Q&A
2020年2月フランスがサーキュラー・エコノミー促進のための法律を公布、製品への規制を強化。日本への影響は?
2020年2月10日に、フランス国会がサーキュラー・エコノミーを促進するための法律「Loi du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l'économie circulaire」(廃棄物と循環経済と戦う2020年2月10日の法律)を公布しました。本法律では、廃プラスチック類に関する規制だけでなく、製品の保証期間延長の義務化、レシート配布の一部禁止、衣類・靴・化粧品・本・家電などにおける売れ残り製品の廃棄の禁止、家電製品に対する修理可能性指数の実装など、様々な規制や義務化が始まります。詳しくご紹介します。
目次 |
新しい法律の概要は?
本法律は2004年環境憲章の実施施策の一つです。本法律の目的は、廃棄物を削減し、天然資源、生物多様性、気候を保護するために、生産と消費モデルの変化を加速することと発表されており、製品への具体的な規制が規定されています。本法案は、5つの目的に基づき構成されています。
1.使い捨てプラスチック製品の廃止
「すべてのプラスチック包装の段階的廃止」に向け、下記のような設定が公表されています。
実施年度 | 内容 |
2021年 |
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2022年 |
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2023年 | ファーストフード店での使い捨て食器の禁止 |
2025年 | 再生プラスチック利用100%の達成 |
2030年 | 住民1人当たりの家庭廃棄物を15%、経済活動による廃棄物を5%削減 |
2040年 | 使い捨てプラスチック容器・包装の販売停止 |
2.消費者への情報開示の強化
誰もがより良い消費を行えるように、消費者への製品に関する情報開示についても強化対策が行われます。
実施年度 | 内容 |
2022年 |
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フランス国会は「生分解性」という用語の定義に関する科学的な合意がないため、技術的および法的な曖昧さを含んでおり、消費者に誤解を生じさせるとの見解を発表しています。したがって、製品とパッケージへの言及を禁止することが提案されています。
上記の他、本法律ではインターネットサービスプロバイダーとモバイルサービス事業者は、インターネットやモバイルの消費に関連する温室効果ガスの排出量を顧客に通知することが義務付けられました。
3.廃棄物削減対策の強化
冒頭でも述べたように、衣類、靴、化粧品、本、家電などにおける売れ残り製品の焼却・埋立は原則禁止となりました。
実施年度 | 内容 |
2021年 |
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2021年末~2023年末 | 衣類、靴、化粧品、本、家電に関して、売れ残り製品の寄付またはリサイクルの義務化(一部の例外を除く) |
2022年1月1日 |
医薬品の廃棄を減らすため、医薬品販売形態の変更を承認 |
2023年1月1日 |
感熱紙の消費を減らすため、顧客からの要求がない限り、レジにおける印刷レシートなどの印刷と配布を禁止 |
4.計画的陳腐化への対抗措置
「計画的陳腐化」とは、製造段階で製品寿命を意図的に短く設計することや、新製品を市場に投入する際に、旧製品を陳腐化させることで、消費者の購買意欲を上げる手法であり、サーキュラー・エコノミーを達成する上で、阻止する必要があります。より良い生産を促すために、下記のような設定が公表されています。
実施年度 | 内容 |
2021年 |
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2022年末 | ごみの分別の色分けについて、領土全体で統一を予定 |
2024年 | 家電製品などに対して持続可能性指標(信頼性、製品の堅牢性など)を実装 |
また、製品購入時の法定保証期間に関しても、対象である製品の保証を6か月延長すると定めました。
5.生産者責任の拡大
新たに玩具、たばこ、おむつなどの衛生用繊維品、建築製品および建材、自動車、二輪車に拡大生産者責任(EPR)が適用されるようになります。生産者は、製品のリサイクル性を高めるために、5年間のエコデザイン行動計画を策定する必要があります。また、建物の解体に伴い発生する廃棄物管理の最適化が進められます。
今後の動向、日本企業への影響とは?
本法律は、具体的な年度を定めている点が革新的と言えます。これらはフランスにおける法律の公布ですが、2020年3月に、欧州委員会が「サーキュラー・エコノミー推進に向けた新しい行動計画」を発表しており、今後、EU市場においては、製品の持続性に関するデータの提出や製品寿命の情報開示などが、新たな法規制によって求められる見込みです。こうした動きが、今後、数年以内に日本国内でのより明確なサステナビリティ規制やガイドラインに影響を与える可能性があります。
今後、考えられる日本企業への影響として、下記が挙げられます。
日本企業がフランス国内で直接製品を販売する際の影響 |
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サプライヤーとしてフランス国内で販売される製品の原料やパーツの供給をする際の影響 |
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フランス企業が自社の競合先である場合の影響 |
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投資家からの影響 |
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ルールの変更は「危機」であると同時に「機会」でもあります。何故なら、一度規制を満たす能力(開発・製造・供給網等)を手に入れることができれば、それは他社に対する参入障壁にもなるためです。自社、業界全体、上流・下流を含めた関係者の動向について、注意深く情報収集と検討をする必要があります。
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2020年9月末発表「世界を変えるサーキュラーエコノミー最新ビジネス39事例」を解説
2020年9月29日~30日に開催された世界循環経済フォーラムのオンラインイベントにて、サーキュラーエコノミーの優良事例(39企業の取り組み事例)が発表されました。日本からも2社が選定されています。今、世界で実践されている新しいビジネスモデルは、どのようなものか?ぜひ、ご一読ください。
関連情報
・サステナビリティビジョンの策定、中長期目標やシナリオの策定の支援
・サステナブルなサプライチェーンへの変革支援およびスキームの構築
・事業所の持続可能性の再評価や地域コミュニティとの関係性再構築
・社会課題(SDGs)に対する事業戦略立案と戦術の実行支援
・環境業務の効率化、自動化、データ収集の仕組構築支援 など
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執筆者プロフィール
山田 潔佳(やまだ きよか)
アミタ株式会社
サステナビリティ・デザイングループ マーケティングチーム
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