Q&A
自然資本プロトコルは、企業活動とどのような関わりがありますか?
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2016年7月に自然資本連合(Natural Capital Coalition 以下、NCC)より、自然資本プロトコルの初版が発行されました。自然資本プロトコルとは、企業経営の中に自然資本マネジメントを取り入れるための標準的な考え方と手順をまとめたものです。 企業の活動と自然資本の関係性を明らかにするにはどのようなプロセスで評価をすればよいか、という枠組みを示しています。
※自然資本とは、森林、土壌、水、大気、生物資源など、自然によって形成される資本(ストック)のこと。
自然資本プロトコル活用の意義と目的
近年、持続可能な企業経営のため、事業活動の方針決定に財務情報だけではなく社会コストや環境コストなどを考慮する企業が増えてきています。しかし、これまで自然環境や自然資本に関する評価ツールには様々なものがあり、自社の状況に適したツールを選ぶのが困難でした。また、選定したツールにより、評価・結果に差が生じるという欠点がありました。
こうした状況を踏まえ、NCCは統一された枠組みに沿って、全ての企業が自然資本への影響や依存度を定量的に測定・評価できるように標準化した自然資本プロトコルを作成しました。
自然資本プロトコルを用いることで、事業活動が自然環境に与える影響の試算や、自然資本が事業活動に与える機会とリスクを定量的に評価、比較することが可能になるとされています。
自然資本プロトコルの概要
自然資本プロトコルには、下記の4原則があります。
- 「関係性(Relevance)」
- 「厳格性(Rigor)」
- 「再現可能性(Replicability)」
- 「整合性(Consistency)」
企業が自然資本の評価・管理を行っていく4つのステージ、9つのステップにおいて確認すべき「問い」に対して、この4原則に従って回答していくことにより、事業と自然資本への影響や依存度を評価できます。
■ 自然資本プロトコルの4つのステージと9つのステップ(アミタによる和訳)
また、自然資本プロトコルを補完する文書として、業種ごとの手引書となるセクターガイドも同時に発行されています。現在は、食品・飲料業界とアパレル業界の2業種のみの発行ですが、他の業界のセクターガイドも今後発行予定となっています。
自然資本を重視した取り組み事例
ネスレ、コカ・コーラ、H&Mなどといった海外企業では、自然資本プロトコルの試験的な活用例があります。国内でも、自然資本会計や企業の環境活動の見直し・改善のための重要なツールとして、今後自然資本プロトコルを活用する企業が増えてくると考えられます。
なお、株式会社東芝は、以前より自然資本プロトコルの発表を見据えながら自然資本会計を積極的に実施しています。東芝では、自然資本会計として企業に求められることを、
- 環境影響を物量で評価する
- 物量とともに金額換算する
- サプライチェーンで評価し、環境影響が大きな地域をホットスポットとして示す
- 企業間の比較が可能になる
という4点に整理した上で、サプライチェーンを含む環境影響に関する統合評価の実施や、自社排出による自然資本への影響と、自然資本の再利用・自然資本に与えた正の影響との比較などを行っています。
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執筆者プロフィール
松田 弘一郎(まつだ こういちろう)
アミタ株式会社
ワークデザイングループ カスタマーサービスチーム
岐阜県出身。法政大学人間環境学部を卒業後、アミタに入社。入社後はマーケティングチームにて環境に関するテレマーケティングやセミナーの企画・運営、企業環境部マネージャーへの取材などを担当。現在は、カスタマーサービスチームにて、既存のお客様の問い合わせや案件に関するご対応や、新規取引開始時のサポートなどを担当。
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