Q&A
アジア地域では、CSRの意味合いや位置づけが国ごとに違うのですか?
はい。一口に「アジアのCSR」と言っても、国・地域ごとに中心的な課題が異なるためにさまざまな取り組み方がなされています。以下にそれぞれの特徴を見てみましょう。
CSRの法制化が進むインド・インドネシア
CSRはコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティの略で「企業の社会的責任」と訳されますが「企業の」であるのに、政府主導でCSRが推進されているところがあります。インドとインドネシアです。両国では法規制によって、企業にCSRを浸透させようとする傾向があると言えます。
インドは会社法を改正し、利益の2%以上をCSR活動に充てる等の内容が盛り込まれることになりました。しかし、何がCSRにあたるのかはっきりした定義がないため「CSRと言えば慈善活動。それだけやっていれば良い」と誤解されるおそれが指摘されています。
一方のインドネシアには「CSR法」があります。その74条は採掘業、石油、ガス、農園など、環境に影響を与えるすべての企業に対してCSRプログラムの導入を義務付けるもので、2007年に企業法の一部として発効しました。
インドネシアではこれらの産業が国の主要な輸出産業であり、財政基盤でもあります。同時に、産業として環境や人権等の面で大きな負の影響も与えることから、何か悪いことになってからでは遅いだろうということで、優先的にCSRに取り組もうという狙いが分かります。
情報開示がとくに求められる国々
CSRの「情報開示」にとくに関心が高い国・地域もあります。それはシンガポール、マレーシア、タイ、中国、香港です。これらの国・地域に共通しているのは、証券取引所が上場企業に対し、環境・社会・ガバナンスといったCSRに関係の深い情報について、開示を要求するガイドラインを作っていることです。
多くの場合、情報開示の要求は強制ではなく、自主的なもので良いとされていますが、上場企業にとっては無視できない市場の要請となっています。
社会課題解決への期待感が高い国も
過去のQ&Aでもお伝えしたように、豊かな日本と違いアジア地域には、まだまだ多くの社会課題が山積している国がとても多いです。そのような国では、企業のCSRというものは、企業が操業する地域の社会課題を解決するものであるべきだ、というように見られます。
特にミャンマー、ラオス、カンボジア、バングラデシュでは、いわゆる「開発課題」に企業が取り組むことで解決に導いてほしい、という期待が極めて高いといえます。
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講師
赤羽 真紀子
CSR Asia 日本代表
早稲田大学で政治学と生物学を修め、カリフォルニア大学リバーサイド校、タフツ大学、慶應義塾の各大学院で学ぶ。環境省、国際基督教大学、慶応義塾大学、清泉女子学院大学、立教大学、APABIS、ブリティッシュ・カウンシル、世界銀行をはじめ、講演多数。企業が発行するCSR報告書の第三者意見の執筆多数。東洋経済オンラインでの連載の経験もあり、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)CSR推進NGOネットワークのアドバイザー、AIDS孤児支援NGO・PLASのアドバイザー、SportForSmileの顧問、ウォーターエイド・ジャパンの理事なども務める。通算10年以上のさまざまな業種の多国籍企業のCSR担当としての経験がある。特に企業の環境対応と社会貢献事業に関しては、スターバックスコーヒージャパン、セールスフォースドットコム、日興アセットマネジメントの各社で関連部署の立ち上げを手がけた。
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