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ゼロエミッションの意味とは?具体例や達成方法を解説!
ゼロエミッションの定義と企業の事例だけでなく、ゼロエミッションの具体的な達成方法や継続方法をご紹介します。
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ゼロエミッションの意味とは?
ゼロエミッションとは「無限で劣化しない地球」から「有限で劣化する地球」への社会的な意識の変化を背景に、廃棄物の発生を限りなくゼロに近づけることを目指す考え方です。この概念は1994年に国連大学が提唱した「ゼロエミッション研究構想」に由来し、広く注目されるようになりました。産業活動に伴う環境負荷を抑えるため、生産プロセスを見直し、廃棄物を他企業が原材料として再利用するなど、企業間で資源を循環させる新たな循環型産業システムの構築を目指しています。
企業がゼロエミッションに取り組む意義
ゼロエミッションに取り組み、廃棄物の排出量を削減し埋め立てや単純焼却ではなく再資源化を行うことで、温室効果ガスの排出量を削減し、脱炭素と資源循環の同時実現を目指す企業が増えています。
また、ゼロエミッションを推進することで、廃棄物の管理や処理にかかるコストを削減できるなど、経済的なメリットもあります。廃棄物の排出量を抑制すれば、廃棄物の運搬や処理にかかる費用の削減につながりますし、廃棄物の削減のために、原材料の調達から使用までプロセスを見直すことで、無駄のない最適な量の調達につながり、調達コストの削減にもつながる可能性もあります。
ゼロエミッションの具体例
では、企業は具体的にどのようにゼロエミッションに取り組んでいるのでしょうか。以下2つの企業の事例を紹介します。
- アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒグループは、国内の生産拠点にて副産物・廃棄物の再資源化100%を達成しています。
ビールの製造工程で副産物として発生するビール酵母菌を天然素材ビール酵母「エビオス錠」の原料や、分解・抽出した「酵母エキス」を調味料の原料などに使用しています。さらに、ビールを醸造する際に発生する「ビール酵母細胞壁」が植物の免疫力を高める効果を持つ点に注目し、アサヒグループの独自技術により、植物が吸収しやすい形に加工されました。これにより、新しい農業資材(肥料の原料)としての開発が実現し、持続可能な農業への貢献が期待されています。また、アサヒグループは資源循環だけでなく脱炭素にも同時に貢献すべく様々な取り組みを行っています。
ペットボトルのラベルレスを実現した「シンプルecoラベル商品」は、従来ラベルに記載していた法定表示をタックシールに印字することで、ラベルや外装段ボールの廃棄抑制だけでなく、1本あたりのCO2の排出量を通常と比較して約63%削減しました。
- 株式会社資生堂
資生堂は、2003年に国内の生産拠点でのゼロエミッション※の実現に成功しました。同社では、製造工程で発生する廃棄物を分別し、リサイクルやエネルギーの回収に利用することで、埋め立て処分をゼロ(法令で埋め立て指定の廃棄物を除く)にしています。
※廃棄物の再資源化率99.5%以上。法令で埋め立て指定の廃棄物を除く(資生堂定義による)。工場で発生する廃棄物を削減するために、脱水機や乾燥機を導入し、排水処理の過程で発生する汚泥量を削減し、また那須工場では液体原料の納品方法を変更して廃ドラム缶の発生を抑えています。また、輸送箱の再利用や厳密な廃棄物分別管理を通じてリユース・リサイクルを推進しています。2023年には最外装削減プロジェクトを実施し、製品輸送時の段ボールや容器包装を全面的に見直す等して資源使用の最小化を目指しています。これらにより、2022年までに世界全工場で埋め立て廃棄物ゼロを目指すという目標に対して、2020年で達成することができ、現在もその状態を継続しています。
また、先ほどゼロエミッションに取り組む意義として脱炭素に貢献することもできると紹介しましたが、資生堂は2026年にカーボンニュートラルの実現を目標としており、廃棄物のリサイクル化をすることで、Scope3カテゴリー5の削減にも貢献することができます。
関連記事:Scope3(スコープ3)カテゴリ5の算定方法と企業事例、排出量削減方法を解説 !
