Q&A
CDPフォレストとは何ですか?企業の参加状況やメリットは?
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「Carbon Disclosure Project(以下、CDP)」は、2000年にイギリスで設立され、東京にも支部を持つ国際NGOです。企業が環境情報を測定し、開示し、管理するためのプログラムを提供しています。これらは、企業の環境への取り組みを投資や取引の評価基準にしたいという、機関投資家や企業、政府から支持を得ています。「CDPフォレスト」はこのうち、森林に関する情報開示要請プログラムです。
そもそもCDPとは?
CDPは重要な環境情報の開示を企業に要請することに賛同する「署名投資家」を募り、投資家の代わりに世界中の企業に質問書を送付、情報開示を要請します。このデータを収集・発信することで、企業に情報の透明性を求めます。2017年時点で、800以上の機関投資家がこれらに参加しており、これらの署名投資家たちの運用資産総額は100兆米ドルになると言われています。
上記のプロジェクトとしては現在「気候変動」「ウォーター」「フォレスト」「シティ」「サプライチェーン」の5種類があります。「CDPフォレスト」は、2013年から開始された最も新しいプログラムで、木材・パーム油・畜牛・大豆に関連する事業を行う企業が対象です。
世界の署名投資機関数15年で23.6倍! 日本でも半数以上の企業が回答!
CDP署名の投資機関数は、2002年の第一回調査時点では35件であったが、(当時実施していたのは「気候変動」プログラムのみ)、2016年には827件にのぼり社を超える企業が回答しています。これらの企業は、全世界の株式市場の時価総額の約60%を占めており、その影響の大きさが伺えます。
CDPへの日本企業の回答数も、2010年には214社(回答率43%)と半数以下であったのが、2017年には283社(回答率57%)に増加しています。
CDPフォレストには2017年時点で、世界の企業211社が回答しており、その内日本企業は34社になります。GoogleファイナンスやMSCIなど、主要な株式情報提供サービスには、CDPへの回答が多く利用されており、投資家の投資判断に用いられています。
▼日本企業の一覧(2017年 質問書) *自主回答企業
A | 花王(A-)、住友林業(A-)、積水ハウス(A-) |
B | 味の素、コクヨ *、資生堂、積水化学工業、双日、大成建設、大東建託、大日本印刷、タナックス * 、凸版印刷、日本製紙 、マツダ、丸紅、三井物産、三菱商事、レンゴー、ユニ・チャーム(畜牛品プロジェクトはB-) |
C | 伊藤忠商事、王子ホールディングス、鹿島建設、スズキ、住友ゴム工業 *、東洋製罐グループホールディングス *、豊田通商、長瀬産業、日本ハム、ポーラ・オルビスホールディングス |
D | いすゞ自動車、SUBARU(D-)、不二製油グループ本社 |
F | アインホールディングス 、青山商事、アシックス、ADEKA、飯田グループホールディングス 、イズミ、伊藤ハム米久ホールディングス 、イオン、エイチ・ツー・オー リテイリング、江崎グリコ、エービーシー・マート、大林組、カゴメ、カルビー、関西電力、キッコーマ 、キユーピー、コーセー、コスモス薬品、小林製薬、五洋建設、島忠、しまむら、清水建設、JAグループ、J.フロント リテイリング、すかいらーく、スギホールディングス、住友商事、西武ホールディングス、セブン&アイ・ホールディングス、セリア、ゼンショーホールディングス、高島屋、ダイセル、ツルハホールディングス、東洋水産、戸田建設、トヨタ自動車、ドンキホーテホールディングス、西松建設、ニチレイ、日油、日揮、日産自動車、日清オイリオグループ、日清食品ホールディングス、日清製粉グループ本社、日清紡ホールディングス、NIPPO、ニトリホールディングス、日本水産、日本たばこ産業、ハウス食品グループ本社、長谷工コーポレーション、阪和興業、ピジョン、ファーストリテイリング、本田技研工業、前田建設工業、マツモトキヨシホールディングス、丸井グループ、マルハニチロ、三越伊勢丹ホールディングス、三菱自動車、明治ホールディングス、森永製菓、森永乳業、ヤクルト本社、山崎製パン、大和ハウス工業、雪印メグミルク、ユニー・ファミリーマートホールディングス、ライオン、リゾートトラスト、良品計画、ローソン、ワコールホールディングス |
SA | (グループ親会社により回答)日本マクドナルドホールディングス |
CDPフォレストの質問内容は?
