インドネシアの廃棄物管理状況 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

インドネシアの廃棄物管理状況循環への航海 ~インドネシア廃棄物管理の現状と未来~

indonesia_thumbnail.png本コラムでは、インドネシアの廃棄物管理現状、規制強化、気候対策、課題、そして日本の支援可能性を5回にわたり多角的に解説します。コラムを通し、インドネシアの現在の廃棄物管理の状況を詳しく見てみましょう。

      廃棄物管理の概要:廃棄物管理に関わるステークホルダー

      バンタル・ゲバンをご存知でしょうか?(図1)

      ジャカルタ郊外に位置するこの巨大な埋立地は、サッカーフィールド200個分の面積を持ち、高さは45メートル以上。アジア最大級の埋立地の1つです。

      ▼図1 - バンタル・ゲバン -

      1_top_bantal.pngのサムネイル画像

      出典:Merdeka.com

      インドネシアは 東南アジアで最大の都市廃棄物生産国となっています[7]。またインドネシアでは人口の約55%が都市部に住んでおり、2030年にはその割合が73%以上に達すると予測されています[1]。急速な都市化に伴い、廃棄物管理の問題はますます重要なテーマになっています。

      インドネシアにおける廃棄物管理のステークホルダーは、政府、環境森林省、地方自治体、民間企業、地域社会です。

      そのなかでも政府と地方自治体は、廃棄物管理が法令に基づいて適切に行われるよう監督する立場です。法令の代表的なものとしては、廃棄物管理に関する政府規則第81号/2012[8]や、固形廃棄物管理に関する法律第18号/2008[9]などがあります。一方、インドネシアで知名度のあるWaste4Changeのような民間企業は、廃棄物収集、処分サービス、そして専門的な廃棄物管理ソリューションを提供しています。地域社会、特にウェイストピッカー(図2)は、リサイクル可能な廃棄物を集め、埋立地に送られる廃棄物の量を減らす役割を果たしています。

      ▼図2 - ウェストピッカー -
      (インドネシアではペムルングといわれる) -

      1_waste picker2.jpg

      出典:Kompasiana

      廃棄物生成統計:年間廃棄物発生量

      ここからはインドネシアの廃棄物の発生量についてみてみましょう。2023年にインドネシアで発生した廃棄物の総量は約4,300万でした。その中でもジャワ・バラット州は廃棄物の発生量が最も多く(約780万 トン)、全体の約2割を占めています[3]。

      次にインドネシアで発生した廃棄物の種類別割合(図3)を見ると、最も多かったのは食品廃棄物(39.45%)で、次いでプラスチック(19.21%)、木材、小枝(12.27%)、紙、段ボール(10.87%)などが続きました。廃棄物の処理を埋立てや焼却に大きく依存している地域では、廃棄物による環境汚染の拡大が懸念されており、今、インドネシアでは廃棄物発生量の削減と同時に、ゼロウェイストや循環型経済アプローチへの移行が急務となっています[2]

      図3 - インドネシアで発生した廃棄物の種類割合 -

      1_idn_waste graff.png

      出典:SIPSN

      廃棄物管理インフラ:廃棄物処理および処分のための施設とシステム

      インドネシアでは、廃棄物の処理および処分に利用可能な施設は、廃棄物の種類によって異なります。これまでインドネシアでは、仮設保管場所(Tempat Penampungan Sementara)や埋立地(Tempat Pemrosesan Akhir)を利用した埋め立てが 、長い間主流の処理方法として採用されてきました。近年、インドネシアの環境・林業省は、より効率的な廃棄物の処分と処理のために「バンク・サンパ(Bank Sampah※直訳するとごみ銀行)」や「中間処理施設(Intermediate Treatment Facility)」などのような新たな廃棄物処理システムや施設の導入を推進しています。それぞれの詳細を見ていきましょう。

      図4 - ジャカルタにおける家庭固形廃棄物管理システムのフローチャート -

      1_idn_waste_flow.png

      出典:Aretha APRILIA

      1.バンク・サンパ(ごみ銀行):Bank Sampah
      バンク・サンパ(以下、ごみ銀行)(図5)は、リサイクル可能な廃棄物の収集を支援する地域主導の取り組みです。ごみ銀行は、金属、プラスチック、紙など、リサイクル可能または販売可能な経済的価値を持つ無機廃棄物の収集に重点を置いています[1]。一方、有機廃棄物(食品の切れ端、庭の廃棄物、植物素材)は、ごみ銀行に隣接する「コンポスティングハウス(※ごみ銀行に併設されている、たい肥を生産する施設)」で処理され、たい肥が作られます[1]。

      ▼図5 - ごみ銀行 -

      1_waste bank3.png出典:アミタ撮影

      ごみ銀行の仕組み

      ごみ銀行はおよそ以下のような流れで運営されています。

      ①. 地域住民が、リサイクル可能な廃棄物をごみ銀行に持ち込む
      ②. その代わりにごみ銀行が、持ち込んだリサイクル可能な廃棄物の価値に相当するお金を支払う
      ③. お金は貯金帳に記録され、引き出すことができる
      ④.またごみ銀行は、利益分配制度を使ってお金を貸付することもできる[9]
       ※ごみ銀行では、3ヶ月間の貸付が10%の金利で行われた例がある[9]
      ⑤. 集められた廃棄物は、リサイクル工場やアップサイクリング業者に販売される

      このような仕組みで運営されているごみ銀行ですが、その目的は、廃棄物の分別、収集、貯蓄を通じて人々に廃棄物の削減を啓発・教育することです[9]

