Q&A
環境省が語る!廃プラスチックの今後の方向性
世界で1950年以降に生産されたプラスチックは83億tを超え、うち63億tがごみとして廃棄されています。そして、これらのリサイクル率は9%にすぎません。回収されたプラスチックごみの79%が埋立、あるいは海洋等へ投棄されています。
現状のペースでは、2050年までに120億t以上のプラスチックが埋立・自然投棄されるとされ、環境汚染が深刻化しています。
これに対して、中国における廃プラスチックの輸入禁止措置やEUのプラスチック戦略をはじめ、世界各国ではプラスチックの資源循環への関心が高まっています。日本ではどのような取り組みを進めていくのでしょうか。環境省 環境再生・資源循環局より小岩氏をお招きし、国内における廃プラスチックの今後の方向性を伺いました。
※本記事は、アミタ(株)主催セミナーにおける小岩氏のご講演内容やご提供いただいた資料をもとにアミタ(株)の見解をまとめたものです。
目次 |
日本の廃プラスチックの現状
日本の廃プラスチック発生量は940万t/年で、全廃棄物の約2%を占めています。なお、2013年時点では、リサイクル率が約25%、熱回収率が約57%、未利用・焼却埋め立てが約18%となっています。
関連記事:廃プラスチック類の日本国内における年間排出量と処理能力は?
中国の廃プラスチック輸入禁止措置以前に日本が中国に輸出していた廃プラスチックは約150万t/年とされています。現在は、中国の廃プラスチックの輸入禁止措置を受けて、タイなどの東南アジア諸国へと輸出先が変更されていますが、これまでの輸出量に見合う規模ではありません。今後、国外に輸出していた廃プラスチックの処理について、国内で資源循環する仕組みを考える必要があるのです。
▼中国の廃プラスチック輸入禁止措置への対応
(出典:環境省 環境再生・資源循環局より)
関連記事:中国・東南アジアの廃プラスチック類輸入規制の最新動向は?
外国政府の輸入規制等による国内の動向は?不適正処理事案の発生が懸念
中国の廃プラスチック輸入禁止措置に伴い心配されたのが、国内での不法投棄等の問題です。環境省では、国内の状況を把握し廃棄物の適正処理を推進するため、都道府県等及び廃棄物処理業者に対し、外国政府による廃棄物の輸入規制等による影響等についてアンケート調査を行いました。(2018年8月に実施、10月18日に公開)
この調査では、外国政府の輸入規制等の影響による廃プラスチック類の不法投棄は、アンケートに回答した自治体では確認されていないことが明らかになりました。しかし、一部地域において上限超過等の保管基準違反が発生していること、一部処理業者において受入制限が実施されていることから、今後、廃プラスチック類の適正処理に支障が生じたり、不適正処理事案が発生する懸念があるとされています。
緊急対策!環境省が行う取り組みとは?
環境省では、国内資源循環体制の整備を後押しするため、緊急的な財政支援制度を2017年11月に創設しました。国内資源循環のためのリサイクル高度化設備の導入に対する国庫補助として、施設整備費の1/2を補助するものです。対象者の制限はなく、排出事業者、リサイクル事業者、コンパウンド業者、成型業者も対象です。この予算規模は、2017年の4億円から、2018年には15億円にまで拡大しています。
その他、外国政府の輸入規制等に対する環境省の今後の対応は、以下の通りです。
- 外国政府の動向も踏まえながら、廃プラスチック類の処理のひっ迫状況や不法投棄等に関する実態把握及び自治体を含めた情報共有を進めていく。
- 公共関与型の産業廃棄物処理施設、大規模な処理施設等の既存施設の更なる活用や、 関係団体との協力により不適正な事案の発生時も即時に対応が可能となる体制の構築を検討。
- 廃プラスチック類のリサイクル施設等の処理施設の整備を速やかに進め、国内資源循環体制を構築。
- 2019年6月までに策定予定の「プラスチック資源循環戦略」に基づき、プラスチックの資源循環を促進。
(出典:環境省:「外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果 (概要版)」より)
関連記事:廃プラスチック類に対する日本国内の3つの対策とは?
2019年6月までに策定!「プラスチック資源循環戦略」の重点戦略とは?
現在、策定中の「プラスチック資源循環戦略」。2018年11月には案が発表されており、その重点戦略の1つとして「資源循環」が掲げられています。今回はその具体的内容の一部をご紹介します。
【リデュースの徹底、環境配慮設計に関する取り組み】
日本は、ワンウェイの容器包装廃棄量(一人当たり)が世界で2番目に多いと指摘されていることから、これらの削減に取り組むとしています。
具体的には、リデュースの取り組みの他、モノのサービス化、シェアリングエコノミー、修繕・メンテナンスなどによる長寿命化、再使用など、技術・ビジネスモデル・消費者のライフスタイルのイノベーションを通じた取り組みも想定されています。
今後も商品だけではなく、ビジネスモデルそのものの環境配慮設計が進められていくと考えられます。
【再生材・バイオプラスチックの利用促進】
製品のプラスチック使用量の削減はもちろんですが、プラスチック再生材市場を拡大していくこと。また、近年、再生可能な有機資源を原料にして作られる「バイオマスプラスチック」や微生物の働きにより分解される「生分解性プラスチック」といった「バイオプラスチック」の実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進を図るため、以下に取り組むとされています。
- リサイクル等の技術革新やインフラ整備支援を通じて利用ポテンシャルを向上させる
- バイオプラスチックについては低コスト化・高機能化や、特に焼却・分解が求められる場面等への導入支援を通じて利用障壁を引き下げる。
- グリーン購入法等に基づく国・地方自治体による率先的な公共調達、リサイクル制度に基づく利用インセンティブ措置、低炭素製品としての認証・見える化、消費者への普及促進などの総合的な需要喚起策を講じる。
- 環境/エシカル的側面、生分解性プラスチックの分解機能の発揮場面(堆肥化、バイオガス化等)やリサイクル調和性等を整理しつつ、用途や素材等にきめ細かく対応した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、導入を進めいく。 等
さらに、平成28年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」においても、
バイオマスプラスチック類の利用促進によって、廃プラスチックの焼却 に伴うCO2排出量(廃プラスチック中の石油起源の炭素に由来するCO2) の排出を抑制する方針です。
具体的な導入の目標は下記です。2013年時点は7万tであったバイオマスプラスチックの国内出荷量を、2030年には197万tにするとしています。
▼「地球温暖化対策計画」バイオマスプラスチック類の普及について
(出典:「地球温暖化対策計画(平成28年5月13日閣議決定)」より)
関連記事:プラスチックごみ問題と向き合うために必要なこと-コンプライアンスだけで十分なのか?
関連情報
お問い合わせ
講師プロフィール
小岩 真之(こいわ まさゆき)氏
環境省 環境再生・資源循環局
廃棄物規制課 総括補佐
災害廃棄物対策室 災害廃棄物対策官
2001年環境省入省。環境影響評価課、化学物質審査室、中部地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課、災害廃棄物対策室、循環型社会推進室等を経て、2018年7月より現職。
執筆者プロフィール(執筆時点)
井口 真理子 (いぐち まりこ)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム
「持続可能な社会の実現」というミッションに共感し、合流。
現在は、グループの広報やマーケティング業務を通じて、アミタへの共感やアミタの周知活動を行っている。
おすすめ情報
お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧
- なぜESG経営への移行が求められているの?
- サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
- 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
- アミタのサービスを詳しく知りたい
アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード
資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。