質問書の内容は大きく6項目あります。具体的には以下の通りです。
現在の状況 | F1. 背景 |
リスク評価 | F2. リスク評価 |
影響 | F3. リスク F4. 機会 |
測定・モニタリング | F5. 測定 F6. トレーサビリティ |
対応 | F7. ガバナンスと成長戦略 F8. 方針 F9. 基準と目標 F10. 協働 |
課題 | F11. 障害・課題 |
特に注目したいポイントは、以下の2点です。
- バリューチェーンの中での自社事業の位置づけを明確にした上で、回答が求められていること
自社が<原材料の生産・加工・取引・製造・販売>のどの位置に該当するかを選択する項目があり、その上で、それぞれ下記を重視した質問に回答します。
・<原材料の生産~取引>に関わる企業:原材料の生産地の状況を直接的に把握しているかどうか
・<製造~販売>に関わる企業:原材料の生産地の状況を考慮した調達をしているかどうか - 排出"量"だけでなく、管理体制や削減についても質問があること
上記の項目を見ても明らかなように、森林への影響やその測定だけでなく、方針や協働といった企業姿勢、ガバナンス体制についても問われる内容となっています。具体的な設問としては「原材料の調達基準を設けているか」「サプライヤーとリスク管理のため協働しているか」等があります。
評価基準は?回答・結果は公開されるのか
全企業の評価は一般に公開され、A評価を獲得した企業は「先進企業」に認定されます。
評価基準は以下の通りです。
評価 | レベル | 発揮が期待される内容 |
(A, A-) | リーダーシップ | 森林伐採リスクをどのように解決できるか |
(B, B-) | 管理 | 自社が森林伐採リスクやその影響をどのように管理しているか |
(C, C-) | 認知 | 森林伐採リスクが自社にどのような影響をもたらすか |
(D, D-) | 透明性 | 現状の把握 |
2017年、A評価を取得した日本企業は「住友林業」「積水ハウス」「花王」「大日本印刷」の4社でした。
なおAランクに組み入れられるためには、回答内容の公開が必須とされています。
森林保全のために、企業が取り組むべきこと
森林伐採防止に尽力しようとする企業の取り組みとして、CDPフォレストでは以下が提唱されています。
- グローバルなサプライチェーンから商品関連の森林伐採を排除する公約を行う。
- 堅牢なリスクアセスメントを通じて、さらされている森林伐採リスクを特定する。
- 公約を具体的、暫定的な一連の目標に落としこむ。
- 認証、トレーサビリティ、サプライチェーン・エンゲージメントを通じて、事業活動への適用を広げていく。
- 商品関連の森林伐採への取り組みにおいてリーダーシップを発揮し、多数の機会を得る。
参照:CDP「CDP フォレスト 2017 ジャパンフォーカス」
さいごに
森林保全の必要性については、SDGsでも項目15(持続可能な森林管理)として明示されています。
今回取り上げたCDPフォレストでは「情報開示」ではD評価であり、A評価では「リーダーシップ」の発揮が求められています。このように、企業は森林保全に対して、より積極的で、実質的な問題改善に即した活動が求められています。そして、CDPにおける投資機関数の増加を見ると、サステナブル社会構築に向けた投資市場は拡大していると言えます。
企業としては、この機運を逃さず、自社の事業範囲だけでなくサプライチェーン全体、ひいては業界全体に働きかけていく存在として、企業価値を高めていきたいところです。
関連情報
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執筆者プロフィール
西島 有紀(にしじま ゆき)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム
社会的事業や非営利団体を支援する(公財)信頼資本財団の事務局スタッフとして活動後、アミタに合流。現在は、持続可能社会への希望や共感といった無形の"想い"を、未来づくりの"資本"に変えていく共感資本チームにて、広報業務を担当。
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