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水銀含有再生資源とは何ですか?処理委託先への情報提供や、行政への報告が必要とのことですが?

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廃棄物処理法上の廃棄物には該当しませんが、水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)上の水銀廃棄物に該当するものを「水銀含有再生資源」といい、適正な管理と報告が水銀汚染防止法で義務づけられています。そこで今回は、水銀含有再生資源の定義と管理、報告について解説します。

水銀含有再生資源、廃棄物処理法以外に適切な管理が求められる廃棄物とは?

水銀による地球規模の環境汚染を防止するため、2013年10月に採択された水俣条約。その第11条では、締約国に対し、今後水俣条約の締約国会議が採択する追加の附属書の要件に従い、環境上適切な方法で水銀廃棄物を管理することが求められています。しかし、この水俣条約の廃棄物の定義は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下、バーゼル条約)の関連する定義を引用することとしており、日本の廃棄物処理法の廃棄物に該当しないものが含まれています。このままでは、定義が異なるため適切な管理の対象とならないスキマができてしまいます。

そこで、水俣条約の発効日である2017年8月16日に水銀汚染防止法が施行され、これらの廃棄物処理法上の廃棄物に該当しない水俣条約上の水銀廃棄物を「水銀含有再生資源」として位置づけ、適切な管理を行うための措置を担保することになりました。(以下図の赤枠部分)そのため、廃棄物管理担当者は廃棄物処理法に加え水銀汚染防止法にも従い「水銀含有再生資源」 を適切に管理する必要があります。

「水銀含有再生資源」の例としては、非鉄金属製錬から生ずる水銀含有スラッジや、使用済みの水銀使用製品であって、貴金属等を回収する業者に売却する意思決定がなされているものなどがあります。これらは有価物として流通しているため、廃棄物処理法上の廃棄物には該当しませんが、水銀を含むため水俣条約上の廃棄物には該当しており「水銀含有再生資源」として、適切に扱わなければなりません。

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図:水俣条約と廃棄物処理法における廃棄物の定義
(引用)環境省:水銀による環境の汚染の防止に関する法律に基づく水銀含有再生資源の管理に関するガイドラインVer1.0よりアミタが一部改変

水俣条約上の水銀廃棄物の定義(水俣条約第11条第2項より抜粋)

「バーゼル条約の関連機関との協力の下に調和のとれた方法で定める適切な基準値を超える量の次の物質又は物体であって、処分され、処分が意図され、又は国内法若しくはこの条約の規定により処分が義務付けられているもの(以下略)」

廃棄物処理法上の廃棄物の定義(廃棄物処理法第2条より抜粋)

「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(以下略)」

詳しく知りたい!「水銀含有再生資源」の定義とは?

水銀汚染防止法上の水銀含有再生資源の定義は、以下になります。

<水銀汚染防止法第2条第2項>

この法律において「水銀含有再生資源」とは、水銀等又はこれらを含有する物(環境の汚染を防止するための措置をとることが必要なものとして主務省令で定める要件に該当するものに限る。)であって、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約附属書IVBに掲げる処分作業がされ、又はその処分作業が意図されているもの(廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)のうち有用なものをいう。

少し内容が難しいので、詳しくみていきましょう。

まず「水銀等又はこれらを含有する物(環境の汚染を防止するための措置をとることが必要なものとして主務省令で定める要件に該当するものに限る。)」とありますが、ここで言う主務省令で定める要件に該当するものとは 「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第二条第一項第一号イに規定する物(平成十年環境庁・厚生省・通商産業省告示第一号)別表第3第27号に掲げるものに該当するもの」であり、水銀を0.1重量パーセント以上含む物、核酸水銀を1重量パーセント以上含む物などがあります。詳細は以下資料のp.13になります。

参考: 環境庁・厚生省「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第二条第一項第一号イに規定する物」p13

次に「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約附属書IVBに掲げる処分作業がされ、又はその処分作業が意図されているもの」とありますが「バーゼル条約附属書IVBに掲げる処分作業」とは、以下のリサイクル目的となる処分作業をいいます。

表1 バーゼル条約付属書IV 規制する廃棄物の分類 【Bリサイクル目的】

R1 燃料、エネルギー回収 R8 触媒の成分回収
R2 溶剤の回収、再生 R9 廃油の精製再生
R3 有機物の再生、回収 R10 土壌改良
R4 金属の再生、回収 R11 R1~R10の残滓利用
R5 無機物の再生、回収 R12 R1~R11のための交換
R6 酸、塩基の再生 R13 R1~R12のための集積
R7 汚染除去のために使用した成分の回収

