Q&A
「加工食品の原料原産地表示」の制度改定が企業にもたらすリスクとチャンスとは?
加工食品の原料原産地表示制度の改定に関する議論が進められており、国内で製造された全ての加工食品に対し、原料原産地の表示を義務付けることが目指されています(現行制度では22食品群・4品目)。改定後の対応にお悩みの方もいらっしゃることと思いますが、ここでは「リスクをチャンスに変える」という視点で考えてみましょう。
「加工食品の原料原産地表示」とは?
食品表示法では、消費者等に販売される全ての食品について、食品表示が義務付けられています。また、加工食品については、その一部において産地表示が求められています。現在、原料原産地表示義務の対象となっている加工品は、乾燥きのこ類、こんにゃく、煮干魚介類など22食品群と、うなぎ蒲焼き、農産物漬物など4品目です。22食品群においては、原材料に占める重量の割合が50%以上のものについて、国産品の場合はその旨を、輸入品の場合は原産国名を表示する必要があります。
現在、この改訂を議論する"加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会"では「国内で製造し、又は加工した全ての加工食品を義務表示の対象とすることが適当である」とし「義務表示の対象となる加工食品及び原材料について、全ての加工食品について、重量割合上位1位の原材料の原産地を義務表示の対象とする。」という案を検討しています。また、同じ品目について複数原産国の物を利用している場合は、原産国を重量順に記載することが求められる見込みです。
※産地切り替えなどのたびに容器包装の変更が生じる場合など、いくつかの例外措置を認めるとしています。
※最終的な食品表示基準の改定版は、2017年4月現在で発表されておりません。
「原料原産地表示義務化」で想定されるリスク
- ラベルやパッケージの表示改定対応
季節や価格の変動等といった様々な要因により原料の調達先が変わった場合、表示内容を変更する必要があります。そのため、常に製品の調達状況を把握し、ラベルの表示内容と整合性が取れているか、という管理体制を強化する必要があります。また、都度ラベルの印字内容を変更できる様、担当部門や印刷会社との調整が必要になります。
- 表示ミスによる企業イメージ低下リスク
「国産」と表示されているのに外国産だったなど、仮に表示ミスが起こってしまった際は、『産地偽装』や『消費者軽視』といった批判にさらされるだけでなく、商品回収や売上低下、深刻なブランド価値低下につながるリスクもはらんでいます。
- 廃棄した製品の横流しによる企業イメージ低下リスク
表示ミスなどにより、製品の廃棄がやむを得ずに増加する可能性があります。その際には、不正転売に巻き込まれないような対策が必要です。問題に巻き込まれた場合、社名が公表されるなど、企業イメージを損なうリスクがあります。
- 表示義務化による消費者からの選別激化
現時点で表示義務のない加工食品についても、原産地を表示する必要が発生するため、特に外国産の原材料を使用している食品等は、安心・安全性の観点から消費者からの厳しい選別の目にさらされることとなります。
▼ 例)食品表示に関するイメージ:消費者庁ウェブサイトより
企業価値・ブランド価値向上につなげるには?
ここまでリスクについて解説してきましたが、こうした規制や制約条件に対して、対応策やコスト面だけに着目するのではなく、どううまく利用できるかを考える事が重要です。消費者視点で考えると、より安心・安全な食品を選定するための判断材料となるなど「消費者から選ばれる企業・ブランド」となるチャンスだと捉えられます。
▼ 例)企業価値・ブランド価値向上につなげる施策
- 企業理念やミッションを打ち出し、これらとリンクした商品開発を行う
- 調達から廃棄まで、品質・環境・社会に配慮したサプライチェーンを構築し、付加価値とする
- 表示基準よりもさらに踏み込んだ詳細な原産地表示で、より消費者に寄り添う姿勢を示す
- ブランド価値の高い原産地や品質の良い原産地の原料に切り替え、付加価値を向上させる
- ブランド価値の低い原産地のものでも、国内基準の管理体制や品質の良さを打ち出す
- MSCやASCなど環境認証を取得した水産物を利用する など
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参考情報
- 消費者庁:早わかり食品表示ガイド
- 消費者庁:加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会
平成28年11月「加工食品の原料原産地表示制度に 関する検討会中間取りまとめ」
関連情報
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