      2.仮設保管場所 (TPS):Tempat Penampungan Sementara

      TPSはリサイクル、処理、または統合廃棄物処理施設に運ばれる前に、廃棄物を一時収容するために指定されたエリアです[4]。廃棄物は少なくとも5つの種類(有機廃棄物、無機廃棄物、紙類、危険廃棄物、残渣廃棄物)に分類されます[11]

      これらの施設は、廃棄物を一時的に特定の場所に集積させることで収集ルートの整理による運搬距離、輸送コストの削減に役立ちます。

      TPS - 3Rシステム

      TPSの中には、3R(リデュース、リユース、リサイクル)機能を有する拠点があります。TPS-3Rでは、住民はグループ(少なくとも400世帯からなる[11])で、または収集スタッフを雇って家庭ごとの廃棄物を収集し、TPSにおいて分別や生ごみのたい肥化などを行います。こうした取り組みにより3Rを促進し、最終処分されるごみを削減しようとしているのです。

      図6 - TPS-3Rセンター -

      1_idn waste tps.jpg

      出典:waste4change

      3.埋立地(TPA):Tempat Pemrosesan Akhir

      冒頭にご紹介したバンタル・ゲバンのように、インドネシアの約90%の埋立地では、日本のように焼却による前処理をせず、トラックで運ばれてきたそのままを投棄し、重機で平らにするだけの「オープンダンピング」方式が採用されています[5]。この方式では、ハエやネズミなどが発生し伝染病等を媒介したり、生ゴミが分解する際のメタンガス等による環境影響の問題があります。また当然、ごみの量が減らないため埋立地の容量逼迫を招いています。

      4.中間処理施設(ITF):Intermediate Treatment Facility

      ITFは、既存の埋立地への依存を減らす目的で、設立された代替的な廃棄物処理施設です(図7[6]
      ITFでは、RDF化、ガス化などの技術を使用して廃棄物を燃焼させ、発電します[12]。施設に投入された廃棄物は、80-90%減量されます[6]

      現在、ジャカルタ特別州(DKI Jakarta)では、ジャカルタ特別州知事規則第50/2016に基づき、4つのITFが建設される予定です

      ▼図7 - 中間処理施設の運営 -

      1_idn upst.png

      出典:UPST

      5. リサイクルプラント

      インドネシアのリサイクルプラントについては現在法的な規制は適用されておらず、多くの施設が十分な安全・衛生対策なしで運営されているのが現状です[1]。

      まとめ

      インドネシアの廃棄物管理は、廃棄物発生量の増加やオープンダンピング方式埋立地のような旧来手法への依存により、重大な課題に直面しています。しかし、これらの問題に対処するための取り組みは進行中です。

      次回は、効果的な廃棄物管理を実現するための現在の政府の政策と規制について一緒に見ていきましょう。

      参考資料

      [1] Asia-Europe Foundation. (2021). Waste Management in Indonesia and Jakarta https://asef.org/wp-content/uploads/2022/01/ASEFSU23_Background-Paper_Waste-Management-in-Indonesia-and-Jakarta.pdf

      [2] UNEP (2024) -World Must Move Beyond Waste Era and Turn Rubbish into Resource https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/world-must-move-beyond-waste-era-and-turn-rubbish-resource-un-report

      [3] SIPSN - Waste Generation 2023.
      https://sipsn.menlhk.go.id/sipsn/public/data/timbulan

      [4] Waste4Change. (2019). 5 regulations regarding waste in Indonesia.
      https://waste4change.com/blog/5-regulations-regarding-waste-in-indonesia-that-you-need-to-know/

      [5] National Institute of Environmental Studies. (2018). Indonesia's Unique Waste Management and Recycling Policy.
      https://www.nies.go.jp/kanko/news/37/37-4/37-4-05.html

      [6] Official Portal of Integrated Wate Management Unit of DKI Jakarta Provincial Environmental Service. https://upstdlh.id/itf/index

      ]7] Arumdani. S. (2021). MSW handling of top 5 leading waste-producing countries in Southeast Asia. IOP Conf. Ser.: Earth Environ. Sci. 896 0120003.
      https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1755-1315/896/1/012003/pdf

      [8] Republic of Indonesia. (2012). Government Regulation of the Republic of Indonesia No. 81 Year 2012 about Household Waste Management and the Household Garbage Dump. Global Regulation.
      https://www.global-regulation.com/translation/indonesia/7208771/government-regulation-number-81-in-2012.html

      [9] IGES-CCET. (2017). Planning and Implementation of Integrated Solid Waste Management Strategies at Local Level: The case of Surabaya City.
      https://ccet.jp/sites/default/files/2017-10/CCET%20Surabaya%20Case%20Study_PrintingVer0718_2.reduced.pdf

      [10] Republic of Indonesia (2012). Regulation of the Minister of State for Environment of the Republic of Indonesia No. 13 of 2012 about Guidelines for Implementing Reduce, Reuse, and Recycle Through Waste Banks.
      https://jdih.maritim.go.id/id/peraturan-menteri-negara-lingkungan-hidup-no-13-tahun-2012

      [11] Waste4Change (2020). Let's Get to Know the Functions of Indonesia's Waste Management Facilities. https://waste4change.com/blog/lets-get-to-know-the-functions-of-indonesias-waste-management-facilities-tps-tps-3r-tpst-and-tpa/

      [12] Department of Environment (2022). Intermediate Treatment Facility.
      https://www.jakarta.go.id/intermediate-treatment-facility

      執筆、編集

      アミタホールディングス株式会社
      海外事業統括グループ
      城地 咲知

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