(出典)経済産業省:バーゼル条約・バーゼル法の概要等より

つまり、水銀含有再生資源は以下のすべてを満たすものであると考えられます。

  1. 一定量の水銀等またはこれらを含有する物
  2. リサイクル目的の処分作業がされている、又はその処分作業が意図されているもの
  3. 有用なもの(有価物等)

特に3は、廃棄物処理法の定義との兼ね合いで必要なものと考えられます。水俣条約上の廃棄物に該当しても、廃棄物処理法の定義に該当するものは 、 廃棄物処理法の規定に従って取り扱う必要があります。

何に気を付ければよいか?管理・保存について

水銀含有再生資源の所有者が「水銀含有再生資源管理者」となり、適切な処理に責任を持ちます。ちなみに水銀含有再生資源の所有者が、その管理を他者に委託した場合も、委託した者(所有者)が引き続き「水銀含有再生資源管理者」となります。あくまで所有者が責任を負いますので、委託先に対しとるべき措置について情報提供を行うことが義務付けられています。水銀含有再生資源の管理は、以下の技術上の指針を順守する必要があります。

▼管理方法について

1. 飛散流出の防止
水銀含有再生資源が飛散し、又は流出しないようにすること
2. 悪臭、騒音、振動の防止
水銀含有再生資源の管理に伴う悪臭、騒音又は振動によって生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること
3. 委託先への情報提供
水銀含有再生資源の保管、運搬又は処分作業(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約附属書ⅣBに掲げる処分作業をいう。)を他の者に委託するときは、(中略)その相手方に対し、必要な情報を提供すること
4. 譲渡先への情報提供
水銀含有再生資源を譲渡するときは、その譲渡する相手方に対し、その譲渡するものが水銀含有再生資源である旨の情報を提供すること

▼保管方法について

1. 飛散・流出の防止
水銀含有再生資源の容器は、水銀含有再生資源が飛散し、又は流出するおそれのないものとすること
2. 保管場所の表示
水銀含有再生資源の容器及び水銀含有再生資源を保管する場所に、保管するものが水銀含有再生資源である旨を表示すること
3. 鍵の備え付け
水銀含有再生資源を保管する場所に、鍵をかける設備を備えること。ただし、その場所が性質上鍵をかけることができないものであるときは、この限りでない
4. 鍵の備え付けができない場合は、堅固な柵の設置
水銀含有再生資源を保管する場所が性質上鍵をかけることができないものであるときは、その周囲に、堅固な柵を設けること
一年に一度!水銀含有再生資源の報告について

さらに、水銀含有再生資源管理者は、毎年主務大臣に対して「水銀含有再生資源管理報告書」を提出し、報告を行う義務があります。報告内容には、代表者の氏名や水銀含有再生資源の種類別の量などがあげられます。

▼報告が義務付けられている内容

  1. 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  2. 事業所の名称及び所在地
  3. 水銀含有再生資源管理者において行われる水銀含有再生資源の管理に係る事業
  4. 年度当初において管理していた水銀含有再生資源の種類別の量
    (※20178月に施行したため経過措置として、2017年度は「年度当初」ではなく「施行日」となる。)

▼水銀含有再生資源管理報告書について

報告対象期間 毎年度(毎年4月1日から、翌年3月31日まで)
(※2017年8月に施行したため経過措置として、2017年度は4月1日ではなく、施行日から翌年3月31日となる。)
提出期日 当該年度の翌年度の6月30日
単位 事業所ごと
提出書式 環境省 水銀含有再生資源の管理に係る報告様式[Word 86KB]

提出期限は、多量排出報告書などと同様に6月30日となっています。来年の報告に備えて、今から自社の所有物が、 水銀含有再生資源に該当していないか、管理・保存方法は問題がないか確認しておきましょう。

参考情報

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執筆者プロフィール

ishida_profile.jpg石田 みずき (いしだ みずき)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム

京都府出身。滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。現在は共感資本チームにて、メールマガジンの発信、ウェブサイトの運営など、お役立ち情報の発信を担当。

藤田 陽夏(ふじた はるか)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ 共感資本チーム

法学部に所属する現役大学生。
カンボジアのごみ山を見て廃棄物の社会課題に気付く。日本の環境行政や廃棄物処理やリサイクルがどうなっているかを研究テーマにしており、業務でも専門的なサステナビリティや環境関連の調査などに日々対応。

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