Q&A
リマニュファクチャリング(使用済み製品の再生)とは何ですか?
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リマニュファクチャリングとは、メーカー等が使用済み製品を回収した後、分解、洗浄、部品交換などを経て新品同様の製品として販売することをいいます。事業によっては、製品の一部を交換して製品を作りなおす場合もあれば、廃棄製品の使用できる部分だけを新たな製品の中に組み込むこともあります。これらの取り組みは、EUの環境資源政策における最重要キーワード「サーキュラー・エコノミー」の事業モデルの一つです。今回は、企業の取り組み事例を交えながら、詳しく解説します。
※サーキュラー・エコノミ―に関する解説記事はこちら
リマニュファクチャリング事業の事例と取り組みのメリットについて
具体的に企業はどのような取り組みを行い、どのようなメリットを得ているのでしょうか。下記の取り組みが例として挙げられます。
▼リマニュファクチャリング事業の例
- コマツ(株式会社小松製作所)(リマン事業)
コマツグループは、エンジンやトランスミッションなどの使用済みコンポーネント(部品)についてリマニュファクチャリングを行っており、世界12拠点に専用の工場やセンターを設置し、グローバルに事業を展開しています。これらの事業は「リマン」と名付けられており、新品に比べ割安で提供されているほか、顧客に対して資源の節約、廃棄物の削減などのメリットを生み出しています。発表によると、同社のリマン品の取扱高は急速に伸びており、2016年には2004年と比較して約3.5倍にも成長しています。
また、ICタグや2次元コードを利用してリマン品の再生履歴管理を行うことで、品質管理や耐久情報の把握に成功しており、最適な寿命を持つ部品を開発する上で、重要なフィードバックを得ているとのことです。
【参考ページ】コマツウェブサイト「リマン事業の展開」
リマン事業の工程図(コマツウェブサイトより)
- キャタピラー社(リビルドプログラム)
キャタピラー社は、顧客が新製品を購⼊する数分の1の費⽤で製品をオーバーホール(分解点検修理)やアップデートすることで、製品の耐⽤年数を延⻑させることに成功しています。これらの取り組みは「リビルドプログラム」と呼ばれており「顧客の所有コストを最⼩限に抑える」「素早い部品供給によって休⾞時間を短縮する」といったサービス向上にもつながっています。
リマニュファクチャリングの実践には品質が担保できるかという懸念がありますが、新製品と同様の品質を担保するために350を超える試験と検査を実施するほか、作業担当者に純正装置と部品を採⽤するためのトレーニングを実施するなどの⼯夫がなされています。リビルドプログラムで作られた部品はリマン部品と呼ばれ、世界中に供給されており、同社はこれらの取り組みによってライフサイクル全体を通じて製品を考慮し、地域社会、環境、経済のサステナブルな発展を達成するとしています。
日本国内でも取り組みが進んでおり、国内でキャタピラー社製の建設機械・ディーゼルエンジン等の販売・サービスを手掛ける日本キャタピラーでは、リマン部品に対し新品部品と同様に部品保証を付け、顧客の車両を修理する際に使用する取り組みが行われています。
また2018年度には、日本国内で同社初のリビルドセンターの設立が予定されています。当センターでは、日本国内で依頼されたエンジン等のオーバーホールや、キャタピラー社が作成していない部品についてもリマン部品の製作などが実施される予定です。これらは顧客のランニングコスト低減や、環境保全に寄与することが狙いとのことです。
【参考ページ】キャタピラー社ウェブサイト:「循環型経済」
上記から、リマニュファクチャリングには資源の節約だけでなく、以下のメリットがあるといえるでしょう。
▼リマニュファクチャリング実施のメリット
- 原材料から同じ製品を作る際と比べ、消費エネルギーや原材料費率を大幅に削減できる
(顧客も製品を利用することで、資源消費の抑制や廃棄物の削減に貢献できる) - 顧客に対して割安に製品を提供できる
- 製品を販売した後も、製品使用後の回収や新しい製品の補填など、顧客との接点を継続して持つことができる
- 製品のメンテナンスを行うことで、製品開発へのヒントを得ることができる
最後に 自社にあったサーキュラー・エコノミーとは?
資源の枯渇で原材料の調達が難しくなると予想される時代の中、上記のような事業モデルは企業の有効な戦略となります。本記事では、機械業界におけるリマニュファクチャリング事業を取り上げましたが、どのようにサーキュラー・エコノミーの取り組みを実践できるかは、企業によって異なります。
たとえば、食品会社であれば、食品加工工場から排出される食品残さをメタン発酵させ、エネルギーや肥料を生み出す取り組みが考えられます。発電した電気を自社で使用できるほか、肥料は無農薬栽培の実践に有効な肥料として、地域での野菜づくりに活用できます。これらの野菜を食品加工工場で利用すれば、地域に根差した資源循環を形成することができます。
商品を製造して終わり、販売して終わりとういう一方通行のビジネスではなく、事業として商品・資源を循環させるという考え方を自社にも当てはめてみてはいかがでしょうか。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
近藤 大智 (こんどう だいち)
アミタホールディングス株式会社
環境戦略デザイングループ 西日本チーム
「持続可能な社会を実現」というアミタのミッションとその理念に共感し入社。趣味の海外旅行では思い出だけではなく、ごみ山などの環境問題などもカメラに収めながら旅をする。現在は企業の抱える環境課題の解決に向けて環境戦略の支援やコンサルティングを担当。
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