Q&A
ISO26000とは、具体的にどのような内容・構成になっているのですか?
Some Rights Reserved. Photo by aussiegall
ISO26000は、国際標準化機構によって「企業に限らない組織の社会的責任(SR)」に関して策定されたガイダンス規格で、2010年11月に発行されました。
本記事では、ISO26000の概要と構成について解説します。
(本記事は、2009年9月に掲載されたものを一部再編集しています。)
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ISO26000とは
ISO26000とは、2010年に正式発効された、社会的責任(Social Responsibility)に関する国際規格です。本規格は、企業だけでなく様々な組織が社会や環境に及ぼす影響に対して責任を持ち、多様なステークホルダーに貢献できるよう、ガイダンスとして利用されるものです。
ガイダンス規格とは
ISOの規格は、工業規格、マネジメントシステム規格、ガイダンス規格の3つがあり、ISO26000は「ガイダンス規格」です。
工業規格は製品の規格統一を目的としており、+-のネジや乾電池などに使われています。マネジメントシステム規格は各現場の品質に対するばらつきや、各工場が環境に与える影響に一定の規格を作るためにつくられました。
対するガイダンス規格はあくまで推奨事項の集合体であり、組織の自主的な社会的責任への取り組みを促進することを目的として策定されています。そのため、要求事項を満たして認証を受けるものではありません。
ISO26000が生まれた背景
第二次世界大戦後、一時は順調な経済発展を見せた先進国も、国際化、組織の巨大化・強大化等の様々な要因から、人権や雇用、環境などのさまざまな問題が深刻化していきました。
また、不況による経済的問題もたびたび発生しました。経済的問題から企業の不祥事が表面化し、大きな問題になったのも1990年代以降です。
こういった社会背景を受け、ISOは、2001年にCSRの規格化について検討を開始しました。2004年には、企業だけに限らず組織一般の社会的責任を取り扱い、開発に取り組むこととなりました。CSRからSRへ、より普遍的な規格となりました。
そして2010年11月にISO26000「Guidance on social responsibility / 社会的責任に関する手引き」を発行しました。
交渉過程でステークホルダーや先進国と途上国間の利害関係・意見調整が難航し、6年の歳月をかけてつくられたこの規格は、SRに関する世界初の国際規格となりました。
ISO26000の全体構成
全体構成は以下のようになっています。
ISO26000の構成
序文
組織は様々なステークホルダー(利害関係者)から厳しく監視されているとした上で、本規格が、社会との関係における組織のパフォーマンスの向上に寄与するためのものであることを示しています。
第1章 適用範囲
この国際規格で取り上げる主題を定義しています。
第2章 用語及び定義
本規格で使用する重要な用語と、その意味を説明しています。
第3章 社会的責任の理解
社会的責任の進展に影響を与える要素や、重要課題等について示しています。また、社会的責任の概念そのものについて、それが何を意味し、どのように組織に適用されるかについて示しています。
第4章 社会的責任の原則
以下の、基本的な社会的責任の7原則について説明しています。
- 説明責任
- 透明性
- 倫理的な行動
- ステークホルダーの利害の尊重
- 法の支配の尊重
- 国際行動規範の尊重
- 人権の尊重
第5章 社会的責任の認識およびステークホルダーエンゲージメント
社会的責任の実践である、組織の社会的責任の認識と、ステークホルダーの特定およびステークホルダーエンゲージメント(ステークホルダーの関心事項を理解するために行われる取り組み)について説明しています。
第6章 社会的責任の中核主題に関する手引
以下の、社会的責任に関連する中核主題、およびその課題について説明しています。 これらを総称して「7つの中核主題」と呼びます。
- 組織統治
- 人権
- 労働慣行
- 環境
- 公正な事業慣行
- 消費者に関する課題
- コミュニティ参画および開発
第7章 社会的責任を組織全体に統合するための手引
以下の項目について、組織内で社会的責任を実践し、慣行とするための手引を提供しています。
・社会的責任の組織全体への統合 ・組織の社会的責任の理解 ・進捗の確認及びパフォーマンスの向上 ・社会的責任に関する信頼性の強化 ・社会的責任に関する自主的イニシアチブ ・社会的責任に関するコミュニケーション
なお、第6章5には「環境」の項目があり、組織は自らの活動が、経済、社会、環境などに与える影響を広い視野で考慮することが望ましいといった記載や、検討事項、課題等が示されています。
さいごに
ISO26000は第三者認証を必要とする企画ではありません。しかし、企業のサステナビリティレポートの第三者保証にあっては、企業のサステナビリティ報告に関する指令(CSRD)やグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)などへの対応と同時に、ISO26000などに基づく信頼性や説明責任の検証・評価を行う動きが広がっています。
自社の報告書の質を高めるため、ガイダンス規格を活用されてはいかがでしょうか。
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