ゼロエミッションに取り組む前に:リサイクル方法の基礎知識を学ぶ
では、実際にどのようにゼロエミッションに取り組めばよいのでしょうか。取り組み方法の紹介の前に、前提知識としてまずはリサイクル方法の基礎知識を学びましょう。リサイクル方法によって、排出事業者が事前に確認すべき情報が異なりますので、前もって情報を整理してからリサイクル化を検討しましょう。
排出した廃棄物を再資源化する方法は、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなど、様々な種類があり、処理費や環境負荷の度合いはそれぞれ異なります。より有効なリサイクルを検討するにあたり、まずどの用途に、どういったものにリサイクルするか、下記のような情報を把握しておくことが、検討の第一歩です。
関連記事:社内の産業廃棄物の管理規定を見直す際、リサイクルの定義が問題となりました。 どう考えたら良いでしょうか。
- マテリアル/ケミカルリサイクル (原料化)する場合に知っておくべき情報
マテリアル/ケミカルリサイクルの例として一般的なのは、プラスチック類、金属スクラップ等が挙げられます。あらかじめ廃棄物の組成ごとに分別をして、PP(ポリプロピレン)ならPP原料へ、鉄スクラップなら鉄原料へリサイクルするといったものが代表例です。排出事業者として、マテリアル/ケミカルリサイクルをする際にチェックするべき情報は以下の通りです。
• 成分の把握 ※組成や熱量の安定性(基本値・変動域)
• ハンドリングの良し悪し
• 量的な安定性(季節による排出量の変動があるか等)
• その他、事前に伝えるべき不安定要素
• 価格の設定根拠
リサイクル原料として使用してもらうには、原料ユーザーの製造工程や製品への影響の明確化等、バージン原料(自然由来の原料)の代替品として利用することのメリット(コストメリットを含む)を示さなければなりません。 - サーマルリサイクル(燃料化)する場合に知っておくべき情報
一方、サーマルリサイクルの方法としては、廃プラスチック類を固形燃料(RPF)化して製紙燃料・セメント燃料にしたり、有機汚泥をバイオマス発電用燃料として使用したりする方法があります。サーマルリサイクル場合は、マテリアル/ケミカルリサイクルのチェック項目に加えて以下のような情報が必要となります。
• 発熱量(kcal/kg)
• 強熱減量(熱しゃく減量、Ig-loss) ※燃え残り量の把握のため
• 含水率
セメント会社や鉄鋼会社といった一部の素材産業においては、廃棄物を原料かつ燃料としてリサイクルする、「原燃料化」と呼ばれるハイブリット型のケースもあります。まず燃料として使用した後、燃え残りを原料として使用するといったものや、コークスの還元剤の代替として利用し、還元反応後のガスを燃料として利用するといったものを指しています。マテリアル/ケミカル/サーマルリサイクルのチェック項目に挙げたような情報が求められます。
以上のような情報を整理した上で、リサイクル方法の検討を進めることが重要です。
ゼロエミッションを達成するためのステップ
次に、実際にゼロエミッションを達成する方法を紹介します。まず自社から発生した廃棄物の情報を把握することからはじめ、その上で、何にリサイクル出来るのか、ユーザーは誰なのか、用途と処理委託先を検討しマッチングを行います。以下の3つのステップで処理委託先の検討を進めていくことが望ましいでしょう。
Step1:廃棄物情報の把握
以下のデータを用いて、どのような廃棄物がどれぐらい発生しているのか、
また現在はどのような処分方法がされているのか現状を把握しましょう。
• 廃棄物情報データシート(WDS)
• 溶出分析(産業廃棄物か特別管理産業廃棄物かの把握)
• 含有分析(含有成分の把握)
• 発生工程フロー 等
Step2:処理委託先業者の探索
既存の処理委託先からの紹介や優良さんぱいナビで調べる等、様々な調査方法があります。
• 既存処理委託会社(収集・運搬)からの紹介
• インターネット検索 ※優良さんぱいナビ、産廃情報ネット等
• 新規処理会社からの売り込み情報
• 調査会社に調査を委託
Step3:現地視察、信用調査、取引条件や運用手順確認、効果の算定、契約
処理委託先との契約を締結する前に、事前に現地視察と委託先の信用調査を行いましょう。廃棄物処理法では、排出事業者責任のもと自社が排出した廃棄物が適正に処理されるか確認する必要があります。運用手順の細かな確認を含め、事前に処理委託先とコミュニケーションを綿密にとることで、委託リスクの低減や法令順守の強化を行いましょう。
また、ゼロエミッションへの貢献効果もきちんと算定・シミュレーションしておくことが大切です。二次廃棄物まで含めたリサイクル率や、CO2排出量の削減効果なども見える化した上で、委託するかどうかを判断しましょう。
