費する食物や繊維物、家畜の飼料、油、穀物そしてゴムを生産するのに使用される土地面積 |
赤色 |
: |
生産能力阻害地(Built-up Land) |
緑 |
: |
森林地(Forest Products) |
黄色 |
: |
牧草地(Grazing Land) |
中でも大きな負荷を与えているのが、主に化石燃料の利用によって排出されたCO2による負荷(カーボン・フットプリント)であり、エコロジカル・フットプリントの約60%を占めています。GFNは、カーボン・フットプリントを現状よりも50%削減すれば、93日つまり約3カ月、アース・オーバーシュート・デーを遅らせることができると試算しています。これらの情報から世界的に見ても、脱炭素への取り組みは欠かせない要素といえるでしょう。
今後は「資源の循環」が重視される
また、自然資源を大量に消費しなくて良い、資源循環の仕組みを作ることが重要と考えます。2020年12月、国際的な総合科学ジャーナル「Nature」に掲載された論文によると、2020年にはじめて、人間が作り出した人工物の質量が地球上の生物体量を上回ったという内容が公表されました。
生産や廃棄に大量のエネルギーが必要となる人工物は、20世紀初頭では生物体量の約3%に過ぎませんでしたが、今や地球上の生物体量を上回っているのです。このペースが続くと、20年後には人工物量が生物量の3倍近くに達すると予測されており、人工物の増加は生態系や気候変動に重大な影響を及ぼします。自然資源を大量に消費せず、エネルギーの利用量を抑えていくためにも、今後、資源循環の仕組みづくりをしていくことはますます重要になってくると考えられます。
参考情報
- Earth Overshoot Day Webサイト:https://www.overshootday.org/2021-calculation/
- Global Footprint Network National Footprint and Biocapacity Accounts, 2021 Edition Downloaded July 26, 2021 from https://data.footprintnetwork.org.
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執筆者プロフィール(執筆時点)
桂山 詩帆(かつらやま しほ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム
小杉 日奈子(こすぎ ひなこ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム
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