Q&A
ステークホルダー・エンゲージメントの役割とは?
戦略的に効果的に関わるべきステークホルダーを特定し、優先度を付けて、エンゲージメントを進めて、社会課題に対応すること、またリスクを回避することです。
どんなステークホルダーと、どんな目的をもって、どのようにエンゲージするかは企業自身が決めるべきことです。前々回は「アジアでのCSRの意味合いや位置づけ」、前回は「国を超えてCSRを展開する際のポイント」を解説しました。今回はステークホルダー・エンゲージメントについて詳しく見ていきましょう。
「ステークホルダー・エンゲージメント」とは?
CSR担当の方なら「ステークホルダー・エンゲージメント」という言葉を一度は見聞きしたことがあるかと思います。社会的責任のガイドラインであるISO26000でも「『ステークホルダー・エンゲージメント』には、その組織と一人または一組以上のステークホルダーとの間の対話が必要である。ステークホルダー・エンゲージメントはその組織の社会的責任の取り組みを助ける」と定義がされています。
日本の企業の方とお話しすると「ステークホルダー・エンゲージメント」と「ステークホルダー・ダイアローグ」を同一視しているような場面に出会うことがあります。「ダイアローグ」は、企業が利害関係者と見なしている人たちと対話することで「エンゲージメント」の中の一つの手法にすぎません。
では「ステークホルダーとエンゲージメントを行う」とはどういうことなのでしょうか。「エンゲージメント」を行うには何らかの目的が必要です。例えば、以下のような目的があるでしょう。
- 企業が直面する数多くの課題の中からどれに優先的に取り組むべきかを決定するにあたり、社内外の関係者から意見を聞きたい
- 新興国や新しく進出する地域の市場ニーズを把握したい
- 潜在するリスクを洗い出したい
「ステークホルダー」とは誰でしょうか。
一般的には、会社にとっての利害関係者という理解でいいのかもしれません。しかし、この定義だと、どうしても自分たちの企業が中心にきてしまいます。しかし、企業が直面している課題は企業中心の一面的な視点から解決できるほど簡単なものではないのが現代です。
自分たちの企業を中心にして、いろいろなステークホルダーが存在している、という思考方法を見直すことも必要です。むしろ、自分たちも同じ課題を取り巻く一つの存在にすぎないと思考を改めることが、現代の地球規模の複雑な課題を解くために必要だと考えます。
エンゲージメントの対象者も手段も様々
前述したように、エンゲージメントの方法は「ダイアローグ」だけではありません。世界をみると、さまざまな方法で様々なステークホルダーとのやりとりが「ステークホルダー・エンゲージメント」として行われています。例えば、以下のように、対象者も手段も様々です。
- 従業員を対象としたオンラインアンケート
- お客様相談室に寄せられた電話やメール
- 社長に直接届くようなホットライン
企業の規模、業種、業態、どの国や地域で操業しているか、などの状況によって、どのステークホルダーと、どのような目的をもって、どのようにエンゲージするかは企業自身が決めるべきことです。その中で一番重要なことは、どのような目的のために誰とエンゲージメントするかを、優先度を付けて進め、その結果をステークホルダーに知らせていくということです。
単に「ステークホルダーと思われる人とダイアローグする」ことだけで終わってしまっては、正しい「エンゲージメント」とはいえません。世界企業といわれている企業をよくみると、戦略的に効果的に関わるべきステークホルダーを特定し、優先度を付けて、エンゲージメントを進めることで、社会課題に対応し、リスク回避を可能としています。
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執筆者プロフィール
赤羽 真紀子
CSR Asia 日本代表
早稲田大学で政治学と生物学を修め、カリフォルニア大学リバーサイド校、タフツ大学、慶應義塾の各大学院で学ぶ。環境省、国際基督教大学、慶応義塾大学、清泉女子学院大学、立教大学、APABIS、ブリティッシュ・カウンシル、世界銀行をはじめ、講演多数。企業が発行するCSR報告書の第三者意見の執筆多数。東洋経済オンラインでの連載の経験もあり、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)CSR推進NGOネットワークのアドバイザー、AIDS孤児支援NGO・PLASのアドバイザー、SportForSmileの顧問、ウォーターエイド・ジャパンの理事なども務める。通算10年以上のさまざまな業種の多国籍企業のCSR担当としての経験がある。特に企業の環境対応と社会貢献事業に関しては、スターバックスコーヒージャパン、セールスフォースドットコム、日興アセットマネジメントの各社で関連部署の立ち上げを手がけた。
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