• 現地視察、信用調査
• チェックリスト等に基づく社内評価プロセスによる承認
• 搬出/搬入時の留意点を含む、運用手順の確認
• リサイクル率やCO2排出量の算定
• 契約締結
ゼロエミッションを維持・改善するポイント
既にゼロエミッションを取り組まれている方のなかには「ゼロエミッションに向けた取り組みがマンネリしている」「環境への負荷も低減した方法を考えたい」という課題をお持ちの方もいらっしゃると思います。ゼロエミッションを維持し、より質の高いゼロエミッションを目指すためのポイントをいくつか紹介します。
• リサイクル業者と成分等の規格値を取り決め、分別ルール等を遵守する
• 市場価格(金属相場、燃料相場等変動要因)の把握をする
• 定期的に複数の業者から相見積を取り、委託先のルート複線化をしておく
• 業種の複線化をおこない、業界リスクや季節性変動を回避する
• 新規の処理業者や、新しい技術の情報を積極的に集める
• リサイクルに要する輸送距離やエネルギー、関連CO2排出量の低減
• 営業所や倉庫など、工場以外から排出される廃棄物への取り組み
上述のポイントから、特に重要な処理委託先の複線化やCO2排出量の削減、工場以外の拠点の廃棄物削減について、具体的に解説します。
処理委託先の複線化
例えば、有機汚泥を肥料化・飼料化しているケースを考えてみます。
▼図1-1 肥料化・飼料化のケース
作成:アミタ
農業・畜産業関係の処理委託先では、以下のようなリスクを抱えるケースがあり、リスクが顕在化した場合、ゼロエミッションの達成はもちろん、廃棄物の排出先が確保できず工場の操業に影響を与える可能性があります。
• 受入に季節変動がある
• 自然災害等により一定地域が被害を受け、受け入れが困難になる
よって以下図1-2、図2のように複線化し、また、
処理先との日々のやりとりや現地確認時に、処理後の最終処分先や製品売却先の動向を確認する
処理先ごとの受入量、処理量の時期的な増減、変動要因を分散させる
処理方法(業態)のベストミックスにより、安定的な処理委託を実現する
といった取り組みにより安定的なリサイクルシステムの構築につながります。
▼図1-2:処理方法が異なる処理先を追加
作成:アミタ
▼図2:発生量や時期によって再資源化方法を選択
作成:アミタ
- リサイクルに要する輸送距離やエネルギー、関連CO2の低減
昨今、廃棄物のリサイクル率だけではなく、いかに環境への負荷を下げ脱炭素にも貢献できているかという視点も注目されています。
そのため、リサイクルを実現するために長距離輸送を行っている、過剰なエネルギーをかけてリサイクルしている、原料や燃料としての価値を有効活用できていないといった場合は、リサイクルのスキームを再検討する余地があります。実際に、温室効果ガス排出削減・コスト削減のために、廃棄物の輸送距離をリサイクルの評価指標として取り上げている企業もあります。エネルギー消費と資源消費のバランスを考慮しましょう。 - 工場以外から排出される廃棄物への取り組み
工場のゼロエミッションだけでなく、営業所や倉庫といった非生産拠点での廃棄物処理・管理の高度化も重要です。最近は、期限切れで廃棄予定だった商品や不要となった販促品などが、適正に処理されずに横流しされ、インターネットオークションなどで転売される事件も発生しています。中には、オークション経由で購入した消費者からメーカーにクレームが入るケースも発生しており、注意が必要です。
ゼロエミッションは、様々な視点から検証することが必要です。達成するだけでなく、継続・改善を通して、より環境負荷やコスト・リスクの低い状態を実現しましょう。
関連情報:アミタのダブルゼロ・エミッションサービス産業廃棄物の100%リサイクル
最後に
今回はゼロエミッションを中心に企業の具体例からその実践方法や継続方法を紹介しました。近年ではゼロエミッションよりも、廃棄物の発生を前提とせず、製品の設計段階から廃棄までのすべてのプロセスにおいて資源循環を検討する「サーキュラーエコノミー」という概念に沿って経済面と環境面の両立を図る企業が増えています。
「発生した廃棄物をいかに再資源化するか」だけを考えるのではなく、製品のメンテナンスや修理、リユースなどを優先的に検討しビジネスモデル自体から変革していくことで、自社の新たな提供価値の獲得にもつながります。「サーキュラーエコノミーとは? 3Rとの違いや取り組み事例まで解説!」という記事で詳しく紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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プロフィール
田中 千智(たなか ちさと)
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