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マニフェスト交付時に計量できない場合の、数量の書き方を教えてください

マニフェスト(産業廃棄物管理票)A票の「数量」欄は、法定記載事項であり、交付時に記載しなければなりません。これは電子マニフェストでも同様です。では排出元でトラックスケールがなく計量できない場合はどう記載するのが適切でしょうか。詳しく解説します。

マニフェスト「数量」記載不備の実態

マニフェストA票への数量記載については、廃棄物処理法で明確に規定されています。

第十二条の三第1項
~事業者は、(中略)産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。

今回問題となる、正確な数量が分からない場合の書き方について「排出元でトラックスケールがない場合はマニフェストの数量欄を空欄にしておき、処理業者で計量した重量を後から記載しなければならない。」と誤解している方は少なくありません。この誤解は、産業廃棄物の業界でかなり広く浸透しており、処理業者、場合によっては自治体の担当者も含め、このような認識の方がいます。また中には、きちんと計量されていない段階で数量欄に記入したら違反となってしまう、と考えている方もいます。
 平成17年に総務省が行った「産業廃棄物対策に関する行政評価・監視結果」の中では、マニフェストの運用不備を調査した59件のうち6件のマニフェストの数量欄が空白だったと報告されています。

数量を含む、マニフェストの法定記載事項については「産業廃棄物 マニフェストの交付・書き方で注意する点は?記入間違いを防ぐ方法を教えてください」に詳しく解説しています。

数量を記載しなければならない理由

それでは、なぜ数量を記載しなければならないのでしょうか。ここで少し廃棄物の世界を離れて、何かを購入するときのことを考えてみます。例えば、パソコンを10台注文したところ、8台納入されてきたとしましょう。納品書を見ると「品名:パソコン」としか書いてありません。これでは後で2台来るのか、10台納入したつもりでどこかで2台紛失してしまったのか、まったく分かりません。もしここに「数量:8台」と書いてあれば、注文数量を8台だと勘違いしていたということが分かります。このように、モノを渡す時の伝票に数量が入っていないと、困ったことが起こります。スーパーのレシート、宅配便の伝票でも、同様です。

マニフェストでも似たような問題が起こります。収集運搬業者に廃棄物を10t引き渡した場合、途中で5t不法投棄されても、誰にもそのことはわかりません。逆に途中で他の廃棄物を積み込んで15tになっても、排出事業者はそのことがわかりません。処理費を余分に支払うことになるかもしれません。(できるだけ正確な数量を記載しましょう。)

なぜ先述のような誤解が生じたのでしょうか。マニフェストに数量が記載されていないことを現場で指摘すると、「記載することができないから仕方がないではないか」と言われることがあります。マニフェストに記載される数量は「正確でなければならない」はず「請求書と同じでなくてはならない」はず「県への実績報告と同じでなくてはならない」はず、ということです。気持ちはわかるのですが、これらには法律上の根拠はありません。

正確な数量がわからない場合の記載方法

では正確な数量がわからない場合は、どう記載するのが適切でしょうか。 「産業廃棄物管理票制度の運用について 平成23年3月17日 環廃産発第110317001号」、という通知では以下のように述べられています。

「数量」の記載は、重量、体積、個数などその単位系は限定されないこと。

さらに、平成17年10月付 総務省の「産業廃棄物対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」報告書の中でも、環境省の見解が紹介されています。

この通知は、単に単位系について示したものではなく、数量の記載に当たっては、例えば「4tトラック1台」など、荷姿と個数や運搬容器の容量等を用いて記載しても良いという趣旨であり、運搬容器の容量等が不明の場合等においては「数量」は収集運搬業者に聞いて記載しても良いとの見解を示したものである。

つまり、正確に計量しなくても数量は記載してよい、ということです。よく、重量か体積を書かなくてはいけないと考えられている方もいますが、容器に入っているのであればその個数、バラであれば見た目の立米、それもわからなければ4tトラック1台という記載でも構いません。

実際の運用方法としては、排出事業者が自らの判断で記入するか、上記見解にあるように収集運搬業者の運転手と相談して記入することになるでしょう。また、法律上の義務ではありませんが、処理業者から計量値の連絡が来たら、それを数量欄の横や備考欄に記入していることがあります。計量伝票をホチキスで留めているものもよく見かけます。

さいごに

マニフェスト制度とは、産業廃棄物の処理状況のトレーサビリティ(追跡可能性)を実現する制度です。正確な数量がわかればそれを記載するべきですが、正確にわからなかったとしても、産業廃棄物が排出事業場から搬出された時点でどの程度のボリュームであったのかをマニフェスト上に記載しておくことで、処理の途上で不適切な取り扱いがないかを知る手掛かりの一つとなり得ます。廃棄物の適正処理のためにも、是非マニフェスト制度を適切に運用するようにしてください。

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執筆者プロフィール(執筆時点)
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堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 環境戦略支援グループ
東日本チーム 主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」に2007年6月から2014年6月までの7年間記事を連載。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。2014年より現職。日本能率協会登録講師。

■著書
 「改訂版 かゆいところに手が届く 廃棄物処理法 虎の巻」 日経BP社
 「廃棄物処理法のあるべき姿を考える」 環境新聞社

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