Q&A
収集運搬車両の検問は実際にどのように行われているのでしょうか?行政処分につながった事例などはあるのでしょうか?
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by Highway Patrol Images
収集運搬車両の検問は、廃棄物処理法第19条に基づく行為であり計画的に実施されています。走行中の車両を停車させるために交通事故の危険も伴うため、行政の廃棄物処理担当部局だけでは行えず、ほとんどの場合、警察の協力の下、年間計画に沿って実施されます。
しかし、頻度は低くても、スピード違反の取り締まりと同様に「もし、見つかったら・・・」という気持ちになりますから、違反予防効果は絶大です。
車両検問で見つかった違反行為の事例(マニフェストの不携帯)
平成23年秋、千葉県と千葉県下の廃棄物の許可権限のある都市が合同で車両検問を行いました。この検問で、収集運搬業の許可を有する某社が、他者から受託した産業廃棄物を収集運搬している途中であったにもかかわらず、マニフェストを携帯していなかったため、検問に掛かりました。
ちなみに、収集運搬会社が産業廃棄物を収集運搬する際には、2つの「携帯文書」が義務づけられています。一つが、このマニフェストであり、もう一つは「許可証の写し」です。
特管産廃の場合は、さらにもう一つ「性状等を明らかにした書面」も携帯が義務づけられています。
この「マニフェスト不交付産業廃棄物の受託」において、規定と罰則の条文を紹介します。
第十二条の四 第2項 前条第一項の規定により管理票を交付しなければならないこととされている場合において、運搬受託者又は処分受託者は、同項の規定による管理票の交付を受けていないにもかかわらず、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しを受けてはならない。(以下略)
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (一~八略)
九 第十二条の四第二項の規定に違反して、産業廃棄物の引渡しを受けた者 (以下略)
このように、この違反には、最高刑では懲役6ヶ月という罰則まで規定されています。
ただ、法令違反があったからといって、必ず罰則を適用するわけではなく、軽微な場合や犯罪性が希薄な場合などは、行政指導や起訴猶予で終わることも少なくありません。
今回の事例は、刑事告発までは至らなかったようですが、行政処分の標準期間どおり、罰則第29条適用の違反行為では「相当」とされる事業停止30日という行政処分を受けることとなりました。
ちなみに、この事案の場合、改善命令や、措置命令は出されるでしょうか?
過去に何回も注意されたにもかかわらず繰り返しているということなら、改善命令が出されるかもしれませんが、初回であり、今後繰り返す可能性は低いと判断されるようであれば、改善命令は出されないと思われます。
また、この事例は、マニフェストという書類についての違反であり、現物(産業廃棄物)が不法投棄や大量保管されたわけではなく、実害はありません。よって、措置命令はありません。
車両検問での排出事業者の責任
この事案では、おそらくは、排出事業者がマニフェストを交付しなかった可能性が高いと推察されます。収集運搬会社が交付されたマニフェストを携帯しないということは、まず考えにくいからです。その場合、当然、排出事業者も違反となります。
規定と罰則の条文を「簡略形」で掲載します。
第十二条の三 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
三 第十二条の三第一項の規定に違反して、管理票を交付せず、又は第十二条の三第一項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票を交付した者
ただ、現実には、不法投棄や不適正処理に繋がった事案以外で、この規定に基づき排出事業者が刑罰を受けた事例は、あまりないと思われます。
やはり、警察や検察、裁判所は、社会に対する実害が無いものまでは、なかなか、手が回らないということかもしれません。
この事例も、排出事業者に対しては、特段の刑罰や行政処分は行われなかったようです。ただ、あくまでも「この事例では」ということで、他の場合もそうであるとは決して言えません。
特に、マニフェスト制度違反については、独特の行政処分の規定もあります。
その条文も紹介しましょう。
第十二条の六 都道府県知事は、第十二条の三第一項に規定する事業者、運搬受託者又は処分受託者(以下この条において「事業者等」という。)が第十二条の三第一項から第十項まで、第十二条の四第二項から第四項まで又は前条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第十項の規定を遵守していないと認めるときは、これらの者に対し、産業廃棄物の適正な処理に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた事業者等がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
この条文は、前述の通り排出事業者を(条文はあるものの)懲役刑にするのはなかなか難しいことから、社会的な制裁として「社名の公表」という手段を規定したものです。
罰金を数十万円払うことよりも、広く社会に社名が出てしまうことの重大さは、ご理解いただけるものと思います。
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筆者プロフィール
長岡 文明(ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。
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