Q&A
代替フロン(HFC)の課題と今後の展望(低GWP化)について
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オゾン層破壊を防止するため、排出等の規制が進む、特定フロン(CFC、HCFC)。これらに代わって、利用されるようになったのが、R410A、R404Aといった冷媒ガス「代替フロン(HFC)」です。
しかし、代替フロンに転換されることで、オゾン層破壊については一定の抑止成果が見られたものの、今、新たな問題点として、代替フロンの温室効果への影響が非常に強いことが判明しています。企業は今後、どのように対応すべきでしょうか。
一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構(JRECO)の山本氏に解説いただきます。
参考情報
フロン排出抑制法に関しては「改正フロン排出抑制法(2020年4月1日施行)ポイント解説!」をご覧ください。
対応事項に関しては「改正フロン排出抑制法、対応事項を一覧でまとめて紹介【機器管理編】」「改正フロン排出抑制法、対応事項を一覧でまとめて紹介【機器廃棄編】」をご覧ください。
まずは、おさえておきたい!フロンガス規制の流れ
(CFC→HCFC→代替フロン(HFC)へ)
オゾン層破壊の原因となるため、排出規制が進んでいるのが冷媒に利用されるフロン類です。「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(以下、オゾン層保護法) によって、クロロフルオロカーボン(以下CFC)は1995年末に、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下HCFC)は2019年末にそれぞれ補充用の生産・輸入が全廃と規定されています。
(出展:経済産業省 オゾン層保護等推進室 環境省 フロン対策室
「フロン排出抑制法 説明会資料 2015年度」より)
- クロロフルオロカーボン(CFC)
CFCは、1920年代に米国で開発され、1960年代以降、先進国で急激に消費が増えたフロン類です。20世紀最大の発明の一つとされていますが、その理由はそれまで冷媒に使われていたアンモニアや亜硫酸ガスには毒性・可燃性があったのに対して、CFCは無害・無臭・不燃だったためです。
しかし、この夢の冷媒も1.その分子構造上に塩素を有していること、2.物質的に安定しているため、排出されたCFCが成層圏まで上昇してしまうこと、の2点から、オゾン層を破壊するという大きな問題を抱えることになりました。このままCFCを使い続けると、地球規模での環境悪化となるため、1978年から1979年にかけて、米国、日本、欧州がCFCの生産凍結を計画し、オゾン層破壊係数の小さいハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)へ転換することになりました。 - ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
上記、CFCに代わって登場したHCFCですが、こちらも僅かではありますが、オゾン層を破壊する原因物質でした。そのため、「モントリオール議定書」(1987年採択)にて、CFCに続き、HCFCも段階的削減が合意事項とされています。 - ハイドロフルオロカーボン(以下HFC)
上記、HCFCに代わる物質として、塩素原子を有せずオゾン層を破壊しないハイドロフルオロカーボン(以下HFC)が開発され、国内では "代替フロン"と呼ばれています。その名称から一部で、HFCはフロン類ではないと誤解が生じることもありますが、HFCもフロン類となりますので、注意が必要です。
今後は、地球温暖化係数(以下、GWP)が低い新しい冷媒に転換していく必要があります。詳細は後述します。
知らないと怖い!フロン類の全廃と機器入れ替えに関する注意点
HCFCは、前述の通り2020年以降に、補充用の生産・輸入が全廃されます。しかし、ここで注意したいのは、法的には2020年以降にHCFCを使用してはいけないという定めがない点です。全廃されるのは、あくまで生産と輸入であり、使用は禁止されていません。(オゾン層保護法 第4条、第11条)
そのまま使い続けたり、整備時に補充する冷媒について、再生冷媒を利用したりしても、法的には問題がありません。そのことは「フロン排出抑制法」にて、再生業を法的に国が認可していることにもあらわれています。
