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バーゼル条約とは?概要と改正による汚れたプラスチックごみの輸出規制強化についても解説
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※本記事は、2019年6月11日に掲載されたものを再編集しています。
2017年末の中国による使用済みプラスチック等の輸入禁止措置を契機に、世界的に大きな問題となっているプラスチックごみ。有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下、バーゼル条約)は、第14回締約国会議(COP14)(2019年4月29日~5月10日)にて、さらに「汚れたプラスチックごみ」の輸出規制が強化されました。改正内容や影響、廃プラスチック類の今後についてわかりやすく解説します。
目次 |
バーゼル条約とは?
バーゼル条約の概要は下記の通り、有害廃棄物の越境移動による環境汚染などを防ぐことを目的としています。国内では、この条約に対応する法律として「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(通称バーゼル法)が施行されています。
▼バーゼル条約の概要
正式名称 | 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約 |
目的 | 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制について、国際的な枠組みを定め、これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護すること |
経緯 | 1980年代に多発した有害廃棄物の越境移動をめぐる事件を契機として、UNEP(国連環境計画)が中心となって発効に至る。 |
概要 | ・有害廃棄物等を輸出する際の輸入国・通過国への事前通告、同意取得の義務付け、締約国との有害廃棄物の輸出入の禁止 ・有害廃棄物の国内処理の原則・越境移動の最小化 ・不法取引が行われた場合の輸出者による国内引き取り義務(再輸入・処分など) ・規制対象となる廃棄物の移動に対する移動書類の携帯義務 |
締約国 | 189か国(2024年2月時点) |
発効された年 | 1992年(採択は1989年) |
日本の批准 | 1993年 |
出典:経済産業省「バーゼル条約・バーゼル法」サイトを基にアミタ作成
汚れたプラスチックごみの輸出規制強化について
プラスチックごみの規制は、2019年4月19日~5月10日にかけてスイスのジュネーブにて開催された、バーゼル条約第14回締約国会議(COP14)で決定されました。この内容を含む改正附属書は、2021年1月1日から発効されています。
▼条約付属書の改正内容
改正された 条約附属書 |
追加された廃棄物 | 主な改正内容 |
附属書II (規制対象) |
Y48(特別な考慮が必要なプラスチックの廃棄物) | 附属書VIIIとIXを除くプラスチックごみを追加 |
附属書VIII (規制対象) |
A3210(有害なプラスチックの廃棄物) | 廃棄の経路や化学的性質などから有害な特性を示すプラスチックごみを有害廃棄物としてリストに追加 |
附属書IX (規制非対象) |
B3011(非有害なプラスチックの廃棄物) | リサイクルに適したきれいなプラスチックごみの範囲をより明確化 |
出典:環境省「バーゼル条約附属書改正とバーゼル法・廃棄物処理法の施行について」
これまでは附属書VIIIに記載のある有害なプラスチックの廃棄物のみが規制されていましたが、今回のバーゼル条約附属書の改正により「有害でないが汚れているもの(Y48)」がバーゼル条約の規制対象となりました。また、規制対象外だったほとんど汚染されていないプラスチックについても、リサイクルに適した範囲をより明確化するという改正が追加されました。
これにより、すべてのプラスチック廃棄物についてバーゼル条約の規制対象とそうでないものが網羅的に規定されることとなりました。
詳細な規制対象リストは環境省が発行している「廃棄物等の輸出入管理の概要」に記載があります。
附属書の改正による規制強化の留意点は、汚れたプラスチックごみの「輸出を禁止するものではない」ということです。ただし附属書改正の発効以降は、規制対象のプラスチックごみの輸出に当たって、輸出の相手国に対する通告と事前の同意が必要となっています。
バーゼル条約は、あくまで輸出入の手続きを定めたものであり、それ自体に「汚れたプラスチックごみの輸出を禁止する」という取り決めはないのです。
廃プラスチック類の今後は?減少する輸出量、国内の処理能力やリサイクル率
財務省によると、2020年の日本の廃プラスチックの輸出量は年間約82万トンであり、2014年(年間約167万トン)から7年連続で減少、今後も引き続き減少傾向で推移することが予想されます。
また国内処理については、新型コロナウイルス感染拡大による処分施設の大幅な稼働率低下は解消され、環境省の令和5年度の調査では、2017年末の中国などによる使用済みプラスチックの輸入禁止措置以前の水準に戻り、維持されていることが確認されています。
一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2022年のリサイクル率は約87%であり、うち62%がサーマルリサイクル、残りがマテリアル・ケミカルリサイクルという内訳となっています。また、マテリアルリサイクルの「国内循環利用量」は約53万トンで、前年対比+約14万トン(+35%)と大きく伸びています。今後、マテリアルリサイクルに適した良質な廃プラスチック原料は、中長期的には争奪戦になることが予想されるでしょう。
さいごに
環境省は2019年5月に、2030年や2035年等に向けた具体的数値目標を定めた『プラスチック資源循環戦略』を発表しています。これをもとに2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいて議論をリードし、2050年までに海洋プラスチックごみによるこれ以上の汚染を削減・ゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有しました。
関連記事:大阪ブルー・オーシャン・ビジョン、ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業、瀬戸プラネットとは?
プラスチック資源循環戦略では、「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制」、「2030年までにプラスチック資源の再生利用を倍増」といった野心的なマイルストーンが置かれています。サーマルリサイクルからマテリアル・ケミカルリサイクルへのシフトや、複数回の資源利用が可能なリユース・リサイクル設計が、これからますます求められてくるでしょう。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ マーケティングチーム
石田 みずき(いしだ みずき)
滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。メールマガジンの発信、ウェブサイトの運営など、お役立ち情報の発信を担当。おしえて!アミタさんへの情熱は人一倍熱い。
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