Q&A
マルポール条約の改正で船内廃棄物の規制が強化されると聞いたのですが、本当ですか?
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はい。改正された条約が2018年3月1日に発効したことに対応して、海洋汚染防止法施行規則も同日改正されました。骨子としては、1) 穀類を除くばら積み貨物について貨物が海洋環境に有害かどうかの基準が追加、2)荷送人は貨物が海洋環境に有害かどうかを船長に情報提供することの2点です。原料や製品の入出荷、廃棄物の運搬で船舶を使用する場合は注意する必要があります。
マルポール条約とは?国際条約により船内廃棄物の海洋投棄は原則禁止!?
マルポール(MARPOL)条約(正式名称:1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書)は、船舶の航行や事故による海洋汚染を防ぐために締結された国際条約です。日本は1983年に加入し、国内関係法には海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)があります。
マルポール条約は本文および6つの附属書から構成されています。貨物残渣など船舶から排出される廃棄物(船内廃棄物)については附属書V「船舶からの廃物による汚染の防止のための規則」に定められています。
マルポール条約附属書の種類
附属書 I | 油による汚染の防止のための規則 |
附属書 II | ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則 |
附属書 III | 容器に収納した状態で海上において運送される有害物質による汚染の防止のための規則 |
附属書 IV | 船舶からの汚水による汚染の防止のための規則 |
附属書 V | 船舶からの廃物による汚染の防止のための規則 |
附属書 VI | 船舶による大気汚染防止のための規則 |
出典:国土交通省港湾局 港湾における船内廃棄物の受入に関するガイドライン(案)より
附属書Vは頻繁に改正されており、前回は2011年7月に改正、2013年1月に発効されました。
2011年7月の改正では、海洋環境に有害(Harmful to the Marine Environment;以下HME)でないと認められる一部の廃棄物を除き、船内廃棄物の海洋投棄が原則禁止となりました。
▼2011年改正の詳細についてはこちら
マルポール条約の改正により、船で廃棄物を運搬した後に出る貨物残渣は、船会社が排出事業者になるって本当ですか?
条約の改正に合わせて国内関係法も改正が進む!
2016年10月に開催された第70回海洋環境保護委員会(MEPC70)で附属書Ⅴの改正案が採択され、2018年3月1日に発効されました。また、マルポール条約の改正にあわせて海洋汚染防止法についても改正が進んでいます。
附属書Vに関する海洋汚染防止法の改正の骨子は次のとおりです。
- 貨物残渣に関わるHMEの判断基準の追加
- 貨物がHMEに該当するか否かの情報を船長に提供することの義務付け
それぞれの詳細は、下記です。
- 貨物残渣に関わるHMEの判断基準の追加
今回の改正において、HMEの判断基準に下記の3.から6.が追加されました。
基準の詳細については、2018年3月1日に国土交通省より「固体ばら積み貨物の海洋環境有害性に関する判定マニュアル」が公開されています。
- 水性環境有害性(急性毒性)
- 水性環境有害性(慢性毒性)
- 発がん性
- 生殖細胞変異原性
- 生殖毒性
- 反復暴露特定標的臓器毒性
- 合成高分子
- 貨物がHMEに該当するかの情報を船長に提供することの義務付け
穀類を除くばら積みの固体貨物の荷送人は、船積みの前に、貨物がHMEに該当するか否かの情報を船長に提供することが義務付けられました。
参照:平成30年2月15日国土交通省令第八号
荷送人に必要な対応とは?
荷送人はまず、貨物がHMEに該当するかどうかを、適切に判定しなければなりません。『SDS』(安全データシート)や『WDS』(廃棄物データシート)を用いて、HMEに該当するか否かを明確にする必要があります。上述のマニュアルを一度確認することをお薦めします。また、自社が直接荷送人にならない場合でも、サプライチェインの工程によりSDSやWDSを求められる場合があることは覚えておいた方がよいでしょう。
貨物残渣は船舶運航事業者の廃棄物となり、廃棄物処理法に則って適正に処理することが求められます。判断に迷った時は、管轄行政である国土交通省海洋政策課まで問合せるとよいでしょう。
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執筆者プロフィール
出口 庸平(でぐち ようへい)
アミタ株式会社
カスタマーホスピタリティグループ 西日本チーム チームリーダー
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