Q&A
セルロースナノファイバーとは?注目される新素材の環境性能を教えてください 。
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セルロースナノファイバー(以下、CNF)とは、木材から得られる木材繊維や植物繊維を化学的・機械的にナノサイズ(1ナノ=10億分の1メートル)まで細かくしたバイオマス素材のことです。CNFは、環境負荷が低く、軽量でありながら強度も兼ね備える、注目の次世代素材です。各省庁や様々な業界の企業で、CNFを使用した製品の実用化・量産化に向けて、積極的な研究・開発が進められています。
CNFができるまで(木材からCNFを取り出す場合)
樹木や端材を数mm~数cm程度の木材チップにし、これらのチップをパルプ化(木材チップの1000分の1程度まで細かくする)することで、木材繊維を取り出します。そして、機械処理法・TEMPO酸化法・ウォータージェット法などの手法を用いて、木材繊維を更に細かくしていき、スラリー状もしくは粉状のCNFを作成します。
CNFの特徴と期待される用途
- 軽量でありながら丈夫
CNFは鉄の5分1の重さでありながら、強度は鉄の5倍以上あり、自動車部品や内装材としての使用が見込まれます。 - 熱による変形の少なさ
熱による寸法変化はガラスの50分の1程度であり、半導体封止材やプリント基板としての使用が期待されています。 - ガスバリア性の高さ
空気を通しにくい性質を持つため、CNFを利用した食品包装容器は鮮度保持に役立ちます。 - 水中での粘性の高さ
水中で特徴的な粘性を示すことから、化粧品や塗料等への応用が期待されています。 - 透明度の高さ
CNF自体が無色透明であるため、透明表示体(スマートフォンの画面等)の素材としても利用できます。 - 比表面積の大きさ
250㎡/g以上の比表面積を持つため、エアコンのフィルターや紙おむつへの応用が期待されています。
CNF利用により見込まれる環境負荷低減効果
- 石油由来の素材を代替
CNFは、プラスチックや炭素繊維といった、石油を原料とする製品や素材を代替できると見込まれており、広く普及すれば、石油資源の枯渇問題の緩和につながることが予想されます。 - 軽量化による燃費向上、耐衝撃性の向上
プラスチック製品にCNFを配合することにより、より軽く強度の高い素材を作り出せるため、自動車や船舶等の輸送機器や重機の一部に使用されれば、軽量化による燃費向上や、耐衝撃性の向上が期待されます。 - 未利用資源の利活用
CNFの主原料は森林バイオマス資源(樹木等)であり、日本国内でも十分に原料調達が可能です。古紙や建築廃材、更には農産廃棄物(収穫後の稲藁等)もCNF原料となり得るため、これまで利用されてこなかった資源の有効利用が見込まれています。また、CNFは小さな枝木等からも取り出せるため、間伐材の有効利用につながる可能性も秘めています。
政府や国内企業によるCNF普及の取り組み
環境省・経済産業省・農水省を中心に日本政府としても、CNFの普及や推進等を行なっています。環境省では、企業・研究機関と協同でCNF実用化を図る「セルロースナノファイバー性能評価モデル事業」や、自動車部門でのCNF導入実証に特化した「NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト」を立ち上げています。
大手製紙会社や素材メーカー等を中心に、CNFの研究開発や実証実験が積極的に進められています。CNFは魅力的な素材である一方、実用化や大量生産にはまだ課題もありますが、大手製紙会社からはCNFを用いた紙おむつ(日本製紙クレシア)やトイレ用ペーパークリーナー(大王製紙)が既に一般販売されています。
CNF以外にも、2010年のノーベル物理学賞の対象にもなった「グラフェン」、"究極の繊維"として注目を集める「合成クモ糸繊維」、石灰石を主原料とする紙・プラスチックの代替素材「LIMEX」など、近年、低環境負荷でありながら革新的な新素材の開発・量産化のニュースが相次いでいます。こうした新素材を自社製品に応用できれば、企業のサステナビリティ戦略の重要な一手となるかも知れません。
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参考情報
- 日本製紙株式会社:2015年9月ニュースリリース
- 大王製紙株式会社:2017年3月ニュースリリース
- 株式会社TBM 凸版印刷株式会社:2016年11月25日ニュースリリース
執筆者プロフィール
松田 弘一郎 (まつだ こういちろう)
アミタ株式会社
カスタマーホスピタリティグループ 東日本チーム
岐阜県出身。法政大学人間環境学部を卒業後、アミタに入社。入社後はマーケティングチームにて環境に関するテレマーケティングやセミナーの企画・運営、企業環境部マネージャーへの取材などを実施。現在は、静岡・西神奈川エリアを中心にリサイクル営業を担当中。
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