Q&A
産業廃棄物の異物混入について、事例と対策を教えてください。
排出事業者は、廃棄物処理法により産業廃棄物を適切に処理することが法律で定められています。適切な処理が行われない場合は、自社のコンプライアンスの低下だけでなく、最悪の場合、懲役や罰金等の罰則が科せられるケースもあります。
今回は、処理委託時のよくあるトラブルとして「異物混入」を取り上げ、事例と対応策について解説していきます。
異物混入にはどのようなリスクがあるの?
異物混入による主なリスクは下記になります。
- 収集運搬・処理に携わる担当者の怪我などにつながる
- 処理委託先から返品された場合、返品費がかかる
- 廃棄物処理法違反となり、罰則が適用される
異物混入のリスクとしては、上記2.費用面の問題が注目されがちです。しかしそれだけでなく、上記3.の通り、産業廃棄物処理委託契約書に基づき指定した産業廃棄物を処理していないという観点から、産業廃棄物処理法施行令第6条の2及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の4の2に違反し、排出事業者の委託基準違反を問われる場合があります。また、故意の場合は不法投棄とみなされる可能性もあります。最悪の場合、廃棄物処理法の罰則が適用されますので注意しましょう。
気を付けたい異物混入の事例
実際にはどのようなトラブルが生じるのでしょうか?気をつけておきたい異物混入の事例を紹介します。
【事例1】収集運搬・処理に携わる担当者の怪我などにつながるケース
産業廃棄物(廃プラスチック類)の処理を委託したが、返品の連絡を受けた。理由は、引火性、爆発性のあるスプレー缶が誤って混入していたからである。幸い怪我はなかったが、中身の入ったスプレー缶は最悪の場合、爆発などの事故原因にもなりかねない。分別徹底の必要性を痛感した。
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【事例2】処理委託先から返品され、返品費がかかったケース
産業廃棄物(汚泥)の処理を委託したが、返品の連絡を受けた。理由は、処分先の磁選機では取り除けない量の鉄くずが含まれていたからである。金属くずの処理は契約した委託内容に含まれていないことと、鉄くずの分別に時間を費やしてしまうことから自社へ返品された。その後、自社にて分別の徹底を実施したことで無事処分することができたが、返品費用がかかってしまった。
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【事例3】廃棄物処理法違反となり、罰則が適用されかねないケース
工事現場から排出される産業廃棄物(木くず)の中に、作業者のゴム手袋や、飲み終わった空き缶、弁当殻の一般廃棄物など、明らかに木くずとは種類も区分も異なる廃棄物が、含まれていた。そのため、処理委託先から返品を受けた。このケースについて、故意の場合は不法投棄とみなされ、罰則が適用される可能性もある。
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他にも気を付けたい事例として、荷姿が異なる廃棄物の混入などのケースがあります。
【番外編】荷姿が異なる廃棄物が混入したケース
産業廃棄物(汚泥)の処理を委託したが、返品の連絡を受けた。
理由は、処理委託契約書に記載されていた荷姿と異なる荷姿の廃棄物が含まれていたからである。
具体的には、フレコンの中に土のうが入っており、土のうを解体する手間が発生するとして自社へ返品された。その後、土のうを自社解体することで、処分することができたが、返品費用が掛かってしまった。
どのように防ぐのか?対策方法のご紹介
対策方法としては、下記が有効です。
1. 廃棄物の見える化 (荷姿にタグを付ける等)
異物の混入を防ぐためにできることとして、発生場所を「見える化」することがあります。具体的にはタグの貼付などが挙げられます(下記イメージ図参照)。異物の混入時に、どこから発生した廃棄物かわかることになり、発生場所の担当者に当事者意識が芽生え、異物の混入を抑制します。弊社の経験上もおすすめします。
▼タグの参考事例(アミタ株式会社作成)
2. 現場教育
現場教育も有効な対策の1つです。前述の「見える化」では、当事者意識が芽生えますが、その廃棄物が後工程でどのように処分されるのか、異物が混入するとどのような罰則やリスクがあるかということまでは分かりません。そのため、現場教育を行い、異物が混入した際の罰則やリスクを周知徹底することで、理解度や当事者意識がさらに深まります。
3. 5Sの徹底
最後に、工場で基本的に行われている方法として「5S」の徹底が挙げられます。「5S」とは1.整理 2.整頓 3.清掃 4.清潔 5.しつけの5点です。工場における異物混入を研究する春田氏の論文によれば、5Sの徹底により異物混入を防止するために、次の点が必要とされています。
▼5Sの進め方
1. 整理 | 必要なもの不必要なものをわけ、不必要なものを捨てるルールづくりを行う |
2. 整頓 | 誰にでも"目で見える"ようにする仕組みづくり |
3. 清掃 | 清掃をせずに済む仕組みづくり |
4. 清潔 | 1~3を維持できるようにPDCAを回す |
5. しつけ | 管理者が率先して行動すること |
(出典:春田 正行「異物混入を考える」(2002)より、一部抜粋)
工具の混入を例にとると、下記になります。実際にスコップ等が混入するという例もあります。
1. 整理 | 各工程にのみ必要な工具に分ける |
2. 整頓 | 必要な工具を工具キットにしまうようルール作りをする |
3. 清掃 | |
4. 清潔 | 整理・整頓・清掃を維持できるように、一区切りつくたびに工具キットにしまう |
5. しつけ | 整理~清潔までを管理者が率先して行動する |
異物混入は、思わぬリスクにつながります。製造工程だけでなく、廃棄物管理においても、十分気を付けましょう。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
高山 俊一(たかやま しゅんいち)
アミタ株式会社
スマートエコグループ スマートエコ・デザインチーム
2018年にアミタ株式会社へ入社。環境業務全般のコンサルティングを実施。製造業を中心とした廃棄物管理のマネジメントシステムの導入支援、廃棄物リサイクルルートの構築支援等、幅広いソリューション提案を行う。
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