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グレタ・トゥーンベリさん|国際連合サミットでのスピーチ和訳全文と気候変動の動向
9月23日に行われた、国連の地球温暖化サミット。16歳の活動家、グレタ・トゥーンベリさん(スウェーデン)のスピーチが話題となっています。本記事では、グレタさんのスピーチ全文にあわせて、気候変動に関する数値データをご紹介します。
スピーチ全文(和訳)
"私が伝えたいことは、私たちはあなた方を見ているということです。"
スピーチの全文をご存知でしょうか?下記は、グレタさんによる約4分間のスピーチの全文(和訳)となります。科学的な数値を交えながら、各国代表へ「気候変動への取り組み」を力強く要請しています。
国連の温暖化対策サミット。地球温暖化対策を訴えて若者の運動が世界に広がるきっかけとなり、学校を休んで活動を続けているスウェーデンの16歳の活動家、グレタ・トゥーンベリさんが各国の代表を前に演説しました。演説の全文です。私が伝えたいことは、私たちはあなた方を見ているということです。そもそも、すべてが間違っているのです。私はここにいるべきではありません。私は海の反対側で、学校に通っているべきなのです。 |
出典:NHK news web グレタさん演説全文「裏切るなら絶対に許さない」涙の訴え
グレタさんのスピーチからは、近年の気候変動問題が深刻化していること、またこうした対策のリミットが着実に迫っていること、そして、それらを社会が認識し始めていることがうかがえます。そして、今、世界全体で気候変動に備えた動きが加速しています。
IPCCの報告書からみる、気温上昇が招く被害とは?
2018年10月、気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC(注1))は「1.5℃特別報告書(注2)」を発表しています。本報告書は現時点での最新の報告書であり、地球の気温が工業化(1800-1900年)以降、1.5℃上昇した場合の影響についてまとめられています。地球の気温変化については、2017年に、工業化以降、地球の気温が1℃上昇していることが確認されており、現在の上昇速度のままだと2030〜2052年の間に1.5℃の上昇が起こるだろうといわれています。
また、報告書では、地球の温度がそれぞれ1.5℃、2℃変化すると以下のような変化がおきると推定されています。
▼1.5℃及び2℃の地球温暖化で生じるリスクの予想
予想される変化 | 1.5℃の地球温暖化に関する予測 | 2.0℃の地球温暖化に関する予測 |
極端な気温 | ・中緯度域の極端に暑い日の気温が約3℃昇温する ・高緯度域の極端に寒い夜の気温が約4.5℃昇温する |
・中緯度域の極端に暑い日の気温が約4℃昇温する ・高緯度域の極端に寒い夜の気温が約6℃昇温する |
海氷の消失 | ・昇温の安定後、少なくとも約100年に1度の可能性で、夏の北極海の海氷が消失する | ・昇温の安定後、少なくとも約10年に1度の可能性で、夏の北極海の海氷が消失する |
洪水 | ・1976〜2005年を基準として、洪水による影響を受ける人口が100%増加する | ・1976〜2005年を基準として、洪水による影響を受ける人口が170%増加する |
サンゴ礁の消失 | ・さらに70〜90%が減少する | ・99%以上が消失する |
生物種の地理的範囲の喪失 | ・調査された105,000種のうち、昆虫の6%、植物の8% 及び脊椎動物の4%が気候的に規定された地理的範囲の半分以上を喪失する | ・調査された105,000種のうち、昆虫の18%、植物の 16%及び脊椎動物の8%が気候的に規定された地理的範囲の半分以上を喪失する |
世界全体の年間漁獲量の損失 |
・150万tの損失 | ・300万tを超える損失 |
出典:環境省 IPCC「1.5℃特別報告書」の概要をもとにアミタ株式会社が作成
▼1.5℃及び2℃の地球温暖化で生じる海面上昇および社会、経済への影響
世界平均海面 水位の上昇 |
2100年までの世界平均海面水位の上昇は、2℃に比べて1.5℃の地球温暖化においての方が約10cm低いと予測される。 世界の海面水位上昇幅が10cm低くなることは、2010年の人口に基づき適応がないと想定すると、関連するリスクに曝される人が最大1,000万人減少するであろうことを示唆する。 |
永久凍土の融解 | 地球温暖化を2℃ではなく1.5℃に抑えることによって、150万〜250万km2の範囲の面積において永久凍土の融解を何世紀にもわたって防ぐ。 |
貧困及び不利な条件の増大 | 地球温暖化の進行に伴って一部の人々において、貧困及び不利な条件が増大する。2℃に比べて1.5℃に地球温暖化を抑えることで、気候に関連するリスクに曝されるとともに貧困の影響を受けやすい人々の数を2050年までに最大2~3億人削減しうる。 |
出典:環境省 IPCC「1.5℃特別報告書」の概要をもとにアミタ株式会社が作成
気象庁の発表によると、近年の豪雨や記録的な高温の原因の一つとして、地球温暖化が挙げられています。IPCCによると、こうした異常気象は、地球温暖化が進むと、今後ますます増えると予測されています。
(注1) IPCC 国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。
(注2)「1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における、工業化以前の水準から1.5℃の地球温暖化による影響及び関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関するIPCC特別報告書」
日本国内のCO2の排出状況
日本国内の現状はどのようなものでしょうか。環境省の発表によると、日本の国別1人あたりのCO2排出量は主要国の中で9番目に多いといわれています。また、世界のエネルギー起源CO2排出量のグラフによると、日本のCO2排出量は11.5億tだと報告されています。これは、G7の国の中では、アメリカに次いで2番目に多いCO2排出量です。
▼2016年 CO2排出量に関するデータ
出典:「世界のエネルギー起源CO 排出量(2016年) - 環境省」より
(図はクリックすると大きくなります。)
また、環境省の発表から、日本のCO2排出量の内訳をみると「産業部門」「運輸部門」「業務その他部門」が、全体の75%を占めるなど、企業活動によるものが多いことがわかります。
▼2017年度 各部門のエネルギー起源二酸化炭素(CO2)排出量(電気・熱 配分後②
(単位:百万tCO2)
部門 | 排出量[割合] |
---|---|
産業部門(工場等) | 413[37.2%] |
運輸部門(自動車等) | 213[19.2%] |
業務その他部門(商業・サービス・事務所等) | 207[18.7%] |
家庭部門 | 186[16.2%] |
エネルギー転換部門 | 92[8.3%] |
合計 | 1,111[100%] |
出典:環境省「2017年度(平成29年度)温室効果ガス排出量 」(2019年発表)よりアミタ株式会社作成
企業の気候変動に関する取り組みについては、長期ビジョンの策定や、企業の環境対策を後押しするプログラムやイニシアティブへの取り組みなどがあげられます。政府による取り組みだけでなく、各社の取り組みが今、求められています。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
野田 英恵(のだ はなえ)
アミタ株式会社
サステナビリティ・デザイングループ デザインチーム
京都出身。立命館大学国際関係学部を卒業後、アミタに入社。
大学時代は、貧困問題に関心を持ち、ミャンマーやフィリピンにてソーシャルビジネスに関わった。貧困問題に限らず、社会的な構造が生み出す課題全体を見つめつつ、持続可能な社会の実現にむけて奮闘中。
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