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CSRに配慮した廃棄物処理とは?

Some rights reserved by Yosuke Watanabe

「CSR調達」という言葉は一般的でCSR調達を意識する企業は多いのですが、自社が排出する廃棄物の処理委託にまで配慮できている企業は少ないようです。

最近では、自社のサプライチェーン上で、その原材料や資材、サービスの調達先に対して、CSRを求める企業が多くなってきています。ただ残念ながら、自社の廃棄物の処理委託先がCSRにしっかりと取り組んでいるからといって、そういった処理会社を委託先として優先的に選定している企業はまだまだ少ないようです。廃棄物処理の外部委託もサービス調達の一つととらえると(私は「CSR処理」と名付けています)、今後、CSR担当者にはそういった視点もサプライチェーン上で求められてきますので確認しておいてください。

【環境省主催フォーラムを2016年に東京、名古屋、広島で開催!】

循環化社会の実現は地球温暖化対策と並び、今後の資源枯渇という社会的課題を考える上では大きな一つのテーマです。ゴミを出す排出側とそれを処分する処理側とのエンゲージメントにあなたも参加してみませんか?

<広島会場>
平成28年2月10日(水) 13:00~17:20
詳細はこちら

出典:環境省ホームページ (http://www.env.go.jp/recycle/waste/gsc/)

なぜ廃棄物の処理にはCSRを求めないのか?

160131_top.jpg企業は製品を産み出す源泉となる原材料の調達には人一倍気を遣っています。なぜなら、その原材料が調達できなければ自社の製品を産み出すことが出来ず、売上や利益を伸ばすことが出来ないからです。また、調達された原材料は製品の一部としてユーザの手許に届くため、原材料の品質に対する評価は製品に対する評価に直結するとも言えます。

では、廃棄物処理についてはどうでしょうか? 廃棄物の処理委託やその委託先のサービス品質が、自社製品の評価、更にその売上に反映することはまずありません。したがって、排出事業者には「できるだけ安く処理をしたい」という心理が働きます。勿論、廃棄物を有価で引き取ってもらうことで多少の売上になることもありますが、基本は処分するためのコストが発生します。そういった排出側からのコスト削減要求により、廃棄物処理業界は、全体的に価格競争に陥りがちです。更に、処理会社の中には、無理な条件で処理を引き受けた結果、結局は赤字になってしまい、不法投棄という手段を選ぶような会社も発生してくるのです。

企業には健全な静脈産業を醸成するための社会的責任がある

160131_001.jpg最近の企業が出しているCSR報告書を見るかぎり、地球温暖化対策や生物多様性に関する記述は多くされているものの、廃棄物やリサイクルに関して大きく取り上げているところが少なくなっていると感じられます。企業担当者に聞いてみると、ゼロエミッションもほぼ終え、リサイクル率もすでに100%まで近づいているので、廃棄物分野についてはもう何もすることがないという声をお聞きします。確かに、定量的なデータから判断するともう実施することがないように見えますが、果たして十分に遣り尽くしているのでしょうか?

画像説明:最近ではCSR処理先として環境省でも薦めている「優良さんぱいナビ」という処理会社の検索システムがある。


廃棄物やリサイクル分野の取り組みを内容面で見たとき、処理委託先の選考基準などについても明確に明示されている企業が少ないのが実態です。リサイクル分野については、一般消費者も地球温暖化対策や生物多様性と比較すると関心が持ちにくいテーマであり、そういった面について企業として取り組むメリットが小さいのも理解できます。ただ、原材料や資材の調達に関してそうであるように、廃棄物処理というサービスにおいても、委託する側の意向は、委託される側に対して大きな影響力を持っています。今後はCSR調達の取り組みの一つとして、CSRにしっかりと取り組んでいる処理会社へ優先的に処理委託することも検討すべきではないでしょうか?

「優良さんぱいナビ」で処理会社のCSR活動が分かる!

160131_002.jpg「優良産廃処理業者認定制度」とは、通常の許可基準よりも厳しい基準をクリアした優良な産廃処理業者を、都道府県・政令市が審査して認定する制度です。平成22年度の廃棄物処理法改正に基づいて創設された制度で、平成23年4月1日からスタートしています。「優良認定業者」として認定された産廃処理業者は、通常の許可基準よりも厳しい以下の基準をクリアしています。

  1. 実績と違法性
  2. 事業の透明性
  3. 環境配慮の取り組み
  4. 電子マニフェスト
  5. 財務体質の健全性

現在は優良認定業者924者となっており、今後も認定業者が増えていくことが予想されます。(平成27年10月31日現在、産廃情報ネットより:http://www.sanpainet.or.jp/)それに合わせて、企業の中には廃棄物の処理委託先についても、CSRを取引基準に入れる動きが益々加速されていくでしょう。「優良さんぱいナビ」の中には、処理会社の紹介ページでCSR活動も掲載しているので、取引する際の参考となるでしょう。今後、ゴミを出す側と処理する側のエンゲージメントが進むことで、持続可能な社会が実現できることを期待しています。

画像説明:優良さんぱいナビには、自治体別の許可一覧、処理・設備の詳細、特長・サービス、その他の取組など、企業の詳細情報が掲載されている。
執筆者プロフィール

inomata_profile.jpg猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社 
シニアコンサルタント

1970年生まれ。1994年早稲田大学理工学部卒業後、アミタに合流。環境・CSR分野における戦略・実行、コミュニケーション、教育など幅広く従事。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」をプロデュース。2016年3月には、著書「CSRデジタルコミュニケーション入門」(インプレスR&D社)を出版。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティング、第三者意見執筆(南海電鉄 、リケンテクノス 、アマダホールディングス)など多数実践中。

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