(なお、CFCも同様に、1996年以降の補充用の生産・輸入が全廃されていますが、使用は禁止されていません。)
また、最近「2020年以降にR22(HCFC一種)の使用は禁止されるとの説明から、機器の入れ換えを迫られた」という話が多くなっているようです。決してそのようなことではありません。環境省も注意喚起を行っていますので、下記の情報をご参照ください。
環境省Webサイト |
ただし、R22使用機器は古いタイプも多く、省エネ性などを考慮されたうえで最新の機器への買い換え計画などの検討も必要です。また、オゾン層破壊の一因であることは変わりないため、使用が法的に禁止されていないとは言え、企業はフロン排出法に基づいた適切な管理と、排出を抑制する方法を検討していく必要があります。
代替フロン(HFC)について、企業は何ができるか?低GWP化の動向について
代替フロン(HFC)について企業は、現在使用している機器はフロン排出抑制法に従い、フロンの漏えい防止等、適切な管理を行うことが求められています。更に、新規または機器を更新する場合はHFCの温室効果が高いことを受けて、温室効果の低い冷媒への転換(冷媒の低GWP化)が求められています。
温室効果が低い冷媒の具体例には、以下の6点が挙げられます。ただし、現状としては燃焼性があったり、機器のコストアップにつながったりと、容易に転換できない状況が続いています。今後の技術開発が期待されます。
▼温室効果が低い冷媒の例
冷媒 | 主な機器 | 概要 |
HFO |
一般空調のターボ冷凍機など | フロン排出抑制法のフロン類に該当せず、温室効果が低いことで、最も注目されている代替物質。現在、ターボ冷凍機などで、冷媒として採用の検討がされている。ただし利用においては、冷媒のコストと微燃性への対策が必要となる。 |
CO2 (二酸化炭素) |
低温用の冷蔵設備など |
転換可能だが、圧力が高いため、あまり普及が進まず。 |
NH3 (アンモニア) |
低温用の冷蔵設備など | 転換可能だが、毒性が高いため、安全性の面から普及が進まず。 (毒性に対しては、CO2を組み合わせた冷媒などがあるが、対策が必要となり、機器のコストアップにつながる) |
Air (空気) |
超低温用の冷蔵設備など | 転換可能だが、用途が-60℃以下に限定されるため、普及が進まず。 |
HC (可燃性ガス) |
- | 転換が難しい。エアコンなどへの転換が検討されたが、可燃性が高いため、現在、転換が難しいとされている。 |
Blend | 一般空調、冷蔵設備 | 代替フロンHFCと、温室効果の低いHFO、CO2を混ぜ合わせたもの。 代替フロンをそのまま利用する場合に比べ、温室効果は低くなるが、フロン排出抑制法では代替フロンに分類される。 |
(一般財団法人日本冷媒・環境保全機構が作成)
最後に
社会生活を営むうえで冷凍空調機器の存在は不可欠です。企業活動においても極暑の時期にエアコンがなかったことを想像はできません。そして我々は当たり前のようにその恩恵を受けています。ただし、忘れてならないのは、その機器の中には冷媒としてのフロン類が入っていることです。
フロン類の排出削減に向けて、まずは「フロン排出抑制法」を遵守すること。すなわち、法に従い機器使用時の守るべき基準と機器廃棄時には必ずフロンを回収して行程管理制度を遵守することが、重要となります。また、冷媒の低GWP化についても、最新の情報に注意をしましょう 。
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お問い合わせ先:一般財団法人日本冷媒・環境保全機構 |
執筆者プロフィール
山本 隆幸(やまもと たかゆき)氏
一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構
企画・調査部
早稲田大学社会科学部を卒業して、住宅関係企業で30数年勤務した後に、JRECOに就職する。前職では、個人の夢や希望をかなえる仕事に従事しておりましたが、これからの将来を考えたときに「子どもや孫への環境をどのように維持していけるのか」を考えて、現職に就くことを決め、今日に至る。
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