Q&A
どんなCSR活動を周知すべきでしょうか?
貴社の本業に近いオリジナルな活動やCSV(Creating Shared Value)を周知すべきです。ただし、あくまでも「守りのCSR」活動があっての「攻めのCSR」活動ということを忘れないでください。
前回では、自社のCSR活動のKPIを設定する方法やCSRをどういったメディアで周知していくのかについて話をしました。今回は、実際にどういったCSR活動を周知していくのかを考えていきましょう。
※無断記事転載禁止
CSR活動には大きくわけると2種類
通常、CSR活動といえば、おそらく大多数の方は、企業の社会貢献活動を思い浮かびます。例えば、フィランソロピー活動やメセナ活動、地域へのボランティア活動などを思い浮かべることでしょう。
右図を見てください。そのような活動は、いわゆる「攻めのCSR」にあたる活動になります。企業としてはCSRの十分条件といえる活動です。その一方で、企業が必ず実施しないといけないCSRの必要条件となる「守りの活動」があります。例えば、株主総会や各種法律を守る活動などです。これは企業として存在するためには実施しなければいけないのです。
画像:CSR活動には「攻めのCSR」と「守りのCSR」の2つに分かれる。
本業でのCSRが最も周知の優先順位が高い
さて、守りと攻めの活動がわかったら、次にどのCSR活動を周知していくか?という話になります。「守りのCSR活動」は必要条件ということもあり、企業間の差が出にくい活動が多くなってきてしまいます。ですので、他社との差別化ということでは、あまり有効とはいえませんが、ただ、何度もいいますが、守りのCSR活動なくしては企業として成り立ちません。あくまでも企業組織としての持続性可能性を判断するには、特に投資家や株主は「守りのCSR」に注目がされているはずですので、しっかりと統合レポートやCSRレポートでは伝えるべきです。
やはり、他社との差別化を図るためには「攻めのCSR」活動で周知することが優先順位が高くなります。特に「攻めの活動」の中でも、自社以外でもできる活動である「社会貢献活動」よりも、自社だからこそできる活動である「本業でのCSR」を周知させていくことが企業価値を高めることに繋がります。最近では、社会的な課題に対して本業で取り組むことは、CSV(Creating Shared Value)と言われ、ここ最近で取り組んできている企業も多くなってきています。一般消費者や就活生などからは、企業ブランドへの印象を高めることになります。
画像:周知の優先順位は本業でのCSR。
インサイド・アウトか?アウトサイド・インか?
企業が社会的問題解決に関わるケースは大きく2つに分かれます。
(1)インサイド・アウト(内から外へ)
企業が市場へ向けて提供する本業での製品やサービスまたはその事業プロセス(付加価値連鎖上の諸活動)、もしくはその両方が、社会的問題に直接作用しその解決に資するケース。例えば、プリウス、GOPANなど
(2)アウトサイド・イン(外から内へ)
企業が本業の競争環境を改善するために、その周辺に存在する社会的な問題の解決に向けて投資を行い、本業に役立てるケース。例えば、伊藤園の茶産地育成事業、食品メーカーの食育活動など
通常、企業であれば、なんらかの社会的な課題を解決するために事業を実施しているはずです。例えば、米国企業のGEでいえば「世の中を明るくしたい」という想いから電球などができたりしたわけです。また、医薬品メーカーであればクスリを生み出すことが自体が、社会的な問題解決になっています。本業自体がすでにCSVになっているのです。ですので、環境配慮型製品やサービスはインサイド・アウトということになります。
通常、CSR活動と呼ばれるのは、事業と切り分けてアウトサイド・インを想定している活動が多いようです。サプライチェーンでの取り組みなどは事業の周辺に存在する社会的な問題の解決に向けた投資の活動になります。企業としては、アウトサイド・インを周知することで他社との差別化にも繋がっていきます。是非、貴社だからこそできるCSV活動を考えて、周知して企業価値を高めていってください。
※慶應義塾大学大学院教授 岡田正大「CSVは企業の競争優位につながるか」Harvard Business Review 2015年1月。
写真:Some rights reserved by Yasunobu HIRAOKA
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執筆者プロフィール
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
シニアコンサルタント
早稲田大学理工学部卒業後、大手通信教育会社に入社。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。
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