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トラック業界の現状と課題、排出事業者への影響は?

トラック業界は近年、人手不足が深刻化しています。これらは、産業廃棄物の排出事業者にとっても他人事ではありません。例えば、ドライバーの数が減ったことにより、以前のような頻度で収集運搬の手配ができず、廃棄物を指定外の置き場所に仮置きした結果、保管基準違反に問われたという話もあります。トラック業界の現状を把握し、今後排出事業者側にどのようなリスクが発生するか考えてみましょう。

トラック業界の現状と課題

① 低賃金・長時間労働

厚生労働省の統計によると、道路貨物運送業の賃金水準は全産業平均に比べて低い水準で推移しています。またその一方で、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比較して長時間となっています。

190312_image01.png

資料:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より

② 中高年層に依存する就業構成比

190312_image02.png総務省のデータを元にした道路貨物運送業の就業者年齢構成図を見ると、2017年において40歳未満の若い労働者の比率は全体の約28%であることが分かります。一方、50歳以上が約40%を占めるなど、トラック運送業を含む道路貨物運送業は、中高年層の労働者に依存しているといえるでしょう。若い労働力の不足、ドライバーの高齢化は今後も大きな課題になると予測されます。

資料:総務省「労働力調査」より、全日本トラック協会が作成

③ 不安定な燃料価格

事業用トラックの大半は、燃料として軽油を使用しています。国内の軽油価格は、近年の原油価格の大幅な変動とともに大きく変化しています。安定しない燃料価格では、事業の収支計画が立てにくいという課題もあるでしょう。

190312_image03.png資料:全日本トラック協会調べ (注):消費税抜き。 平成 18 年と19 年は年度平均。

④ マンパワーに依存する産業構造

190312_image04.png全日本トラック協会が公表する経営分析報告書によると、トラック運送業は典型的な「労働集約型産業※」であり、運送コストのうち人件費の比率が最も高いということが分かっています。さらに昨今の運転者不足も加わり、営業費用における人件費の割合は平成28年度の調査で、全国平均39.6%と直近3年で最も高くなっています。
今後、AIのさらなる発展や、自動運転技術の進化によって、コスト削減や効率化の恩恵を受ける可能性はありますが、昨今のIT化による恩恵は受けにくい産業構造といえるでしょう。

※事業活動における主要な部分を人間の労働力に頼っている産業のこと

このようにトラック業界は、人に依存している産業構造であるにもかかわらず、人が集まりにくいという課題を抱えています。

資料:全日本トラック協会「経営分析報告書平成28年度決算版」

排出事業者に起こる廃棄物の引き取り手配のリスク

トラック業界の現状から、今後排出事業者に起こるリスクをみると、これまでのような収集運搬手配が困難になることが予測されます。
下記に想定される具体的な事例を紹介します。

  • 想定される事例① 排出事業者A

順調な生産活動によって、通常より多くの産業廃棄物が発生。
廃棄物の保管量が8割を超えたため、収集運搬会社に最短での収集を依頼した。

状況 収集運搬会社の車両は余っているが、ドライバー不足により収集することができない。また翌月の予定は、既に他の排出事業者の収集で埋まっている。
結果 収集運搬会社の手配が、1か月後になった。その間、指定された保管場所以外に、廃棄物を仮置きしていた。
発生した問題 保管基準違反に問われた。

  • 想定される事例② 排出事業者B

普段から廃棄物を委託している収集運搬会社で、多数のドライバーが退職。
収集運搬会社は、事業の方向転換を余儀なくされ、遠方の運搬を中止し、近隣運搬のみに切り替えた。

状況 排出事業者Bの廃棄物受け入れ先が遠方だったため、新たな収集運搬会社を探す必要が発生した。
結果 新たに契約した収集運搬会社が、排出事業者Bから発生した廃棄物を取扱いできる許可をもっていなかったが収集運搬を行った。
発生した問題 廃棄物処理法違反に問われた。

どのように防ぐか?対策方法のご紹介

では、これらの事態を防ぐために、排出事業者はどのような対策をとればよいのでしょうか。
その一例をご紹介します。

  1. 複数の収集運搬会社を手配できる体制を整えておく
    前述の事例からも、緊急時に収集運搬会社を探すことはリスクを伴います。
    平常時に複数の収集運搬会社が手配できる体制を整えておきましょう。その際、年に数度は、普段使用していない方の収集運搬会社にも依頼するとよいでしょう。排出事業者は、収集運搬会社の車両や、運搬容器、積み替え保管施設を確認し、適正に処理されているかを確認する必要があります。その状況を普段から把握していない収集運搬会社だと、思わぬ時間がかかることもあります。

  2. 収集運搬会社と上手くコミュニケーションを図る
    委託先にコスト削減や作業の負荷を押し付ける等、一方的な要求を行っていませんか。
    収集運搬会社は、自分たちに代わって廃棄物を処理してくれるパートナーです。互いの現状をしっかり把握し、それぞれ同じビジョンや目標を共有し、日ごろから課題や事情を本音で話し合える関係性を築いていきましょう。
    この機会に、一度、現在取引のある収集運搬会社の状況を確認してみましょう。
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執筆者プロフィール(執筆時点)

桂山詩帆(かつらやま しほ)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ カスタマーホスピタリティ 西日本チーム

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