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「CDP気候変動レポート2019」からわかる、日本企業の取り組み状況を教えてください。

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CDP Climate Change(以下、CDP気候変動プログラム)とは、イギリスに本部を置く国際的非営利団体CDPによる、企業の気候変動リスクに関する情報公開プログラムです。2020年1月に発表された「CDP Climate Change 2019」(以下、CDP気候変動レポート2019)の情報を踏まえ、最新情報を解説します。

【関連記事】CDPとは?よくある疑問に回答! ※CDPについてはこちらの記事をご覧ください。

目次
Aリスト選出38社!2019年度の日本企業の評価について

AからDマイナスまでの8段階の評価について、2019年の結果としては、A評価が36社、A-が40社となっています。また、最高位の評価としてCDPでは調査結果より、気候変動対応で特に優れた活動を行っている企業のリストである「気候変動Aリスト」を発表しています。

世界では181社の企業が選出されていますが、その中で、日本企業の選出は38社となり、国別でみると最多の結果となっています。スコアリング対象の8,000社の内、Aリスト企業は上位2%に該当します。

▼気候変動Aリスト(2019年 日本企業38社)

セクター 企業名
バイオ技術・ヘルスケア・製薬セクター エーザイ、小野薬品工業
食品・飲料・農業関連セクター アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、サントリー食品インターナショナル、住友林業、日本たばこ産業
インフラ関連セクター 積水化学工業、積水ハウス、大東建託、大和ハウス工業、戸田建設
製造セクター 小松製作所、ソニー、トヨタ自動車、豊田自動織機、ナブテスコ、ニコン、日産自動車、パナソニック、富士電機、富士フイルムホールディングス、横浜ゴム
素材セクター 花王、住友化学、東京製鐵
小売セクター アスクル、イオン、丸井グループ、リコーリース
サービスセクター MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングス、東京海上ホールディングス、日本電気、野村総合研究所、富士通、ベネッセホールディングス
輸送サービスセクター 川崎汽船

出典:「CDP気候変動レポート2019」より、アミタ(株)作成

▼Aリストに関するデータ

200212_001.jpg出典:CDP Worldwide「CDP気候変動レポート2019」より

2019年、日本のAリスト入りは、2018年より18社増加し、1.9倍の増加という結果となっています。本レポートによれば、Aリスト選出に欠かせないリーダーシップポイントは「取締役会の積極的な関与」や「適切なリスク評価」「シナリオ分析結果の事業戦略への反映」「排出量に関する野心的な目標の設定」「排出量に関する第三者検証の受験」など、各種基準が満たされていないと得点ができないとされています。また、これらの結果は「日本において、TCFD提言の推奨開示項目への対応や、気候変動に関する課題への取り組みを進める企業が確実に増加している成果といえる」と述べられています。

日本企業の取り組み状況について―取締役会の関与、シナリオ分析、SBT設定が進む

2019年の調査報告の中から、注目したいトピックスについてご紹介します。

  • ガバナンス

「取締役会の気候変動関連課題への監督」という問いに対しては、92%の企業がYesと回答する結果となりました。さらにその頻度が「全ての会議」と回答した企業の割合は25%であり「計画された、いくつかの会議」と回答した企業は55%となっています。このことから、「80%の企業が取締役会で定期的に気候変動問題を議論している」と本レポートでは述べられています。

▼ガバナンスに関するデータ

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出典:CDP Worldwide「CDP気候変動レポート2019」より

  • 戦略・シナリオ分析

気候変動関連シナリオ分析は、TCFD勧告に基づき、2018年から新たに質問事項に加えられており、日本でもシナリオ分析の実施が企業の関心を集めています。ビジネス戦略に気候変動のシナリオ分析を用いているかという問いに対しては、全回答企業中の約半数を超える53%が定性的ないし定量的のどちらか、もしくはその両方を用いていると回答しています。2年以内に実施を行うと回答する企業は、34%となっています。また複数シナリオによる分析が進んでいることもわかります。

▼シナリオ分析に関するデータ

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出典:CDP Worldwide「CDP気候変動レポート2019」より

関連記事】TCFDが求めている「シナリオ分析」とは、何のために行うものですか。どのように対応すればいいのでしょうか。

  • 温室効果ガス排出削減目標(SBTの設定や長期目標の策定状況)

Scope1、2の排出量削減目標に関しては、総量目標の設定企業においては40%の企業が科学的に根拠に基づく排出削減目標(SBT)を持っていると回答しています。これは2018年の38%よりさらに増加し、2017年の16%から2.5倍の企業数となっています。また、別の目標でSBTを持っている企業は8%、もしくは現状SBTでないものの2年以内に設定する予定とした企業は36%となっており、多くの企業がSBT設定に前向きな姿勢を示しています

▼SBT設定に関するデータ

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出典:CDP Worldwide「CDP気候変動レポート2019」より

【関連記事】

また、排出削減目標の目標年については、2030年の中長期目標を持つ企業が昨年より6割増加しており、本レポートによれば、その理由としてTCFD対応や、SBT設定の影響が考えられると述べられています。社数は下記となります。

▼温室効果ガスの中長期目標設定企業(Scope1,2排出量の総量目標について)

2018年 2019年
2020年目標(2017-2020)を持つ企業 99社 131社
2030年目標(2026-2030)を持つ企業 83社 132社
2050年目標(2046-2050)を持つ企業 38社 51社

出典:「CDP気候変動レポート2019」より、アミタ(株)作成

今後の課題について

日本企業については、前述の通り回答率が伸び、高得点企業が増加しました。一方で、全体傾向としては、B評価の企業が最も多く、C、D評価の企業と二極化する傾向にあります。セクター区分ごとにみると、回答率や高評価の割合にも差が見られており、セクターによっては、情報開示が進んでいない現状が明らかとなっています。これらの情報開示が必要であると考えられます。

▼ジャパン500セクター別スコア分布

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出典:CDP Worldwide「CDP気候変動レポート2019」より

いかがでしたでしょうか。2018年に、世界で初めてCDPの気候変動スコアを投資候補銘柄の選定に活用したファンドが誕生しましたが、2019年には、日本国内でこれらのファンドを主要投資対象とする公募ファンドが設定されています。CDPやSBTなどの評価を投資や融資の銘柄選定に活用する動きが見られており、企業の気候変動に関する情報開示は、ますます注目が高まっています。

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アミタの支援サービス「The Sustainable Stage」では、廃棄物管理を始め、脱炭素にかかる施策(CDP質問書への回答、SBT、RE100への取組み・実践体制の構築、支援など)、SDGs、生物多様性、バイオマス発電など企業の持続可能性を環境面から支えるための支援を行っています。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

amita_ishida77.png石田 みずき(いしだ みずき)
アミタ株式会社

サステナビリティ・デザイングループ マーケティングチーム

滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。メールマガジンの発信、ウェブサイトの運営など、お役立ち情報の発信を担当。おしえて!アミタさんへの情熱は人一倍熱い。

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